余談
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「えっ!?リヴァイ、いつも椅子で寝てるの!?」
リヴァイが調査兵団へ入団してから、しばらく経った頃。何の気なしにお喋りしていたら睡眠の話になり、リヴァイの衝撃の睡眠スタイルを知った。本人は「そうだが」となんて事ない顔をしているが、大事な睡眠時間に椅子に座って眠るなんて普通じゃない。寝れる寝られないの問題ではなく、体に支障が出るはずだ。リヴァイ自身はそれが日常となっているので気にならないかもしれないが、きちんとした睡眠を取れば劇的に変わるのではないだろうか。
「リヴァイ…体を鍛える前に、睡眠と食事はちゃんと摂ろう。そうしないと、いつか体を壊しちゃうよ。体は資本だから、大事にしようね。」
「…そうなのか?」
「そう。立体機動装置だって、メンテナンスをしないと壊れるのが早いでしょう?」
「あぁ、なるほどな。理解した。」
立体機動装置に例えてやっと理解するなんて、リヴァイは変だ。でもリヴァイが理解したと言うのなら、ちゃんと分かってくれたはず。
と思い安心していたのだが、頭で理解したところで長年染みついた習慣というのは怖いもので、布団に横になったからといってすぐに眠れるというわけではなかった。数日経っても何ら変わりのないリヴァイの様子を見て、「最近横になってる?」と聞くと彼は「横にはなっているが…」と言葉を濁した。
「横になって、どうしてる?」
「いつものように腕を組んで、目を閉じてはいる。」
「それで、眠れてるの?」
「いや、なかなか寝付けねぇし夜中に目も覚めるな。」
「そう…。きっと無意識に、気を張っているのね。」
これでは、姿勢を変えたところで眠れないはずだ。でもだからといって今までの眠り方に戻していい理由にはならないし、できる事ならばベッドに横になって、普通に眠れるようにしてあげたい。
「ねぇ、今日の夜、リヴァイを寝かしつけてみてもいい?」
「あ?」
「ふふ、ごめんごめん。でも一回試させて。きっとよく眠れるだろうから。」
「…ずいぶん自信があるようだな。いつもエルヴィンの野郎でも寝かしつけてんのか?」
「エルヴィン分隊長?まさか。それで、今日の夜リヴァイの部屋に行っても良い?」
「…俺は別に、寝られなくても構わねぇんだが…。」
「それはダメ。どうしても抵抗するなら、私のベッドで寝てもらってもいいけど。」
「いや…分かった。俺の部屋で良い。」
「良かった。じゃあ、今日の夜部屋に行くね。」
「…了解だ。」
半ば無理やりではあったが、何とか了承を得られた。リヴァイにはまず、ベッドで正しく眠れるよう体を慣らしていくところから練習しなければならない。正しい睡眠が取れれば自然とパフォーマンスの質も上がるはずなので、リヴァイにはそれをぜひとも体感してもらいたい。
それぞれその日の夕食を食べ事務仕事を終わらせてシャワーを浴び、夜遅くなる前にリヴァイの部屋の扉を数度ノックする。そうしたら寝る準備を整えたリヴァイが静かに出てきて「…来たか」と一言。少しばかり嫌そうな顔をしたのは気のせいだろうか。
「カフェインのない紅茶を持ってきたから、いま淹れるね。えーと…キッチンはどっち?」
初めて来たリヴァイの部屋は当たり前のように整理整頓清掃がなされており、唯一生活感を感じられるのはデスク周り周辺のみでそれはそれで少し悲しい。
「そっちだ」と案内されたキッチンもきっちりと片付けられており、勝手に色々と触れるのに若干の抵抗はあったがリヴァイ自身は気にしていないだろうし私も気にしないように努めた。
お湯を沸かしたり茶器の用意をする事数分。紅茶のいい香りが漂い始めた頃にリヴァイが手を洗いにやってきて、私の手から「貸せ」とティーセットの乗ったトレーを奪い取っていった。優しさなのか紅茶が楽しみなのか、どちらだろうか。
ソファに腰掛けてしばらく談笑すると段々と気持ちは解れていき、やがて紅茶が空になる頃にはリヴァイは足を組み、頬杖をつくようになった。
「今日の訓練は疲れた?」
「いや…まぁ、いつも通りだな。」
