余談
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「ママ、アルミンのお家に泊まりに行ってもいい?」
世界に平和が訪れ、リヴァイの怪我も完治し結婚式も無事済ませてようやく生活が落ち着いてきた頃。幸せ真っ只中の日常で、ルーカスが突然そんな事を言い出した。
元々ルーカスは104期生達に良くしてもらっていて懐いていたし、何ら不思議な提案ではないが…リヴァイのいないタイミングに急にそんな事を言い出すのが少しだけ引っかかった。
「別に構わないけど…、どうしてママだけに聞くの?」
ストレートに尋ねるとルーカスはエルヴィンみたいに顎に手を添えて少し首を傾げ「うーん…」と唸ったのち、「たまには僕の事を気にせず、二人だけで過ごしてほしいから、かな」と、答えになっているようななっていないような返答が返ってきた。何と返そうかと悩んでいるうちにそれを察したルーカスは、言葉を続けた。
「パパとママは、二人だけで過ごした時間が短かったんじゃないかと思うんだ。二人が僕に愛を注いでくれるのは疑いようのない事実だけど、たまには僕の事を気にせずお互いの事だけを考える時間があればいいかなと思ったんだけど…。パパはきっと、そんな事ないって言うかなって。」
「えぇ…、ルーカス、いつの間にそんなに大人になって…。」
ルーカスはエルヴィンの血を継いでいるとはいえ、まだ5歳。家族想いな上に頭が良いので気が回るのは分かるが、大人びているにもほどがあるんじゃないだろうか?私が「幸せならなんでもいいや」とあまり考えていないのもあるが、気を遣わせてしまっているような気がして母として情けないし、申し訳なくなってくる。
「それに、僕も誰かの家にお泊まりしてみたい。」
「ルーカス…。…ふふ、ありがとね。」
最後のも、ルーカスの本音のようで安心した。だって少し照れくさそうに、目をキラキラさせて言うから。ちゃんと子供らしいところもあるのだと思うと安心するし、何よりかわいくて仕方がない。
「パパが帰ってきたら、話してみようね。」
「うん。」
人間観察が得意で、事前に人の気持ちを予測するところは私に似てしまったのかもしれない。仕事をする上では大切な能力ではあるが、まだ5歳の子供には不要な気遣いな気もする。でもそれもルーカスのいい所でもあるし……。…あとでリヴァイと、少し話してみよう。
「アルミンのところに?いいんじゃねぇか?」
「本当?ありがとう!」
リヴァイが外出から帰ってきて紅茶を飲み始めたところでルーカスは例の件について打診し、それはそれはあっさりと了承を得られた。
期間を聞くと「アルミンの都合にもよるけど、来週1週間くらい行けたらいいなって」と。ジャンやコニー達も顔を見せにきてくれると言うし、1週間という期間はマーレを満喫するのにはちょうどいいかもしれない。
そうしてトントン拍子で話が進んでいき、当日。最近パラディ島でも普及し始めた車のエンジン音を響かせ迎えにきてくれたのはジャンで、会うなり「お久しぶりです」と軽く頭を下げた。
「久しぶり。1週間、ルーカスをよろしくね。」
「くれぐれも頼んだぞ。…土産だ。持っていけ。」
リヴァイは挨拶もそこそこにルーカスの着替えなどが入った鞄と、お茶菓子や紅茶の茶葉が入った紙袋を乱雑にジャンに手渡し、彼を見上げた。その眉間には皺が寄っていて、何を考えているのかが手に取るように分かる。これは「またデカくなりやがったな…」だ。
「ルーカス、くれぐれも気をつけてね。常に誰かと一緒に行動するのよ。」
「うん、分かった。」
「大人びてはいるがルーカスはまだ5歳だ。外に出る時は少しの距離でも手を繋いでいけ。分かったな?」
「分かりました…。んな睨まないでくださいよ、兵長。」
「兵長じゃねぇって言ってんだろ。」
「いや、そうですけど。兵長は兵長というか…。」
「あははっ!ジャン。リヴァイはね、名前で呼んでほしいんだよ。みんなにも言っといて。」
「おい。そんな事は言ってねぇ。」
なんだか、懐かしい。兵団が解体されてから1年程経つが、私達が過ごした数年の間にあった出来事が濃密すぎて未だに彼らとの絆のようなものが温かく、顔を合わせればいつだってあの頃に戻ったような感覚になる。
「じゃあ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
挨拶もそこそこに、ルーカスはジャンと共に車に乗り込み、去っていった。寂しくないわけではないが、ルーカスにはパラディ島の外の世界を自由に見て回ってほしい。そして色々吸収して、最後にはちゃんと帰ってきてくれれば。
「…行ったな。」
「うん。…心配?」
「いや、別に。」
「ふふ…。ねぇ、リヴァイ。久しぶりにデートしよ。」
「別に構わんが…どこに?」
