845年~851年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ズシン…、ズシン…、
「!…あれは…エレン…?」
巨人の数に少々キツくなり始めた頃。一際重い地響きが聞こえ、みな音の発生源に注目した。すると1度姿を見たエレンの巨人が、あの大岩を担いで壁の穴へと進んでいくところであった。
アルミンが、希望を紡いだのだ。彼に任せたのは、間違いじゃなかった…!
「ミカサとアルミンは、エレンの元へ!巨人達はエレンへと集まっている!総員、立体機動が使える建物が途切れる前に、巨人を討伐せよ!新たに侵入してくる巨人と、零れた巨人は私がやる!!」
「!?…無茶です!隊長!」
「…大丈夫。巨人の間を移動すれば、案外何とかなるから。ミカサとアルミンは、エレンを急かして来て。それでは、作戦開始!!」
こんな時、リヴァイがいてくれたら心強いのに。
駐屯兵の実力が分からない以上は直接的な戦闘は私が受け持つべきだと、つい少々の無茶をしてしまう。
ブレードの切れ味が落ち、交換のため投げ捨てる。あと、何mだ。いやそれよりも先に、巨人の討伐。
つい数日前に熱を出したばかりだというのに、体が軽い。こんなに立て続けに巨人を相手にするなんて、ずいぶんと久しぶりだ。それも、1人で。
ガチャン!と音を立てて、ブレードを装填する。
…ブレードを捨ててから、どのくらい時間が経った?
捨ててからさほど景色が変わっていないので、時間にして2、3秒だろうか?
世界が、ゆっくりに見える。
ドォォォオン!
一際大きな音は、地面すらも揺らした。いや、揺らしたのは、壁に大岩を入れた衝撃か。
とうとうエレンはあの穴に、大岩を入れたらしい。
「ッ!」
ガクン、と体が重力に従って、下へと落ちる。初めて感じる、嫌な感覚。まさかこの私が…ガスを切らすなんて…!!
迫ってくる巨人の腕は回転する事で切り落としたが、このままでは、地面に叩きつけられて──
「てめぇ…何してんだ。」
「えっ。…ぐぇっ…!」
ここで聞こえるわけのない声が、鼓膜を揺らす。同時に腹に圧迫感を覚え、情けない声が漏れた。
「え…、ッ、リヴァイ…!?」
ブン、と音が聞こえそうな勢いでぶん投げられ、近くの建物の屋根へと体を打ち付けられる。いや…命は助かりはしたが、あんまりな扱いじゃないだろうか?
しかしリヴァイは私が狩り残した巨人を見事に討伐し、地面へと降り立った。こんな良いタイミングでの登場…少し、かっこいいじゃないか。
「はー……。…作戦、成功…。」
少し、無茶しすぎた。怪我はないが、全身が悲鳴を上げている。今の今まで気にならなかったから、本当ならもうずいぶん前に限界を迎えていたのだろう。アドレナリンが出ていて、今まで動けていただけだ。
「ユニ…生きているか?」
「リヴァイ…全身が痛いの…。助けて…。」
リヴァイがいるという事は、エルヴィン団長が…調査兵団が帰ってきたのだ。リヴァイにもエルヴィン団長にも、話したい事がたくさんある。それがたった1日…今日起こった事だなんて、現実味がなさすぎて夢だったのではないかと思えてくる。
「情けねぇ姿だな。」
「はは…これでも、だいぶ活躍したんだけどな…。」
リヴァイの肩を借りて立ち上がったが、足が震えてまともに歩けそうにない。
本当、私はよくがんばった。それはこの筋肉痛が、ありありと物語っている。
気がついたらリヴァイにおぶられていて、次に気がついたら調査兵団本部の自分の自室で、頭には大量のハテナ。今日はいつで、どうやってここまで帰ってきたのだろう。まさかあれは本当に夢だった?などと混乱していると、ノックもなしに部屋の扉が開かれた。思わずビクッと体が跳ねたが、入ってきたのはエルヴィン団長であった。
「エルヴィン団長っ!!ッ、痛…!」
「!…すまない。目が覚めているとは知らず、ノックもなしに。」
