余談
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「ユニ。リヴァイが探してたぞ。」
「リヴァイが?ありがとうございます、ミケさん。私も探してみます。」
「紅茶。」
リヴァイが正式に調査兵団に入団してから数ヶ月。私とリヴァイと、周辺の人々の間ではこんなやり取りが増えた。
別に特段仲がいいというわけではないが、それは私視点だけの感覚で、リヴァイからしてみれば私とエルヴィン分隊長だけが唯一心を許している相手だからこういう行動を取るのだろう。というのが、先日エルヴィン分隊長との間でいきついた結論であった。私としては、もっと他の兵士達とも関わってほしいのだが…まぁ、人には人のペースというものがある。無理に仲良くしろと言うつもりはないし、無理をしてもどうにもならないのが人間関係というものだ。
「…?…何見てんだ。」
「いや…、リヴァイって、何をしたら笑うのかなって。そもそも、笑う事なんてあるの?」
目の前で紅茶を飲むリヴァイに、問いかける。私は未だかつて、リヴァイが笑ったところを見た事があっただろうか?否、私の記憶にある限りでは、ないはずだ。お気に入りの紅茶を飲んでいる今ですら、無表情を貫いているのだから。
「馬鹿言え。俺だって、笑う事くらい……ある。」
「へぇ…。例えばどんな時に?」
「どういう時…。…そういうお前は、どうなんだ。」
「私?私は──」
「いや、待て。やっぱりいい。いつも無駄に笑顔を振り撒いてるお前に聞くのは間違っていた。」
「無駄に…、って、結構失礼ね。」
聞かれたから答えようとしたのに遮られ、あまつさえ「やっぱりいい」とは…リヴァイは壊滅的に、人との会話が下手くそだ。というよりも、そもそもコミュニケーションの取り方に問題がある。
「リヴァイさ、もっと人と関わった方がいいよ。」
「必要ねぇ。」
「あるの。この前の壁外調査で、私とリヴァイは一緒に…たくさんの巨人を倒せたでしょう?あれは、ただ私達が強かったからってわけじゃない。たくさん練習して、連携が取れたから。その練習でたくさん話してコミュニケーションを取ったから、私はリヴァイがどういう判断をしてどう動くか予測できて、それに合わせられた。…つもり。壁外調査中に、いつでも私がそばにいるとは限らないからね。他の人とも戦えるように、信頼関係を築くのは、大事な事だよ。」
「……そうか。…承知した。」
「!」
長々と説明してしまったため、てっきり「ごちゃごちゃうるせぇな」ぐらいは覚悟していたというのに、彼の口から飛び出したのはまさかの「承知した」の一言。私の知らぬ間に、ずいぶん従順になったものだ。いやしかし、心当たりはないのだが…まぁ、いつ機嫌を損ねるか分からない前の関係よりは、格段に良いが。
「…じゃあ今度から、少しずつ練習しようか。」
「あぁ、頼む。」
私は、リヴァイの事をまだ全然理解できていなかった。ちゃんと説明すれば聞いてくれ、理解できれば考えを改めたり、時には意見もできる。…正直、私なんかよりよっぽど仕事のできる人だと思う。コミュニケーション能力さえ、鍛えれば。悔しいが、私もがんばろう。
まずはリヴァイの、コミュニケーション能力を鍛えるところから。
「ユニさん…いつまでアイツの教育係なんですか?」
「え…、アイツって、リヴァイの事?」
「はい。いつもアイツといるから、話しかけづらいんですよ。」
エルヴィン分隊長に任された書類チェックのため講堂の隅っこでひたすらに書類を捌いているうちに一人また一人と部下達が集まり、そのうち輪になって話し始めるのでもう書類チェックはあとででいいや、と書類の束を片付けた。そうして話しているうちにそういう話になった。リヴァイがここに来てから、私は彼の教育係に任命され拘束時間が増えた。立体機動訓練では他の兵士達と会いはするが、終わるやいなやリヴァイが迎えに来るし…やはりリヴァイがいると話しかけづらいのだと思う。自分で言うのも何だが、私は結構後輩達に慕われている。それなのにこうもリヴァイばかりに構っていれば、こういう風に不満が出るのも仕方のない事だ。
「別にいつでも話しかけてくれていいのに。仕事の話をしてるわけでもないし。」
「えっそうなんですか…?じゃあ、一体なんの話を…?」
「主に、紅茶の話だ。」
「!」
「リヴァイ!私に何か用だった?」
「茶葉を切らしちまった。悪いが少し分けてくれねぇか?」
タイミングよくリヴァイが現れた事で、私以外のみんな、気まずそうに口を閉ざした。リヴァイはというとそれを対して気にする様子もなく、茶葉を切らして落ち着かない様子であった。
「うん、いいよ。あ、それとキース団長がお知り合いから茶葉を頂いたそうなんだけど、紅茶を好まないからと譲ってもらったのがあるの。少量だけど、良かったらそれも分けてあげるよ。」
「本当か?すまねぇな。この前分けてもらったヤツだが、段々と美味さが分かるようになってきたところだ。だが、どうしてもお前が淹れたようにはならなくてな。」
「ふふ、じゃあまた淹れ方を教えてあげる。」
「……本当に紅茶の話してる……。」
そんなに、思わず声に出てしまうほど驚く事だろうか?私としては、「悪いが」とか「すまねぇな」という謝罪の言葉がスッと出てきた事の方が驚きで、嬉しいのだが。
「あとでお前の部屋に行ってもいいか?」
「いいよ。この書類に目を通したらエルヴィン分隊長に渡しに行くから、その後なら。」
「了解だ。…邪魔して悪かったな、お前ら。」
「あ…あぁ。」
最後にまた軽い謝罪の挨拶をして、リヴァイは去っていった。つい数日前にコミュニケーションを取る練習をしようという話をしていたので、リヴァイなりにがんばって会話に入ってこようとしたのだろう。しかしどうやら、彼には今のが精一杯だったようだ。でも、相手を気遣って謝罪の言葉を、それも軽く言えたのは、大きな成果だ。かわいい部下の努力を間近で見られて、私としてはとても嬉しい。
「リヴァイは敬語も使えないし口も悪いけど、それ以外は本当はとても良い人だよ。それに、話してみると意外と面白いし。」
「へぇ…。」
「睨んでいるように見えるのも、実は睨んでるわけじゃないから。目つきの悪さにも、目を瞑ってあげて。」
「まぁ…、ユニさんがそう言うなら…。」
だからついつい、リヴァイの良さを売り込むように、補足をしたくなってしまう。彼の本当の良さが、みんなに理解してもらえるように。