851年~
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「エレンはジークを介して始祖の巨人を支配してんだろ?先にジークを殺しちまえば、地鳴らしは止まるんじゃねぇのか?」
この先の戦いのための、作戦会議。向かった先がどんな地形でどんな惨劇になっているか分からない以上、作戦なんて無意味ではあるが…そう、これは作戦会議という名の、意志の確認、統一のための会議だ。
リヴァイの一言に一同は「確かに…」と納得した様子だが、そんな簡単に事が運ぶとは考えられない。むしろ上手くいかないと思っていた方がいい。
「ジークは、俺が仕留める。力を…貸してくれ。」
「兵長…。…もちろんです…。この飛行艇を飛ばすために、仲間を大勢殺しました。あれを…無意味な殺戮にするわけにはいきません…。すべては…地鳴らしを止めるため。俺はなんだってやります。」
「ジャン…。…かっこいい…。」
「あ?」
「…なんでもない。」
ジークは俺が…というセリフは私の膝枕に体を預けながら発したのに、私がジャンを褒めたぐらいで無理に体を起こそうとするのはさすがに、意味が分からない。
「エレンは…俺達に止めてほしいんじゃないのか?」
「…どういう事?」
「……いや、エレンなら…ありえるかもしれない…。」
「ずっと…疑問に思ってた…。エレンは…すべての巨人とエルディア人に影響を与える事ができる。なのに僕らは、変わりなく巨人の力を使えるままだ。」
「…エレンは意図的に我々を放任してるって事?」
「そう…自由にやらせてる。まるで…僕達がどうするのかを試すみたいに。」
「どうして…?地鳴らしを止められるかもしれないのに?」
「あいつだって…辛いはずなんだ…。人類虐殺なんてとても…耐えられる事じゃない…。俺だったら…、もう、始祖の力を誰かに任せてしまいたい。それができなければ…終わりにしてほしい…。誰かに…。」
かつてベルトルトの放ったセリフが、フラッシュバックする。
『誰がッ!!人なんか殺したいと!思うんだ!!』
『誰が好きでこんな事!こんな事をしたいと思うんだよ!!人から恨まれて…殺されても、当然の事をした。取り返しのつかない事を…。でも…僕らは、罪を受け入れきれなかった…。』
『僕らに…謝る資格なんて、あるわけない…。けど…誰か……。頼む…誰か…、お願いだ……。誰か僕らを、見つけてくれ……。』
ベルトルトのセリフ、そしてライナーの独白。おそらく、それが答えだ。
エレンは大好きな104期生達を死なせたくないし、できる事なら彼らに、救ってほしいのだ。
「…ッ!…ここは…、エレン?」
「なんだ…聞いてやがったのか?」
また、エレンの世界。いや、始祖ユミルの世界か。また背景が一瞬にして神秘的な風景に変わる。エレンから私達に、伝えたい事があるようだ。
「エレン!!聞いてくれ!!もう十分だ!きっと…これから何百年先、誰もパラディ島に手を出せない!!それほどの恐怖と破壊の限りが尽くされた!!今なら不可侵条約を結んで終わりにできる!!これ以上、誰も殺さなくていい!島はもう、大丈夫だ!!僕達が悪かった!エレンをここまで追い込んだのは僕らだ…!!」
「エレン。どこにいるの?会いたい…。会ってエレンの不安をぜんぶ、吐き出してほしい。…っ!」
アルミンに続いて語りかけると、信じられないものが視界に映った。私が最後に見たあの時の姿のままの彼──エルヴィンの姿が、そこにはあった。
「…エルヴィン…、なん、…どうして…。」
もうほとんど覚えていなかった彼の顔が…目の前にある。そうだ…彼は確かに、こんな顔をしていた。ちゃんと、忘れてない。覚えてた。
「!…ユニ…、コイツは…エルヴィンじゃねぇぞ。」
そんな事は、薄々分かっている。分かっていても、縋らずにはいられなかった。胸に頬を寄せても彼の香りはしないし、抱きしめてもくれない。ただ、記憶の中のあの顔で、優しく微笑むだけ。だからこれはエルヴィンであって、エルヴィンではないのだ。
