845年~851年
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「それで…私が眠った後のエレン達は、どうなったのでしょうか…?」
巨人になれる少年。そんな人間の存在が明るみになった今、各兵団が大騒ぎをしている事だろう。
「エレンの身柄は現在、憲兵団が受け持っている。ミカサとアルミンも、今は憲兵団が話を聞いている最中だ。」
「憲兵団が…。…会えないんですか?」
「そうだな…。今はまだ、許可が下りていない。」
憲兵団の管轄になっているのなら、面会は難しいだろうとは思った。そうか…会えないのか…。
「……アルミン…。…彼は、調査兵団へ入りたいと言っていました。もし許されるなら、彼を私の隊へ引き入れたいのです。…許可してくださいますか…?」
「私が君の頼みを断った事があるか?」
「…ないです…ありがとうございます…。」
エルヴィン団長は、私に甘い。これまでエルヴィン団長のやる事なす事に不満を感じた事など、ただの一度もない。これは誇張などではなく、本当の本当に事実なのだ。それはおそらく、他人から見てもそうだろう。私が決めた事、やった事は全てまかり通る。「ユニがそう言うのなら」「ユニの思うようにやりなさい」と、いつからか文字通り全肯定してくれるようになった。それがなぜなのかわざわざ聞く事はしないが、ただ"信頼を置いてくれているのだとしたらうれしい"と、期待を込めた思いを抱いていた。
「そういえば…リヴァイは?」
「あぁ、彼なら今、トロスト区に取り残された巨人の討伐に赴いている。あと数時間もすれば終わるだろう。」
「トロスト区…岩で穴を塞いだ事で、出入りができなくなってしまいましたね。これから壁外調査へ赴く際は、どちらから向かいますか?」
「カラネス区から、と考えている。まずはカラネス区からシガンシナ区までのルート開拓からだな。」
「そうですね…。せっかく、4年もかけて模索したルートだったのに…。」
「そうだな。しかし、エレンの身柄を調査兵団の預かりにできれば…その4年費やした労力と差し引いても、プラスになる。」
「…確かに…。エレンにその意思があれば、話は早そうですね。そう簡単に、憲兵団が手放すとは思えませんが。」
そうなると近々、調査兵団対憲兵団で審議が執り行わられる事だろう。
「…そう言うわりに、君は楽しそうだな。」
「ふふ…、だって、エルヴィン団長がいればだいたいの事は何とかなりますから。」
「嬉しい事を言ってくれるな。…君が信じてくれるなら、私もがんばらないとな。」
「エルヴィン団長ががんばっちゃったら、もう誰も敵いません。敵なしですよ。」
「そんな事はない。私にも、敵わない相手くらいいる。」
「えっ?誰ですか?教えてください。」
「はは、秘密だよ。」
いつの間にか、雰囲気はとても和やかなものに変わっていた。なんか幸せな時間だなぁ…と思っていたらエルヴィン団長が体を折り畳んで端正なお顔が近づいてきて、当たり前を受け入れるようにそっと、目を閉じた。
「一応復活、かな。」
眠って起きたら、完全復活とはいかないまでも劇的に動けるようになった。昨日1日、安静にしていたおかげだろう。講堂へと向かうと団員達に「ユニさん!」「お体はもう大丈夫なんですか!」と次々に声を掛けられ、その全員に丁寧に心配をかけた事を詫びた。
「ユニさん!」
「!…エルド!」
「ご無事で、なりよりです。」
「あなたも…壁外調査から無事帰ってこられて良かったよ。リヴァイは、上手くやってくれた?」
「はい。ユニさんのいない穴を埋めようと、いつもよりも気合いが入って──」
「そんな事はない。俺はいつも通りだった。」
「リヴァイ!」
あの時ぶりの、リヴァイ。ヒーローみたいなタイミングで助けに来てくれたのが、記憶に新しい。
