845年~851年
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「エルヴィン団長、お話とは何でしょうか。」
団長室の執務室。机のこちらと、向こう。
私はこちら側に立ち、後ろで腕を組んで話を聞く体勢を取った。みなの前で「話したい事がある」と団長室まで連れてこられたのだからきっとエレンに関する話だろうと予想していたのだが、団長の口から紡がれたのは意外な言葉であった。
「あぁ。リヴァイのアレだが、おそらくは君を心配しての事だろう。」
「…アレ?」
「一昨日…君を助けたリヴァイは、我々と合流した際に君をおぶっていたんだが…その時、君が軽すぎてとても驚いたらしい。背丈が自分と変わらないのに、軽すぎると。ちゃんと食わせているのかと、何度も聞かれたよ。」
「……もしかして、さっきの口喧嘩の話をされているんですか?」
てっきり仕事の話だと思っていたのに、エルヴィン団長の口から語られたのはリヴァイの話題。それもさっきの続き。わざわざ場所を変えてまで話す必要があるのだろうかと考えたが、エルヴィン団長がそうしたのなら必要だったのだろうと思考を止めた。
それで、私の体重と対人格闘技に、一体なんの関係が?
「リヴァイはただ純粋に、君を心配しているんだ。絶対に認めはしないだろうがな。」
「心配、は…してくれているんでしょうが…。」
「…否定はしないんだな。」
「私も、少なからずリヴァイの心配はしていますから。…リヴァイが私にしているのとは全く違う心配ですが…。」
「それは大丈夫だ。リヴァイはああ見えて意外と、周囲の人間に慕われている。」
私がリヴァイを心配しているその要因を、エルヴィン団長は分かっているようだ。ジッと交わった視線は私の瞳の奥を見ているようで、全てを見透かされている感覚になる。実際、見透かされているか。
「側に君がいる事で、彼の棘がいくらか緩和されているらしい。」
「…エルヴィン団長、難しい言い方をしますね。」
「はは、失礼。少々鬱陶しいかな。」
「まさか。素敵です。私の頭がもう少し良かったら、エルヴィン団長を楽しませる会話ができるのに。」
「そんな事はない。君と話すのは、私も楽しいし好きだよ。だからこうしてわざわざ、ここへ呼んだんだ。」
「す、……いえ、何でもありません。」
そういう意味じゃない。そう分かっているのに、たった今団長の口から出た「好き」という2文字が私の頭の中を駆け巡った。話の流れ的に本当にその意図はないと分かってはいる。だけどそんなの関係なく、エルヴィン団長の口から「好き」という単語が出たというだけで、私の心臓の鼓動は速まっていく。今さら、前々から分かってはいた事だが、これは重症だ。
「…どうかしたのか?ユニ。」
「っ、…いえ…、本当に、何でも…。」
エルヴィン団長の瞳は、愉しそうに細められている。これは、からかわれている。でも別に、エルヴィン団長だから、良い。ただ自身の口から「好きです」と飛び出しそうになるのを、必死に堪えた。
「…君は私に従順なように見えて、意外と強情だな。」
「…なんの事でしょうか…?」
「フッ…いや、独り言だ。」
全て見透かされている。だが、私達はそれでいい。少なくとも、今はまだ。
「……やっと出て来やがったか…。」
「リヴァイ…エルヴィン団長に用事?なら、私はもう済んだからどうぞ。」
エルヴィン団長の部屋から出て扉を閉めると、リヴァイが壁に背を付けて待っていた。きっとエルヴィン団長に用事があって待っていたのだと思い立ち去ろうとすると、彼はそれを阻むように目の前に立ち塞がった。
「おい待て。…てめぇ、その顔で戻るんじゃねぇ。…それと、誰がエルヴィンに用事だと言った。」
「え…、…えぇ?」
その顔って、私はいつもこの顔だが。団長ではなく私に用事があるのは分からなくもないが、前半部分はどういう意味なのだろう。
「エルヴィンの事が、そんなに好きか。」
「え、何、急に。そりゃ、見ての通り好きだけど。」
本当いきなり、何の話?今さらすぎるこの質問に、意味はあるのだろうか。
「一体アイツの何が良いのか、サッパリ分からん。」
「何言ってるの…?大人の魅力とか、優しいところとか、たくさんあるでしょ?」
