851年~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あれ?ユニさん、なんで男物のコート着てるんすか?」
「…リヴァイの服が着たかったからだよ、ジャン…。」
朝起きてから勲章授与式、追悼式典に向かい、行く先々で同じ質問をされた。最初はしどろもどろになっていたが、あまりに何度も同じ事を聞かれるので私の中での答えは固定化された。もう、一言で終わるなら何でもいい。今しがた聞いてきたジャンも「女子ってそういうの好きっすよね」と納得してくれたので、もうそれでいい。しかし女性物か男性物かなど今まで気にした事がなかったが、みんな意外と人の事をよく見ているものだ。
いざ式典が始まると、ヒストリアや偉い人達が長々と話を始め、しかし弛れる事や動く事は許されないため必然的に考え事をするしかなくなった。おそらく、みんなそうだと思う。
チラ、と斜め前の車椅子に座るリヴァイの後頭部を見下ろす。リヴァイは今、何を考えているのだろうか?その後頭部を見つめながら、私は今までの事……私が調査兵団へ入団してからのすべてを、思い出していた。
調査兵団の兵士達との、目的意識の違いに対する後ろめたさ。エルヴィンとの出会い。何度も行った、壁外調査。エルヴィンの指示で、巨人を倒して回った事。リヴァイとの出会い。リヴァイと飽きるほど立体機動訓練をした事。エルヴィンが、団長になった時の事。そして、超大型巨人が壁を壊してから、これまでの事。
一度考え始めると走馬灯のようにそれらが一気に思い起こされて、胸がいっぱいになった。調査兵団団長であるアルミンから順に名前を呼ばれ、私とリヴァイは最後に呼ばれる予定となっている。最初のアルミンがその名を呼ばれてヒストリアの前に行った時、不意にリヴァイが振り返り、真っ白いハンカチを差し出してきた。しばし見つめたのちようやく自身が涙を流している事を知り、有難くそれを受け取り静かに拭った。リヴァイのハンカチは、いつもいい匂いがする。
「リヴァイ・アッカーマン。並びに、ユニ・クライン。」
「はい。」
遅すぎす、速すぎず。適度なスピードで車椅子を押し、ヒストリアの前で止まり、ロックをかけ頭を下げる。ヒストリアの「お二人共…長い兵士生活、お疲れ様でした」という労いの言葉を聞いてようやく、私はもう兵士ではないのだと実感した。今ので、重くのしかかっていた肩の荷がおりた。
首にループタイの勲章が掛けられ、ヒストリアの指先にキスをする。リヴァイがそれをやっているのは少しモヤッとしたが、表には出ていないはず。
「…ただいま。」
「…はぁ…。…おかえり。」
いつも、こんなんだ。明るい気分で帰ってきた事なんて、未だ且つてあっただろうか?別に、帰ってきたくないというわけではない。ただあまりにも顔を合わせないから、何となく気まずすぎてこうなってしまうだけ。式典よりも実家に帰る方が、何倍も緊張してしまう。
「…二人とも、結婚するんだって?」
「えっ…なんで知ってるの?」
「ルーカスが教えてくれたのと…あんた、また記事を書かれてたよ。」
「えぇ…?また…?」
もう何年も前から、私の預かり知らぬところでゴシップ記者に幾度となく記事を書かれてきた。一体誰がいつ見ているのか知らないが、こうも多いとさすがに怖い。でもエルヴィンがそれを知りながらも害はないと放置していたので私もずっと放置していたのだが、エルヴィンが亡くなった時もルーカスが産まれた時も記事に書かれていた。…というのも、リヴァイが記事を集めていたからである。元々エルヴィンが記事を集めていたのを遺品整理していた時に発見し、燃やそうとしたところをリヴァイに奪われ今やリヴァイの数少ない趣味と呼べるものになっている。二人とも、趣味が悪い。
「はいこれ、あんたの分。」
「あぁ…しばらく入院してて、追えていなかったからな…感謝する。」
「…えーと…、そういうわけで、結婚するよ。」
「あぁ、おめでとう。リヴァイ兵長なら、あんたを幸せにしてくれるでしょ。」
…軽い。いや、軽すぎやしないだろうか。確かにリヴァイといれば私は幸せかもしれないが、そうじゃなくてこう…祝福の言葉とか、結婚生活のアドバイスとか、そういうのがあるんじゃないだろうか、普通は。
「私も、リヴァイを幸せにしたい。だから…二人で幸せになろうと思う。」
「…うん、いいんじゃない?」
「軽いなぁ…。まぁ、いいけどさ。」
「…エルヴィン団長が、前にここに来た時があったでしょ?あの時、もしリヴァイ兵長と一緒になると言った時は、祝福してあげてくれって。」
「えっ…!?」
「自分は意気地無しで一緒にはなれなかったから、あんたを幸せにしてくれるであろうリヴァイ兵長なら、あんたを託せるって言ってたんだよ。…あんた、男運良いのね。」
男運…そんな一言で済ませてしまって、いいのだろうか?確かにエルヴィンもリヴァイも、私には勿体ないくらい最高の男性だ。そんな二人にこんなにも幸せを願われて…私はなんて幸せ者なんだろう。
「二人とも……、…ありがとう…。」
「…泣くな、ユニ。幸せなら、ずっと笑っていてくれ。お前の笑顔が見られれば、俺も幸せなんだ。」
ぎゅ、と私の両手を包むリヴァイの手は、温かい。それが涙を増幅させるが、リヴァイが笑っていて欲しいと願ってくれているなら……と、笑顔を浮かべた。
『団長を敬愛する夢主と兵長』
-end-