851年~
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「遅くなってごめんなさい、エルヴィン。…もう、陽も落ちちゃいましたね…。」
慰霊碑の前に着いた時には既に、太陽は西の空に吸い込まれていったあとだった。まだ少しオレンジ色が残っているが、じきにそれも消えるだろう。リヴァイの膝に無理やり上着を掛けて、献花台へ花を供えた。
「あの時、私達の前に姿を見せてくれて…ありがとうございます。あなたとまた会えて、嬉しかった…。…改めて、すべてが終わった事を報告いたします。もう、巨人のいない世界になりましたよ。平和な世界とは、いかないようですが…調査兵団は、もう不要のようです。色々と課題はあるでしょうが、この国が変わる、きっかけになった事は確かです。それは私達だけの力ではなく、調査兵団の団長としてあなたと、仲間の命を懸けてくれたからできた事。私はそれを、誇りに思います。たいした目的もなく入った調査兵団であなたと出会い、恋をし、共に戦い、夢を叶え、子供まで授かって…リヴァイやハンジさんとも出会えた。そんなあなたがいない事だけが悔やまれますが、それでも十分なくらい、私は幸せです。あなたに、たくさんの幸せを貰いました…!…私は、残りの人生はリヴァイと、ルーカスと共に生きます…。何をしたらいいのかは相変わらず分かりませんが…リヴァイと一緒に考えて、生きていきます。だからエルヴィン、地獄でまた会える時まで……私達を、見守っていてください…!」
言いたい事をぜんぶ言い終えた頃に、パサ、と肩にジャケットが掛けられる。振り返るとリヴァイが立ち上がってすぐ側まで来ていて、お互い労わるように背中に腕を添えた。
「…気が済んだならそろそろ行くぞ。夜は冷える。」
「……そうだね。」
返事は返ってはこないが、別にいい。あの日見た幻かもしれないエルヴィンの笑顔が、きっと答えだから。
「おかえりなさい!兵長!ユニさん!」
「ママ、パパ。」
「!」
久しぶりに帰ってきた調査兵団本部。煌々と明かりが灯っているとは思ったが、まさか私達を出迎えるためにみんなが揃っているとは、思わなかった。ミカサ以外の104期生達やルーカスのみならず、ピークちゃんやライナー、アニまでいて、私だけではなくリヴァイまで、驚いて言葉を失ってしまった。
「おせーよ、ジャン!」
「仕方ねーだろ!ユニさんがどうしても行かなきゃならねぇところがあるって言うんだから。」
「…ピークちゃん…向こうで、見送ってくれたのに…。」
「あとから合流するつもりだったのに、待たされるとは思わなかった。」
「!ご、ごめんね…!」
「ふふ、嘘。そもそも内緒にしてたのが悪いしね。さ、中に入ろ。」
調査兵団内に、ピークちゃんがいる。なんとも変な感じだ。104期生達にお願いしていたルーカスとリヴァイの手を引いて講堂へと行くと肉料理やら魚料理やらが並んでいて、みんなご飯も食べずに待っていてくれたのだと知り、申し訳なく思った。が、ここで申し訳なさを出してしまっては、場を白けさせてしまう。
「ふ…、ふふ…。…ありがとう、みんな。」
この場で素直に感謝を述べる私とは対称的にリヴァイはというと、まず掃除がちゃんとされているかが気になったようでテーブルを軽く撫で「ふむ…悪くない」と。どうやら合格らしい。リヴァイの異常なまでの潔癖度合いを知る104期生は、あからさまにホッとした表情を浮かべていた。
「うっ…!」
「…?どうした、ユニ。」
「は…、入らな…!」
宴が始まってしばらく経った頃、そういえばそもそもは明日着る服のサイズの確認のために来たのだと思い出し、自室へと戻ってきた。久しぶりに足を踏み入れたそこは埃っぽいかと思いきやそんな事はなく、104期生のみんなは個人の部屋まで掃除をしてくれたようだ。
