845年~851年
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アルミン、ミカサの幼馴染が、巨人の中から出てきた。
それは、私含む104期訓練兵の一部が目撃した。ミカサが、倒れた巨人の項から男の子を剥がすのを、見ていたから。
「守秘義務…ね。」
尤も、エルヴィン団長が戻り次第、私は報告するつもりだが。
「マルコ…俺…もう駄目だ…。」
待機場所の広場で訓練兵達と待機をしていると、不意に弱気な発言が耳に入ってくる。目の前で同期が食われたのだという訓練兵で、本物の巨人というものを知り、恐怖、絶望をしているようだった。巨人を自分の目で見たのは初めてだろうし、まぁ、仕方のない事だ。
「気付いたんだ…俺達の仕事ってのは…つまりは…、巨人に食われるまで、戦わされ続ける事なんだろ?」
思わず、ピクリと体が反応してしまった。
「…君、調査兵団である私の前でよく、そんな事が言えるね?」
そんなに大きな声で言ったわけではないのだが、場の空気が一瞬にして凍りつく。いや、逆に静かに声を発した事で、余計に恐怖心を煽ったのかもしれない。そんなつもりは、全くないのだが。
「あ、あの…すみません!!彼には、あとからよく言って聞かせますので…!!」
「いや…謝らなくて良いよ。彼が調査兵団に来る事は、きっとないだろうし…。今日たまたまここで会っただけで、今後関わりはない。そんな人に怒ってやるほど、私は暇じゃない。」
なんてったって、あのエルヴィン団長の補佐、なんだから。
「本当に、気にしてないよ。私が気にしてるのは、エルヴィン団長が今、どこにいるかと…いつお戻りになるか。それと、お怪我をされていないかだけ。…リヴァイがついてるから、大丈夫だとは思うけど。」
私がいなくとも、リヴァイはちゃんと、エルヴィン団長を守ってくれるだろうか?いつも私の指示で動いてくれる彼が、私のいない戦場でどう動くのかにも、多少の興味はある。
「リヴァイって…リヴァイ兵士長の事ですか…!?そうか…団長補佐ともなれば、お知り合いか…!」
「知り合いというか…、彼は私の部下だよ。」
「えっ……。」
再び、空気が凍る。ただ事実を述べただけなのだが。…今のはきっと、リヴァイのせいだ。
ドォォォオン──
「!?…今のは…砲声…!?」
それも、壁の中…この、すぐ向こう側だ。誰よりも早く立体機動装置を使い、壁に向かった。その直後に何人か続いてやってきたようだが、構っている暇はない。この、蒸気は…巨人の…!そして、
「あれは…。」
ミカサとアルミンの、幼馴染。
巨人から立ち上る蒸気のその奥では、先ほど見た光景と似たような光景が繰り広げられている。先ほどと違うのは巨人の体が不完全な事と、2人の幼馴染が、自ら巨人の項から出てきた事。
…なるほど。先ほどの砲声は、彼らに向けて打たれたもののようだ。
2人の幼馴染が、2人を守ろうと、巨人になった。他の事は一切分からないが、それだけは明確だった。
「!!なんだ、そこの調査兵団!邪魔をするな!!」
「……いかにも、私は調査兵団団長補佐─ユニ・クラインです。現調査兵団団長であるエルヴィン・スミスの不在時には、団長代理としての一切を任されています。彼らに攻撃の意思はない。今すぐ武器を収めて頂きたい。」
蒸気が晴れるよりも前に、彼らと睨み合う駐屯兵団の前にヒラリと降り立つ。団長代理というのは、ハッタリだった。団長補佐である私がこの状況で団長代理であると主張するのは、相手からしてみればなんら不思議な事ではない。が、5年前に団長代理と名乗った時はエルヴィン団長からの許可を得ていた。しかし今回は、独断で名乗った。だが団長含む調査兵団が壁外調査へ出向いている今、そう名乗る他なかった。駐屯兵団は、彼らを始末しようとしているらしい。その彼らの中には、アルミンも含まれる。彼は調査兵団に入ると言っていたし、そんな彼を、私は守りたい。いや、守らなくては。
「だ、団長代理…、っ、調査兵団は現在、壁外調査で壁外へ赴いているはず!調査兵団の団長代理が今、壁内にいるはずないだろう!!」
「…それに関しては私の不徳の致すところですが、数日前病に侵され、今回の壁外調査への同行を断念いたしました。しかし今日は、5年越しの壁内の危機を察し、こうして単身、戦場に馳せ参じた次第です。」
