余談
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「ユニ、君に頼みがあるんだが。」
「はい、何なりと。」
エルヴィン団長からの頼みと聞いて、ほぼ条件反射で肯定の言葉が口から飛び出す。しかし私にとっては当たり前の事で、笑顔を浮かべて彼を見た。だと言うのにそんな頼みがあると言った彼はなぜか少しだけ険しい表情を浮かべていて、首を傾げた。
もしかして頼み事とは危険な任務で、心配してくれているのだろうか。
「どうかされましたか?」
「ン…、こんな事を君に頼むのは気が引けるんだが、ハンジに聞いたら君が適任だと言っていてな……。」
「私が適任、ですか。」
一体どんな任務なのだろう。危険が伴う任務ならば、そもそも私ではなくリヴァイの方が適任な気がするし…まさか、私が女だから色仕掛けが必要な任務とかだったらどうしよう。エルヴィン団長以外の男性に触れたりそういう言葉を吐くなんて、とてもじゃないけど無理かもしれない。いや、無理。でも……、
「エルヴィンの命ならば……いかなる任務も完遂いたします…!」
「!あぁいや、すまない。そんなに身構えなくていい。」
「え……、そう、なんですか…?はぁ…、よかった…。」
とりあえずはホッと胸を撫で下ろす。が、肝心な任務内容はまだ分からないのでこちらから尋ねると「任務という程ではないんだ。ただの個人的な頼みだよ」と。何でも自分でこなしてしまうエルヴィンが個人的に私に頼みたい事など、全く想像がつかない。
「はぁ…、いつまでもこうしているわけにもいかないな。」
ギッ、と音を立てて椅子に座り直したエルヴィンは、やっと覚悟を決めたようにため息を吐き顔の前で両手を組んだ。ただでさえそのポーズはかっこいいのに、いつになく真剣な視線がこちらに向けられるので思わず胸が高鳴った。
「ただ…、先日新しく注文したシャツを、一緒に取りに行って欲しいだけなんだ。」
「…え…、…あの、それだけ、ですか?」
「あぁ…本当に、それだけだ。」
「……あの、それでしたら、私がひとりで行くのが早い気がするのですが…。」
エルヴィンが一緒にと言うのだから何か理由があるはずだ。その理由を聞いていいものか戸惑って途中で言葉を切ると、やはりエルヴィンは言いづらそうに視線を逸らし横へと流した。その流し目がかっこよすぎるのなんのって…!!!
コンコン、
「エルヴィン。俺だ。」
「リヴァイか…入れ。」
思考が逸れたのを察したかのようなタイミングでの、リヴァイの入室。彼は入るなり私達の間の気まずい空気を察してか、僅かに眉間に皺を寄せ、首を傾げた。
「…エルヴィン、ユニにはもう話したのか?」
「いや…、今、ちょうどその話を。」
「え…?リヴァイも知ってるの?」
私が知らない話をリヴァイが知っているなんて、軽くショックだ。増してやエルヴィンがこんなにも言いづらそうにしている事案の話で、どうしてここまで口を閉ざし続けているのかよりも、今はそっちの方が気になって仕方ない。
「エルヴィン……どうして話してくださらないのですか…?」
「!すまない、ユニ。そういうつもりでは…!」
「はぁ…、だからさっさと話せと言っただろうが。」
じわ…と瞳に涙が溜まる感覚がする。こんな事で泣くなんてどうかしているとは思うが、やはりどうしたって悔しい。まるでエルヴィンに信頼されていないみたいだ。
「どうやらエルヴィンは、仕立て屋の一人娘にいたく気に入られたらしい。」
「え…?」
「リヴァイ。」
「その一人娘が、受け取りにはエルヴィン本人が来なきゃ渡せねぇと言ってきた。…そうだな、エルヴィン。」
「……あぁ、その通りだ。」
「…へぇ…なるほど…そういう事ですか…。」
確かに先日、エルヴィンは新しいシャツを仕立てに行った。シャツを仕立てに行っただけだというのにいやに疲れた様子だったから気になってはいたが、まさかそのような事になっていたなんて。エルヴィンの事だから、相手が気を悪くしないようにしながらもきちんと断ったはずだ。それでもなおエルヴィンでなければ渡せないなどと言っているのだから、相手はかなり押しが強い相手なのだろう。と、ここまでは予測できた。
「それで、私は何をすれば良いですか?エルヴィンに近づかないよう、忠告しましょうか?」
「いや…君には、私の恋人として同行してほしいんだ。仲睦まじいところを見せれば、さすがに諦めるだろう。」
「こ…恋人として、ですか…?」
恋人。その響きだけで口角が上がってしまうのは、仕方ないだろう。エルヴィンの口から恋人という単語が出てきて、それが私を指しているのだから嬉しいのは当たり前なのだ。
「リヴァイを連れて行って、リヴァイに惚れさせる方が穏便なのでは?」
「おい。」
「それも考えたんだが、彼女はその……背の高い男性を好むようでな。」
「でも……私が行くだけで、事態が好転するとも思えませんが…。」
「バカか、テメェは。」
バカ、と言ったのはもちろんリヴァイ。今の会話の流れで、突然バカと言われる筋合いはないと思う。
「お前程の美人がいるとなれば、さすがの奴も引き下がるだろうよ。その上目の前でイチャついてみろ。諦めるしかないと理解するはずだ。」
「…なんか、やけに具体的じゃない…?」
「あ?」
「いや、なんでもない。」
リヴァイがまさか、私の事を美人だと言うなんて。それに驚きすぎて、思考が一瞬そちらに持っていかれた。だって、リヴァイがこんなにストレートに人を褒めるなんて、未だかつて見た事がない。
「リヴァイがそこまで言うなら、大丈夫な気がしてきた。エルヴィン、その仕立て屋にはいつ行きますか?あと、その女性の容姿や風貌を教えてください。」
俄然自信とやる気が出てきた。私の大切な恋人に纏わりつく悪い虫は、なるべく早く駆除しなければ。そうしてようやく纏まった作戦は、2日後に決行する運びとなった。
エルヴィンだけがなぜだか少し申し訳なさそうにしていたが、私が出て自体が収束するのならいくらでも、何でもやるつもりだ。
2日後の決行日に向けて、翌日は久しぶりに街に洋服を買いに出掛け、美容院にも行った。寝る前はいつもより念入りにナイトケアをしたし、こちらの準備は万端だ。
そうしてまるで壁外調査前日のように気合いを入れてから、いつもよりも早く眠りについた。