それで、クローゼットから正装のコートを取り出し何の気なしに羽織って、固まった。一度脱いでサイズを見てみると確かに私のものではあったが、なるほど確かに、今のサイズではなかった。つまりは、今の私には小さいのだ。
「か、肩のとことか、特に…っ!」
「フッ…、…ははっ。」
「わ、笑い事じゃ…!」
本当に、笑い事じゃない。このままだと明日、大事な式典中に服が破れかねない。下手したらボタンが吹き飛ぶかもしれない。リヴァイと私の帰還を待ち今になって式典を執り行うというのに、これでは、あまりにも…。
「…仕方ねぇな…俺のを着ろ。」
「え…、…わ…、ぴったりだ…。」
リヴァイの服のサイズは知っている。私とそんなに変わらないはずだった。しかし言われるがまま着てみるとそこは男女の差と言うべきか…リヴァイの男物のコートは肩周りが若干広く作られており、ウエスト部分も括れておらずすんなりと入る。いよいよリヴァイとほぼ同じサイズに近づいてきた事が、少し悲しい。
「ふ、太ったわけじゃ、ないからね…!」
「あぁ…分かってる…。」
私も悲しいが、リヴァイも悲しいだろう。そもそもリヴァイは口には出さずとも身長を気にしているし、守りたいと思っている女性よりも華奢な体型になってしまったとなれば、気にしないわけがない。私としても、体重が増えるたびに強くなったと喜ばしい気持ちの反面、少し悲しくなる。
「…運動やめて…痩せようかな…。」
「!…その必要はない。むしろ以前のお前は細すぎると…そう言っただろうが。」
「でももう…誰かと戦う必要もないんだし…。」
「お前はその辺の男に襲われるから、却下だ。俺がこれから鍛え直すから、お前も気にするな。」
「リヴァイ…。…私、その辺の男に襲われた事はないんだけど。」
「…これからもそうとは、限らねぇだろうが。…明日着るもんの確認も済んだ事だし、戻るぞ。」
リヴァイは目つきが悪いし口も悪いし態度も悪いが、仲間想いで実は優しく、努力ができる人。きっとみんなが気づかないだけで、ものすごくいい男。そんな人と結婚できるだなんて…と、今さらながら実感が湧いてきた。
「…今さらかもしれないけど、私、リヴァイに釣り合う女性になるね…。」
「あ?急になんだ。」
「いや、ただの決意表明。…気にしないで。」
「…俺が、今のお前が良いと言ってもか?」
「えっ。…うん。それとこれとは別というか…。」
「…そうか。」
ススス、とリヴァイのそばに寄ると、何も言わず手を握ってくれる。その力は以前よりは弱いものになってはいたが力強く、私の決意はますます固くなった。
今まではリヴァイは何があっても私を好きでいてくれると、慢心していた気がする。私が、そうだった過去があるから。しかし私はリヴァイではないし、リヴァイも私ではない。夫婦になるのだから、互いを思いやり支え合って、どうせならば周りからいい夫婦だと思われる関係になりたい。リヴァイはきっと理想の夫になるだろうから、なおのこと。
「リヴァイとの結婚式、楽しみだなぁ…。」
「…そりゃいい事だが…。…お前、何か大事な事を忘れてやしねぇか?」
「え?…あ、指輪の事?婚約指輪と結婚指輪って、別物なんだっけ。エルヴィンが買ってリヴァイが着けてくれたから、デザインも気に入ってるし私はこのままで良いけど…リヴァイが買い直したいんなら、それでも良いよ。どっちにしろサイズを直さなきゃだから、お店には行かないとだね。」
「いや…そうじゃなくてだな…。…お前、お袋さんにちゃんと話したのか?」
「…!!……わ…、忘れてたぁ…!」
「ハァ…、だと思った。明日にでも、挨拶に行くからな。」
「う、うん…。」
リヴァイのこういうところも、好き。私だけじゃなくルーカスも母も大事にしてくれる、愛情深いところが。
…私が気にしなさすぎなのもあるかもしれないが、今はそれとこれとは別だと思いたい。