845年~851年
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850年。あれから、5年が過ぎた。ウォールマリアの破壊された門は、未だそのまま開け放たれている。846年にウォールマリア奪還作戦なんて大層な名前のふざけたものが執り行われたが、そんなのは、ただ人類の口減らしをするためだけの口実だった。王都のやり方には、反吐が出る。
そして──私は今、調査兵団本部に1人取り残されていた。私以外の調査兵団員はみな、壁外調査へと出払っている。
私は、今回の作戦への参加を許されなかった。無理もない。壁外調査出征の前日に、40℃近くの高熱を出してしまったのだから。
私だって、部下がそうなれば参加を許さない。だからエルヴィン団長がそう判断を下したのは、何らおかしい事ではない。
体調が万全の状態でなければ、役には立たないからだ。
役に立たなければ、食われる。…だからだ。
このタイミングで熱なんかを出した自分を、未だかつて無いほどに恨んだ。
私の隊は、リヴァイを分隊長代理として数日前に壁外へと出ていった。
その間に熱は下がりはしたが、自分の不甲斐なさにずっと悶々とした気持ちで1人、調査兵団本部で過ごしていた。
しかし──そんな暗い気持ちを吹き飛ばすような轟音。それも、さらに重い気持ちにさせるような地響きが遠くから聞こえる。
これは───
「まさか…、また、超大型巨人が……!?」
訓練のためにベルト等は装着していた。焦る気持ちを抑えながら立体機動装置を装備し、壁に向かって飛び出した。
調査兵団は今、私1人。
ただの思い過ごしなら良いが、また壁を壊されたのだとしたら…!
そう思ったら全身に鳥肌が立ち、手が震えた。
「違う…、恐れるな…私には、巨人を倒す術がある…!」
そのための武器。そのための立体機動装置だ。
そしてそのために、毎日欠かさず、訓練をしている。
深呼吸して、乱れかけた精神を整えた。
まずは、確認だ。壁外調査の時のように落ち着いて、ウォールローゼを目指そう。それからの事は、その時に考えよう。
「なんて事…、やはり…ウォールローゼが…!」
目的地に着いてすぐ、私はまず、絶望を感じた。頭の中で想定した、一番悪い事態が目の前に広がっている。やはりウォールローゼは、突破されていた。そして外にいたはずの巨人が何体も、壁の中へと侵入している。
立体機動装置を着けた兵士達が何人も飛び交っているのが確認できる。きっと私が到着するよりも早く、駐屯兵団が動き出しているのだ。
「調査兵団団長補佐及び分隊長、ユニ・クラインです!調査兵団は現在、私1人。調査兵団本部で轟音を聞き、急ぎ参った次第です。状況は。」
「調査兵団…!?それも団長補佐…!助かった…状況は、見ての通りだ。巨人が壁内に侵入している。現状の作戦は、市民の避難誘導。並びに、巨人の掃討!ユニ・クライン分隊長。あなたには、巨人の討伐をお願いしたい!」
「もちろんです。では、すぐに。」
なんだ、意外と駐屯兵団もやるじゃない。前に壁を突破された時はなんにもできなかったのに、この5年の間に意識が変わったらしい。まぁ…あんな事があって、変わらない方がおかしいのだが。
「っ!…何してる!ボーッとするな!!」
思わず強い口調で叱責する言葉が出た。
目の前には、絶望の表情を浮かべ膝をつく少年。そしてその目の前に、巨人。巨人の手がその少年へ伸ばされる直前に、項を切り落とし屋根へと着地した。
再びその少年を見ると相も変わらず惚けているので、その胸倉を掴んだ。
「訓練兵!君は心臓を捧げると誓った、兵士だろ!諦めるな!!受け入れろ!!」
「あ…、調査、兵団…。」