そう。これは危機的状況だ。ウォールマリアに続きウォールローゼが突破された今、人類滅亡の未来しか見えない。しかし──あの子がいれば、そしてエルヴィン団長がいれば、希望が紡がれるかもしれない。いや、エルヴィン団長なら必ずやってくれる。人類滅亡を、阻止できる。
「我々調査兵団は、あの少年を守ります!団長代理の私の言葉は、調査兵団団長エルヴィン・スミスの言葉と同義!その上で、団長代理として宣言します!彼を殺す事は、調査兵団が許しません!!全力で阻止します!!」
「そっ、それは、調査兵団が我々駐屯兵団に攻撃を仕掛けるという宣戦布告か!!」
エルヴィン団長に恥じぬよう堂々と、そして丁寧に敬礼までして宣言をしたというのに…どうして分かってもらえないのか。なぜ、宣戦布告と捉えられるのか。…分からない。
「ご理解頂けないのなら、そうなるでしょうね。とはいえ、今ここにいる調査兵団は私1人。いくら戦歴をあげていたとしても、私が今まで倒したのは巨人だけ。簡単に倒されてしまうでしょう。しかし…私はそれでも構いません。もしも志半ばで私が死んだとしても、きっと部下が…兵士長であるリヴァイが、私の意思を継いでくれる事でしょう。」
これは、脅しだ。リヴァイの名を出した途端にビクリと肩を震わせたのが、遠目からでも分かった。しかし彼に効果的なのは、恐怖心を煽る事ではなかったらしい。目の前に、巨人がいる。それだけで恐怖し、彼は混乱していた。それで思考を放棄していた。端から、説得など無意味だったのだ。
ガシャン、ガシャ──
「彼は!彼は人類の敵ではありません!私達は、知り得た情報をすべて開示する意思があります!!」
「!…アルミン…!」
立体機動装置を捨て置き、背後からアルミンが躍り出てきた。そういえば、この子も相当に頭が良い。一度彼からどんな言葉が出てくるか、聞いてみたい。私は敬礼のポーズを崩さずそこに立ち、アルミンに発言権を譲った。
「ヤツが巨人でないと言うのなら証拠を出せ!それができなければ、危険を排除するまでだ!!」
「証拠は必要ありません!…そもそも我々が、彼をどう認識するかは問題ではないのです!」
…賢い話し方だ。回りくどい言い方をし、一旦考えさせ冷静にさせる。そうしてから単純明快な事実を述べれば、聞いた者は「なるほど、確かに」と納得する傾向にある。エルヴィン団長もよくやる話し方だ。
「大勢の者が見たと聞きました!ならば、彼と巨人が戦う姿も見たはずです!周囲の巨人が、彼に群がっていく姿も!つまり!巨人は彼の事を、我々人類と同じ捕食対象として認識しました!我々がいくら知恵を絞ろうとも、この事実だけは動きません!!」
完璧だ。なんて綺麗な、実に論理的なスピーチ。感動すら覚える。やっぱり私は、この子が欲しい!
「迎撃体勢をとれ!ヤツらの巧妙な罠に惑わされるな!」
「!?…いやいやいや…、正気?…じゃないな、どう見ても。」
あれが駐屯兵団の上官だなんて、笑わせてくれる。ピクシス司令の采配は一体どうなっているんだ。何にしても、エルヴィン団長のいない今、私はここで死ぬわけにはいかない。それも、こんなくだらない死に方、死んでもごめんだ。
「私はとうに、人類復興のためなら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従った末に命が果てるのなら本望!!」
「!」
「彼の持つ巨人の力と、残存する兵力が組み合わされば!この街の奪還も不可能ではありません!!人類の栄光を願い!これから死にゆくせめてもの間に!彼の戦術価値を説きます!!」
「…!!」
思わず、立体機動装置のグリップに手が伸びる。体が勝手に、そのように動いた。このアルミンという少年を、何がなんでも守らなければと、脳が勝手に判断したのだ。
「よさんか。」
私がアンカーの射出のため手に力を込めようとした直前、鶴の一声が辺りに響いた。南側領土を束ねる最高責任者、ドット・ピクシス司令だ。
「ワシはあの者らの話を…、なんじゃ、ユニもおるのか。」
「……お久しぶりです。ピクシス司令。…はぁ…来るのが遅いですよ。」
もう少しで、無駄な血が流れるところだったんですからね、と心の中で付け足した。