~844年
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「全員、前進!!」
ゴゴゴゴゴ…と壁の外へと続く門が開かれる音。風の通り抜ける音。
俺達は今日、初めて壁の外へと出る。
地下にいた俺達が壁の外へと出るなんて、一体誰が想像できだだろう。
ドドドド、と馬の駆ける音を聞きながら上を見上げると、空の青がどこまでも広がっていた。これが、壁の外の空。なんの隔たりもなく、遠くまでそれが広がっている。
「…悪くねぇ。」
この空の下を舞うユニは、さぞ絵になるに違いねぇ…と昨日初めて落ち込んだ表情を見せたアイツを無意識に思い浮かべては、頭の隅に追いやった。
「ふざけるなっ!」
突如後ろから聞こえてくる怒号。それは名も知らぬ兵士から発されたようで、その怒りは左後ろのイザベルへと向けられていた。どうやら、イザベルの発言が癪に触ったらしい。
「巨人はお前らが考えているようなあまっちょろいものじゃない!これまで何人の優秀な兵士が巨人に食われてきたと思ってる!地下のゴロツキどもが…、」
「はい、それ以上はやめようね〜。」
「っ!…ユニさんっ!」
声を張り上げる兵士のさらに後ろから馬を寄せて近づいてきたのは、ユニ。いつものように柔らかい声色、表情で間に入ってきたユニは、昨日の夜の事なんてまるで何もなかったかのようにいつも通りで、全員口を閉ざした。
「今は壁外調査中。もう壁の外なのよ。喧嘩をしている場合じゃないでしょう?」
「しかしユニさんっ…!コイツら、巨人を舐めてるんですよ!?」
「うん、それはマズイね。あなたの気持ちも分かるよ。でもね、彼らは今日初めて壁の外に出たの。今まで本物の巨人なんて、見た事もないの。だから、私達でサポートしてあげようね。あなた達だって、初めての壁外調査では巨人なんて倒せなかったでしょう?」
まるで子供を諌めるように、ユニは優しく諭した。そしてそれを聞いた兵士はしばしの沈黙のあと「…俺の方こそ、初心を忘れていました。…すみませんでした」と頭を下げた。それに対して「いいのよ。慣れてくると忘れちゃうよね。今日は私達で、彼らを巨人から守ってあげようね」と一際柔らかい笑顔を浮かべた。
…昨日のあの顔は、俺の見間違いだったかもしれねぇ。
「…君達も、実戦と訓練は違うからね。無理して突っ込んだりしないように。不安なら、退いたっていいんだからね。…壁外調査は巨人の討伐よりも、生きて帰る方が大事なんだから。」
なるほど、と妙に納得した。
今回の壁外調査の目的は、新しい陣形「長距離索敵陣形」の成果をあげること。そしてこれを考案したのは、あの金髪野郎。アイツの考えた長距離索敵陣形は、生存率を上げる事に重きを置いている。その思想はユニの今言った「生きて帰る方が大事」という言葉と同義と言っていいだろう。それが金髪野郎を敬愛しているからなのか、はたまた思想が一緒だったから敬愛する事になったのかは知らないが…ユニの金髪野郎に対する想いが強まったのは確かだろう。
…別にアイツらの事など、どうでもいいが。
「巨人発見!左前方森林の中、15m級!こちらに向かってきます!」
「…!!もう1体隠れてやがった!20m級、こちらに向かってきます!」
突如として、辺りは騒然となった。とうとう、巨人が目の前に現れたからだ。巨人という言葉通り人間のような見た目をしてはいるが、15m、20mとサイズは桁違いで気味が悪い。思わず立体機動装置のトリガーを握り、巨人を睨みつけた。
「俺達がひきつける!後衛は速度を上げて振り切れ!」
「まずいぞ…コイツは──奇行種だ!!そっちに向かったぞ!」
「荷馬車の周りがガラ空きだ!フラゴン隊!距離を縮めて死守せよ!!」
「…新兵は、すぐに荷馬車の脇に。平地での戦闘は不利だから、無闇に飛び出さな…、待って!!」
初めて聞く、ユニの大声。荷馬車の脇に行くようにという指示に従いながら横目で見えたのは、先ほどまで隣を走っていた兵士が巨人の口に飲み込まれていくさまで、パキッという軽い音と共に血飛沫が舞ったのが見えた。
…これが、巨人…!!
カッと全身の血が沸騰したかのような感覚を覚えた。別に仲間を殺されたからなんかじゃない。こんなにもあっけなく人が死んでいく事に、恐怖、無力感を感じたからだ。
動きが一瞬止まったからと飛び出した兵士2名もやられ、これで既に3人の命が失われた。
「…お前ら、巨人は甘くないと言っていたな。だったら、舐めた戦い方してんじゃねぇ。…イザベル、ファーラン、行くぞ。」
「待ってリヴァイくん!…行くのは、私とリヴァイくんの2人。異論は認めない。」
「ユニ…!?」
「ごめんなさい、フラゴン分隊長。今回は私に従って頂きます。行くよ、リヴァイくん。」
プシュゥゥウ、とガスを吹かす音と共に、ユニが先に飛び出して行く。ワンテンポ遅れて飛び出したが、先を行くユニは巨人の脹ら脛にアンカーを刺し地面を滑って行った。
…なるほど、そういう事か。
俺のトップスピードに合わせ、どうやっているのか分からないが緩やかに巨人の足元に近づいていくユニを追い越し、項近くに刺したアンカーをそのままに背中へとブレードを突き刺した。すると案の定巨人はアンカーを抜こうと上半身を振り、代わりに動かない足の腱を、ユニが切り落とす。タイミングは、完璧だった。
ザシュッ!という音と共に、血のようなものが飛び散る。どうやら巨人にも赤い血が流れているらしい。実際巨人を倒して、初めて知った事だ。
「リヴァイくんナイスー!!」
向こうの15m級の巨人も、無事森の中で倒したらしい。呑気に手を振り駆け寄ってくるユニを無視し指笛で自身の馬を呼ぶとユニもそれに倣って同様の仕草をした。…いつもの事だが、調子が狂う。
「一緒に訓練してて良かったね!連携完璧だった!」
「ホント、スゲーぜアニキ!ユニも!」
「…あぁ。悪くはなかったな。」
「!えへへ…嬉しい。…痛っ!!」
ゴン、という音の発生源は、ユニの頭。そしてこの分隊の隊長の拳。いわゆるゲンコツを食らったらしい。
「ユニ!お前は本当に…!!エルヴィン分隊長の隊に返品したいぜ…!!」
「えっ、私はそれでもいいですよ?というか嬉しいです!」
「それができないから今回仕方なく受け入れたんだろうが!本当お前は…エルヴィン分隊長の命令しか聞かねーんだから…!!」
「失礼な。キース団長の言う事だって聞きますよ。」
コイツは、問題児か何かなのか?
実際外に出てみて初めて知った事実に、そう思わざるを得なかった。コイツの実力を認めているからこそ、少しばかり残念な思いだ。