「…ありがとう…エレン…。」
そう呟いたと同時に、フッと現実へと返ってくる。リヴァイは苦い顔をしていたが、私はそれに笑顔を返した。
「なんてツラだ…、ユニ…。」
「…ふふ…、エレンは…私の事も大切に想ってくれてるみたい…。かわいいなぁ…本当…。」
エレンはきっと、私の言葉を聞きたくなかったのだ。だから私に、エルヴィンの姿を見せたのだ。私が自意識過剰な可能性はあるが、私の言葉を聞けば、決心が揺らいでしまうと思ったのではないだろうか。
「…エレンを、救おう。」
それがエレンを生かす事になるか殺す事になるかは分からないが、私たちの手で、救ってあげなければ。
ブオォォォオ──
「始祖の巨人…すごいサイズね…。」
私達は今からあれを、倒すらしい。戦鎚の巨人の能力もあるのに、一体どうやって?考えても、分かるわけがない。だが、やらなければならないのだ。
「リヴァイ。一応聞くけど、体の調子は?」
「あぁ…最悪だ。」
「了解。無理のない範囲でカバーし合おう。」
「お前がいるなら、問題ない。」
装備できるものは可能な限り、装備する。ライフル銃は巨人相手にはいらないだろうと、超硬質ブレードと雷槍だけを選び、体中に纏った。ガスも満タン。準備はバッチリだ。
「リヴァイ…帰ったら、私と結婚してくれる?」
「あ?そういう話でさっき纏まったんじゃねぇのか?」
「そうだけど…最終確認だよ。あと、私も言いたくなっちゃった。…痛っ!!」
ガッ、と、頭どころか髪を掴まれて、リヴァイの方を向かされる。何度も言わせるなという、苛立ちのせいだろう。
「俺は、やると言ったらやる。やっぱりエルヴィンとじゃなきゃ嫌とは、言わせねぇぞ。そんな事を言えば……一生牢屋に入れて監禁するからな。」
「えぇ…重…。」
「あ?」
「…大丈夫。さっきも言ったでしょ?私はエルヴィンを愛してるけど、リヴァイの事も愛してる。エルヴィンの方が…とか、リヴァイの方が…とか、そういう次元じゃないの。舐めないでよね。」
「…そうか…。安心した。」
「それは何よりだけど…いい加減、離してくれない?」
「あぁ、悪い。…!」
「ふふ…、生きて帰れる、おまじない。」
髪の毛を掴んでいた手が外されたタイミングを狙って、キスをひとつ。みんなの視線なんて、知った事か。
「…アルミン団長。前団長から、私の上手な扱い方は引き継いでる?」
「えっ?いえ…。」
「でしょうね。ハンジさんも、引き継ぎされてないって言ってたから…。」
「…コイツは、ある程度自由にさせとけ。目標さえ分かってれば、あとは勝手にやって、勝手に帰ってくる。だが、判断を迷うな。迷えば、コイツは死ぬと思え。」
「えっ!?」
「もうエレンの元に着く。最初は、何をしようか。」
「……始祖の巨人の上に降り、ジークの本体を探しましょう。」
「…了解。アルミン団長。」
説得は、きっともう叶わない。それでもアルミンは、諦めきれないのだろう。私もそうだ。エレンを殺す覚悟を決めながらも…心のどこかで、エレンを本当の意味で助けたいと思ってる。
「クソッ…もうほとんど、エンジンが動いてない!」
「早く飛び降りるよ!」
「早く来い!オニャンコポン!!」
「まだだ!!始祖の上まで舵を取る!俺はその後不時着してみせる!だから確実に始祖の巨人の元へ降りろ!分かったな!!」
飛行艇の限界に、船内は騒然となり始める。そろそろ、本当に行かなくてはならない。
「うっ…!!」
息を吐いて重い腰を上げた瞬間、リヴァイに腰を掴まれ、椅子へと押し付けられる。飛行艇が、急旋回したからだ。
「…いやがるな、獣のクソ野郎が!!」
ようやく、ジークを殺せる。そう思ったら、いてもたってもいられない。これまで手の届くところにいたのに生かしておく事しか許されず、結局逃げられた。それが今日、とうとう許可が降りたのだ。
「っユニ!…チッ。」
誰かに引き留められる前にひとり、飛行艇から飛び降りた。
目標は真下の、獣の巨人だ。