それと、落ち着きがあるところとか頭が良いところとか、もちろん端正なお顔とか…言い出したらキリがない。
…で、それがどうしたというのか。
「……そうか。興味ねぇな。」
「どういう事?リヴァイが聞いたんじゃない。」
「何でもねぇよ。で、対人格闘技の訓練をする気になったか?」
「……。」
やっぱり、そう簡単には諦めないよなぁ…。
ジッと、目つきの悪いリヴァイの、グレーの瞳を見つめる。
彼は、口は悪いが意外に情が熱く、仲間想い。特に私やエルヴィン団長には、信頼を置いている。はず。エルヴィン団長もリヴァイのコレは私を心配しているから言っているのだと言っていたし、私が簡単に死なぬよう、彼なりに考えた結果なのだろうと思う。
「おい…だんまりか?」
「……リヴァイは、私が死んだら悲しむ?」
「あぁ?何言ってんだ。そんなの、……。」
「当たり前だろうが」と言いたいのだろう。肝心なところを言えないのは、数少ない彼の、かわいいところだ。
「……はぁー……もう、ほんとに嫌……。」
嫌すぎて、ため息が止まらない。だけどかわいい部下が心配してくれているのだから、できるできない関係なしに、それに応えてあげたくなるのが上司というもので…。
「分かった…。…分かったよ。やるよ。やればいいんでしょ。」
「……どういう風の吹き回しだ。エルヴィンの奴に、何か言われたか。」
「団長は関係ないの!やりたくないけど、きっと私がやるって言うまで執拗いでしょう、リヴァイ。」
「まぁ、そうだな。」
そこは否定してほしかった。そしたら、全力で拒否できたのに。それこそ、泣いてでも。
でもまぁ、生存確率が上がるかもしれないし、それなら…、まぁ…。
…ポジティブに捉えようとしても、これが限度。
翌日から、やりたくもない地獄の対人格闘技トレーニングが始まる。
「エレンに会えるんですか!?」
あの日から、3日。今日はリヴァイと対人格闘技の訓練か…と朝からどんよりと暗い面持ちであったが、エルヴィン団長の号令で集められた分隊長以上の上官に告げられた吉報で、その暗い気持ちは綺麗さっぱり吹き飛んだ。どうやら、ずっと昏睡状態だったエレンがついに目覚めたらしい。そしてとうとう、我々調査兵団に面会の許可が下りた。やっと、エレンと話ができる。
「まずは私が直々に、話をしよう。それとユニ、リヴァイ。君達も同行してくれ。」
「承知しました!」
「えぇ〜!私も行きたかったなぁ!」
「…ハンジさんがいると、話が進みそうにありませんからね。」
「行って、何を話す。」
「うむ…。今軽く、その話もしよう。」
話によると、どうやらエレンの身柄を、我々調査兵団だけでなく憲兵団も欲しがっているらしい。なぜエレンの力を欲しがるのかは不明だが、彼らが有効な使い方ができるとは到底思えない。対する我々はエレンの力を使いウォールマリア奪還を掲げるつもりで、ゆくゆくは彼の言っていた秘密の地下室に行き、巨人の謎について調べる。どちらが人類のためになるか、一目瞭然だ。
「エレンは自身が巨人になれる事を、今まで知らなかったようです。それに、エレンの言う地下室について…彼の父が"巨人に関する秘密"が隠されていると言っていたようですが、現在、行方不明…。エレンの言う事を、全て鵜呑みにして良いのでしょうか…?」
私には、分からない。だが、エルヴィン団長なら分かるかもしれない。そう思い問いかけた。
しかし彼から返ってきたのは聞きたかった答えではなく「君はどう思う?ユニ」という問いかけであった。
エルヴィン団長に聞かれたのだから、何か、答えなければ。
「私は…。…私は、信じたいです。アルミンが、信じているから…。」
そうだ。あのアルミンが、信じている。頭のいいあの子が信じているのなら、私も信じたい。確信ではなく、願望、だが。
「そうか…。私は、信じて良いと思っている。彼が嘘をつく理由は、今のところないからな。」
「…ずいぶん都合がいい話だな。…だが、お前らがそう言うのなら、俺も信じよう。」
「リヴァイ…。…承知しました。」
「では、明日の朝、ここを出る。各自解散。」
団長の解散の合図で、一斉に部屋から出る上官達。私もエルヴィン団長へ一礼してから最後に部屋を出るとリヴァイが目の前に立ち塞がり「対人格闘技の訓練に行くぞ」と一言。
今の会議で忘れてくれていたら良かったのに……抜け目のない奴だ…!!