せっかくルーカスが気を遣って1週間も二人の時間を作ってくれたのだから、毎日とは言わずともどこかに出かけたりしたい。とはいえ私達はデートらしいデートなんてした事がないし、どこにと聞かれると困るというか…。
「1週間あるんだ。思いついたら行けばいい。」
「それもそうだね。じゃあ、今日はとりあえず紅茶でも飲んでゆっくりしよう。」
結局、いつも通りの日常。そこにルーカスがいないだけだ。それでもつまらないなんて思う事もなくいられるのは、リヴァイがいてくれるから。それだけで私は嬉しいし、十分に幸せだ。
「?俺の分だけか?」
「私は大丈夫。あとでリヴァイに淹れてもらうから。」
リヴァイの分の紅茶を淹れて、彼がそれを一口飲んだのを見計らってソファに横になり膝に頭を預けた。いわゆる膝枕。
「そういう気分じゃない?」
「いや…今そういう気分になったから、問題ない。」
目が合ったリヴァイにふふ、と微笑むと仕方なさそうに眉を下げて微笑んで、優しく頭を撫でられた。そしてさらにソファに掛けてあったひざ掛けを何も言わずに掛けてくれ、どうやら私を甘やかすスイッチが入ってくれたようだった。
「ルーカスに、あとで改めて感謝しないと。」
「あぁ、そうだな。」
「ルーカスがね、たまには私達二人だけの時間を作った方がいいって。」
「…ルーカスがそんな事を?」
「うん。色んな人達から私達の話を聞いて、恋人らしく過ごした時間が短かったんじゃないかって思ったみたい。」
「……そうか…。」
「?なに、その反応。」
「別に、なんでもねぇよ。」
なんというか…リヴァイの今の反応は、私の話した事を聞いて納得したというか、繋がったというか……答えに行き着いたような反応をしていた。もう何年も一緒に過ごしているのだから、いくらリヴァイの表情の変化が乏しいとはいえ、私には分かる。まさか私に隠し事をするのかとじーっと下から見つめ続けているとやがて居心地が悪くなったのか飲んでいた紅茶のカップを置き、ようやく口を開いた。
「ルーカスが……弟か、妹が欲しいと…。」
「えっ?ルーカスが?リヴァイに?そう言ったの?リヴァイはなんて答えたの?」
思わずムク、と体を起こして、至近距離で尋ねる。そうするとリヴァイは私の方へ視線を向け、しばしじっと視線が交わった。
「俺一人ではどうにもできねぇ事と、お前一人でもどうにもできねぇ事を伝えた。」
「そう…。…それで?」
「…じゃあどうしたら子供はできるのかと…。」
まぁ、そうなるだろうなと予測はできる。ルーカスは知的好奇心の強い子だから、いつかは聞かれるだろうと思っていた。しかしまさか、それを最初にリヴァイに聞くとは……。
「…リヴァイは、どう答えたの?」
「男と女が、人に見られねぇところである事をしなきゃならねぇ、と。もちろんある事って何と聞かれたが、もう少し成長したら教えてやると言っておいた。」
「そうなんだ…。…リヴァイ、がんばったね。」
「年々、アイツに似てきやがるな。」
「でもかわいいんでしょう?」
「そうだな。不思議な感覚だ。」
リヴァイがルーカスとそんな話をしていたなんて、今の今まで知らなかった。同性にしか聞けない事や話せない事もあるのだと思うと、夫がリヴァイで良かったと心から思った。
「リヴァイは…二人目とか、どう思う?」
「……お前の子供なら、何人いたって良い。だが…お前、ルーカスを産む時に死にかけたろ。」
「あぁ…そんな事もあったね。」
出産は、命懸けだ。体質とか関係なく死ぬ時は死ぬし、産まれる時は何事もなく産まれる。新しい命を産み落とすには、命の危険が伴う。だから、出産は奇跡なのだ。
「マーレの医療技術なら、こっちよりは安全に産めるみたいよ。」
「!…そうなのか?」
「うん。ピークちゃんが教えてくれたの。と言っても、私ももう年齢的に何人も産むのは難しいと思うんだけど……私も、リヴァイの子なら何人いてもいいよ。」
「……ユニ。」
リヴァイがこちらに腕を伸ばすのを見てすかさず体の向きを変えて、ぎゅっとその腕の中に抱き締められた。さっき掛けてもらったブランケットは床に落ちてしまったが、リヴァイに抱き締めてもらっているから暖かくて、必要なさそうだ。
「ルーカスは、考える事が大胆だね。」
「あぁ、どっかの誰かにそっくりだ。」
「ふふっ、確かに。」
「…ルーカスの期待に、応えてやんねぇとな。」
「もう…。そういう言い方するから、ムードが台無しになるんだからね。」
「あ?今さらそういうのはいらねぇだろ。」
リヴァイのサラサラした髪の毛が頬に当たって、擽ったい。背丈が同じくらいって、こういうのがあって良い。頬にちゅう、とかわいらしいキスをすると向こうからはかわいくないキスが返ってきて、気がついたら温かい…どころか、熱い。
「1週間もあるんだ。今日明日動けなくなっても、構わねぇよな?」
疑問形で聞いてきたにもかかわらずこちらの返答も待たずに私を抱き上げて向かうのはもちろん寝室で、これから行われるであろう行為を想像し、一気に血の気が引いた。