顔を見た事で、その時の気持ちが蘇ってくる。
「リヴァイ、助けてくれてありがと。もうね、あの時ばかりは死んだと思ったよ。」
「バカ言ってんじゃねぇ。」
「冗談なんかじゃなく、本当にそう思ったの!」
あの時私は、死を覚悟した。ガス切れなんて起こしたのは、あの時が初めてだった。しかしその時抱いたのは絶望感などではなく「私はここで死ぬんだ」という、もっと現実的で、生々しいもの。リヴァイがあのタイミングで来てくれなかったら、それは現実となっていたはずだ。
「なら、死ななくて良かったな。」
ポン、と頭に置かれた、リヴァイの手。私とエルドは驚いた表情でリヴァイを見たがどうやら無意識にやったようで、やった張本人であるリヴァイも僅かに目を見開いて、そして「チッ…」と舌打ちをし視線を逸らした。まさかあのリヴァイが、そんな事をするなんて。
「えぇと…リヴァイ、私に何か用事?」
話題を変えた方が良いだろうかと気を遣いリヴァイへ問いかけたのだが、直後、私はその純粋な気遣いを後悔した。
「…あぁ。てめぇ、駐屯兵団に喧嘩を売ったらしいじゃねぇか。対人格闘技はゴミ以下の実力の癖に…。」
「…そこまで言わなくても良くない?」
「俺が直々に、訓練をつけてやる。今後同じような事が起こらねぇ保証は、ねぇからな…。」
「はぁっ…!?なんでそうなるの…!?」
話の方向性が、おかしい。これは完全に、八つ当たりというものじゃないか。思わず、反論する声が大きくなってしまう。
「まさか、駐屯兵団相手に立体機動装置を使うつもりだったのか?」
「うっ…、それは…。…向こうがその気なら、そうするしかないと…。」
「バカか、てめぇは。そんな事をしたら、エルヴィンや調査兵団に迷惑がかかるだろうが。それにだ。てめぇは、人間は殺せねぇ。絶対にだ。そんなてめぇが立体機動装置を使って、殺さずに再起不能にするなんて不可能だ。」
エルヴィン団長の名前を出すなんて、ずるい。そんな事を言われてしまっては、私は何も言い返せない。いつもは口数が少ない癖にこんな時だけ喋るのにも、腹が立った。
「もう!かわいくない!エルヴィン団長は褒めて下さったんだから、いいじゃない!!」
「うるせぇ…ギャーギャー騒ぐな。それとこれとは話が違うだろ。」
「違わな…!エルヴィン団長っ!」
「はは、騒いでいる奴らがいると思って来てみれば…まさか君達とはな。」
リヴァイの後ろから迫ってくる人影が…と思っていたら、それはまさかのエルヴィン団長で、目が合った瞬間に反射的に敬礼のポーズを取った。それはそれは見事な敬礼だっただろう。隣にいたエルドも私につられて、同じく敬礼のポーズを取っていた。
「さ、騒ぎを起こして申し訳ありません…!リヴァイには、あとで言って聞かせますので…!」
「おい…ふざけるなよ。言って聞かせられるもんなら、やってみろ。」
「ふ…、っはは!君らは本当に、いいコンビだな。」
「!」
珍しい。エルヴィン団長が楽しそうに笑っているところなんて、なかなかお目にかかれるものじゃない。それが私とリヴァイのやり取りから生まれたものというのが少し嫌だったが、エルヴィン団長のその楽しそうな笑顔を見たらどうでもよくなってしまった。かわいい、というか…素敵、というか…とにかく、私は嬉しくなった。
「ユニ、今時間はあるか?少し話したい事があるんだが。」
「はい!エルヴィン団長のためならば、いついかなる時でも時間をお作りしますよ。」
「それは頼もしいな。では、私の部屋へ行こう。」
背を向けて歩き出すエルヴィン団長の後ろをついて行きながら、内心スキップでもしたい気分だ。エルヴィン団長の登場でリヴァイとの対人格闘技の訓練の話は有耶無耶になったし、団長のお部屋へお誘い頂いたし。スキップなんかしたら未だ治りきっていない体が痛みそうだから、しなかったが。