「なら良かった。そろそろ眠くなってきたんじゃない?」
「まぁな。だが、眠いからといって眠れるもんじゃねぇだろ。」
「そうだね。んじゃ、そろそろ寝てみようか。」
「……あぁ。」
やっぱり、嫌だっただろうか。少しの間を置いて返答したリヴァイは、またしてもワンテンポ遅れて諦めたように立ち上がり歩き出した。
「…ねぇリヴァイ。本当にいいの?寝室に人を入れるの、本当は嫌なんじゃ…。」
「は?…そうじゃねぇだろ。お前こそ、そんな簡単に男の寝室に入って良いのか?」
「え?…あぁ、そういう事なら大丈夫だよ。他でもない、リヴァイだもん。」
「あぁ?」
「…ふふ。だってリヴァイは、私の信頼を裏切るような事はしないでしょ?絶対に。」
少しづつだが、リヴァイと親交を深めてきて分かってきた事がある。彼は私がエルヴィン団長に忠実なように、私に対して忠実であるという事。それがなぜなのかは分からないが、彼を見ているとまるで自分自身を見ているかのようで、彼の思考が多少は理解できるようになってきていた。
だから私に置き換えて考えれば、彼の今の問いの答えは自ずとそうなるのだ。
言われた張本人も図星のようで、少し驚いたように目を開いたのち、気まずそうに僅かに視線を逸らした。
「気遣ってくれてありがとう、リヴァイ。嬉しいよ。…そういう気遣いができるなんて、リヴァイはモテるだろうね。」
「は……、…揶揄ってんじゃねぇぞ。」
「揶揄ってないよ。純粋に、リヴァイの事を褒めたの。」
「……そうかよ。」
「ふふ…、うん。ほら、横になって。」
未だ躊躇いの色を見せるリヴァイも、ようやく観念してベッドへと横になる。そしてしばしの間気まずそうに天井を見つめたのち、こちらに背を向けるように体を横に転がした。
「ふ…。」
「…何笑ってやがる。」
「ごめん、何でもないよ。背中、軽くマッサージするからね。」
返事が返ってこないのをいい事にソッとリヴァイの背に触れると、思いの外筋肉が分厚くて驚いた。それに、硬い。周りと比べると小柄で華奢に見えるが、随分と質量がありそうだ。
しかしまぁ予想通りというかなんというか、筋肉が付いているとかよりも肩や首、背中に至るまで筋肉のこわばりからくる硬さがもう、常人のそれとは桁違いだ。別にマッサージに自信があるというわけではないが、こんなに肩や背中のツボがどこにあるのか分からない人は初めて見るレベル。よく毎日こんな体で働けるものだ。
「……眠ぃ…。」
「…ふふ、眠かったら寝ていいんだよ。そのためにやってるんだから。」
「…そうか、そうだったな…。」
表情は見えないが、聞こえてきた声は弱々しく、今にも眠りに落ちそうだった。そうして数分リヴァイの背中のコリをほぐす事に専念してようやく解れてきたかなという頃、気がつくと一定のリズムで呼吸が刻まれていて寝たのだと気がついた。
眠るまではもう少し時間がかかると思っていたのだが、それだけ今日の訓練がキツかったのだろう。…いや、今日に限らず、毎日キツいかもしれない。
「…おやすみ、リヴァイ。」
子供にするみたいに頭を撫でるとバシ、とすぐさま叩き落とされたが続く言葉はなく、どうやら眠りながらも体が拒否したようだ。…痛い。
何はともあれ寝かしつけは成功したのだとホッと胸を撫で下ろし、部屋の僅かな灯りを消してから、リヴァイの部屋を出た。私も、もう寝よう。
リヴァイと一緒に飲んだハーブティーの効果か既に体は眠る準備を始めていたようで、すぐにでも布団に入って眠ってしまいたい。
「…ユニ。」
「リヴァイ、おはよう。良く眠れた?」
「あぁ。…今日も頼む。」
翌朝顔を合わせたリヴァイはいつもよりもいくらか目付きが柔らかく、またいつも濃くその存在を主張していた目の下のクマは薄くなったように見えた。何より気持ちに余裕があるのか眉間の皺の深さが一番分かりやすく、今まで見た事がないほど穏やかな表情であった。
「ふふ…、よく眠れたなら、良かった。」
しばらく続けていけば、ベッドで眠る事に体が慣れて私の介助がなくとも一人でぐっすり眠れるようになるだろう。と、内心一人胸を撫で下ろした。