そういえば、全身筋肉痛だった。なら、あれは夢ではなかったという事か。
起き上がろうとした私の肩をエルヴィン団長が優しく手で制すので、大人しく背中をベッドへと戻した。それを確認した団長は、安心したようにベッドへと腰掛けた。
「…いえ。エルヴィン団長なら、構いませんよ。」
「フッ…そうか。目が覚めて、良かったよ。それと…無事で良かった。」
する、と優しい手つきで頬を撫でられ、思わず心臓がドキリと跳ねる。今はあの事なんか忘れて、思う存分甘えたくなってしまう。
「エルヴィン団長…お話は、どこまで団長の耳に…?」
「あぁ。ウォールローゼが破壊された事。巨人になれる少年がいる事。それと、君の活躍…かな。」
「……エルヴィン団長…。私、謝らなければならない事があります…。」
思わず、布団を鼻まで引っ張って口元を隠す。
私は、確かに活躍した。それは自分でも感じている。だが、それだけではないのだ。
「私、団長の許可無しに団長代理だと、意見を押し通そうとしました。」
「…あぁ、聞いているよ。」
「エレンを殺そうとする駐屯兵団に、殺す事は許さないと…私の言葉は、団長の言葉と同義だと、虚言を吐きました…。それに、調査兵団はエレンを守る、とも…。」
チラ、とエルヴィン団長を見ると、なぜか優しい笑みを浮かべてこちらを見下ろしていた。その顔を見てしまっては、次になんと言っていいか分からず言葉に詰まってしまった。怒られると思っていたのに、なぜ、怒らないのか…。
「君は本当に、愛らしいな…。もはや愛おしい、と言っても過言ではない。」
「えっ…?えと…、急にどうされたんですか…?」
今の話の流れからは到底想像できなかった、エルヴィン団長の言葉。嬉しい言葉だが…どう反応すれば正解なのか分からず、困る…!
「私がその場にいれば、君と同じ行動を取っていた。つまり君の言葉は私の言葉と同義、というセリフは、結果的には真実だったという事だ。」
「…!あ…、あと…!団長不在時には団長代理としての一切を任されていると…!」
「あぁ、構わない。」
「…っ、構います!何でもかんでも肯定しないでください!」
「フッ…、ははっ。嬉しいと怒るのか、君は。」
「ち、違います…!嬉しいと泣きたくなるから、怒ってるんです…。」
ポロ、と涙が零れる。エルヴィン団長がとにかく優しくて、堪えきれなかった。嬉しい。私の判断は正しかったのだと、言葉にして言ってもらえて、嬉しい。団長代理なんて責任の重い役職を語って、それが正しい行いだったなんて、嬉しすぎて、苦しい。
「君はよくやった。感謝する。それにたった1人で、心細かったろう。」
「う……、怖かった、です…!ずっと、不安でした…!エルヴィン団長に、会いたかったッ…!!」
「あぁ。もう安心していい。君も私も、こうして生きている。」
ぎゅっと繋がれた手のひらは、温かかった。生きているから、温かい。
「トロスト区奪還作戦で隊を組んだ駐屯兵達が、君に感謝しているそうだ。危険な事は、全て引き受けてくれたと。君がいなければ、作戦は失敗していただろうと。それと…訓練兵達も。命を助けられたと聞いた。」
「ん…。…無茶、しすぎてしまったでしょうか…?」
「…そうかもしれない。が、巨人は待ってはくれないからな。君は、無茶せざるを得ない状況だったんだろう?」
「…ん……。」
エルヴィン団長には、全てお見通しだ。当たりすぎていて、怖いくらい。でもさっきの言葉が真実なら、私も同じようなものなのかもしれない。
「…泣いたら、スッキリしました…。もう、大丈夫です。」
「そうか…。では、昨日何があったか…。君がここからトロスト区に行き、気を失うまでの全てを教えてもらおう。」
あの出来事は昨日の事だったのかと、この時初めて知った。
そして話し始めた昨日の出来事は、たった1日の間に起こった出来事とは思えぬほど濃密で、やっと話し終えた頃には時計の長い針が1周し終えていた。