「市民を守れ!!私は市民を守るため、行かなくてはならない!兵士を辞めるなら、その制服を脱ぎ捨て、早く逃げろ!市民を守りたいなら、今すぐ他の班に合流しろ!行け!」
「は、はい…!」
正気を取り戻した少年は、慌てたように立体機動装置のガスを吹かし、飛び立って行った。
正直、彼には市民を守る行動を取ってほしい。しかし、今は説得している暇は微塵もない。次に動いた大きい影目掛けて、私も立体機動装置を吹かした。
こまめにガスを補給する癖をつけていて、良かった。
カンカンカン──
「!…この鐘の音は…。」
「何してる!撤退の合図だ!…って、調査兵団!?」
「あぁ、ありがとう。どこに向かえば?」
「へ、兵団本部だ!」
「了解。」
この辺りの巨人はあらかた狩り尽くした。ガスにはまだ余裕があるが、巨人を何体も討伐した今、ブレードの刃を補給したかった。
「?……あれは…。」
本部へと向かうさなか、屋根の上に兵士達が数人集まっているのが目に止まる。その視線の先には、本部。そして、巨人の群れ。
「君達…訓練兵だね?アレが邪魔で補給に向かえない…で合ってる?」
「!調査兵団…!?…は、はい!ガスも残り少なく、俺達だけでは倒せないと…!」
「うん、偉いね。それで合ってる。正しい判断だよ。」
「え…!?」
「無理に突っ込むのは、命を捨てる事と同じ。命さえあれば、次に繋げる事ができるから。…それはそうと…みんな、残りのガスの量は?」
「…全員、ほぼありません!!」
「……そう…。絶望的状況ね。」
見たところ、ブレードの刃は集めればまだ余裕がある。しかしガスが残っている私が単身で向かうにしても、数があまりに多すぎる。補給所を守るのが何よりも大事だというのに、ここの兵は手薄だったのかもしれない。
「…仕方ない。私が様子を見てくる。ブレードを私に4本、分けてくれる?残りは均等に、全員で分けるように。」
ガシャン、と使い物にならなくなった刃を地面へと捨て、分けてもらったうちの2本を装填する。
そして、巨人の群れへと体を向ける。
「大丈夫。私、ただじゃ死なないから。私の合図があるまで総員、ここで待機ね。」
私はエルヴィン団長のいない今、ここで死ぬわけにはいかない。
エルヴィン団長は、本当にすごい人なのだ。
彼がこの先どんな功績を上げるのか、調査兵団がどこまで成長するのか、私はこの目で見なくてはならない。見続けなくてはならない。
そしてたまには私も、その手助けをしたい。
こんな絶望的状況の中でも、頭に思い浮かぶのはエルヴィン団長の事ばかり。
そのエルヴィン団長にまた会うには、生き残らなければならない。ここで。
1体、2体と、群れからはぐれてこちらへ向かってくる巨人の項を切り落とす。1体ずつであれば、倒せる。5体目の項を切り落としたところで、先程貰ったばかりのブレードの刃の切れ味が落ち始めた。こんなにも立て続けに巨人を討伐する事なんて、そうそうない。多くても3体程倒して移動しながら、補給をする。ガスの補給には時間がかかるが、ブレードの刃であれば馬につければ持ち運びしやすいし、すぐに補給できる。しかし今は、その馬はない。補給所は、巨人まみれ。巨人の討伐という点以外は、壁外調査とは全く異なった状況だ。
「ミカサ…!!」
「!?…っ、何をしているの…!?」
近くで人の声がしたと思ったら、あの時の少年。その視線の先には、落ちていく人影。サァッと血の気が引く。ガスが、切れたのだ。
すぐさまアンカーを伸ばして飛び出すが、その前に巨人が1体飛び出してきて、足止めを食らう。遠回りをしてその巨人の項を切り落としてから落ちた訓練兵を見ると無事立ち上がってはいたが、完全にガス切れ。その上すぐ目の前に巨人。しかしそんな状況だというのにその少女は折れたブレードを構え、真っ直ぐに巨人を見据えていた。その姿は私の部下──リヴァイとよく似ていた。