851年~
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「ライナー。新型立体機動装置の訓練、付き合うよ。」
「…ありがとうございます。」
飛行艇の準備が整うまでの間、誰もいなくなった街でライナーと二人、立体機動装置で飛び回った。彼は元々扱いが上手かったから、何ら問題はない。
「さっきのユニさんの戦い方…兵長を見ているようでした。」
「そう?リヴァイが言うには、リヴァイが私の真似をしてるらしいけど、そのせいかな?」
「いや…なんというか、気迫が。」
「…怖かったって事?」
「はい…。前に追いかけられて内側から削ぐと言われた時も、怖かったです。」
「あれは…だって、エルヴィンが死にかけて、気が立ってたから…。」
「そうですね、すみません。」
元は敵同士。会話を始めてみても、どうしても気まずくなってしまう。こんなんじゃ、ダメだ。私は104期生達と違ってライナーと思い出や親交があるわけじゃない。昔を思い出して、明るく話をしなければ。
「あの時はよくもやってくれたよね。私もエルヴィンも入院して…立体機動装置を装備できるまで、1ヶ月もかかったんだから!」
「はい…、すみませんでした…。」
「…君はアレだね。しばらく見ないうちにずいぶんネガティブになったね。リヴァイのネガティブとは違って、めんどくさい。」
「……。」
この感じは、エレンのに似ている。エレンも自分に自信が持てなくて、見る度に落ち込んでいた。懐かしい記憶だ。
「結婚式、来てね。」
「…はい。」
「そのためには生き残るんだよ。」
「…はい…。」
「そろそろ戻ろう。」
もうそろそろ、整備が終わってもおかしくない。港の格納庫へと向かい立体機動で降下して行くさなか、絶望的なものを見た。
「…!!もう…、ここまで…!」
地鳴らしだ。実際に自分の目で見ると、恐怖を感じる。パラディ島の壁が、そのまま迫ってくるみたいだ。
「出航はまだ…、えっ…!?」
血を流し倒れるフロック。大慌ての整備士達。ここで何かあったと察するには、十分だった。おそらく出港は、まだできない。
「アルミン。何か…手はないの?」
「もう…これしかない。僕が残って足止めを…。」
「お前はダメだ!エレンを止める切り札はお前しかいない!!ここは俺が!!」
「ダメに決まってるだろ!!巨人の力はもう、一切消耗させるわけにはいかない!!」
「ハンジさん!」
「みんなをここまで率いてきたのは私だ。大勢の仲間を殺してまで進んだ。このけじめをつける。」
「待って…、待ってよ、ハンジさん…!」
「…アルミン・アルレルト。君を第15代調査兵団団長に任命する。調査兵団団長に求められる資質は、理解する事を諦めない姿勢にある。君以上の適任はいない。みんなを頼んだよ。」
そんなの、ダメだ。エルヴィンが亡くなってから、リヴァイと共に私を支えてくれたハンジさんを、私は失いたくない。彼女は、数少ない私の大切な人なのだ。
「嫌だ…、ハンジさん…!!」
「ユニ、ごめん。君らの結婚式、参列できそうにないや。」
「は…、ハンジさんが来られないなら、結婚なんてしなくていいっ…!!」
「はは…それではリヴァイがあまりに不憫すぎるだろ…。」
ぎゅう、と抱きしめて、少しでも考え直す余地を作ったが、それも無駄だった。彼女が歩みを止める事はなかった。
「じゃあハンジさんと結婚する!!するから…!行かないでよ…!!」
「!…一番魅力的な言葉だな…。でも…きっとこの後エルヴィンに会うから、君にプロポーズされたって自慢しちゃお。…ミカサ、ジャン。ユニを抑えててくれないか?」
「…っ、ハンジさん!やッ…!離して…!!」
彼女の進む先にはリヴァイがいて、一言二言交わした末、ハンジさんは巨人の群れに向かっていってしまった。ついて行こうと二人を振りほどき走り出すと当たり前に今度はリヴァイに捕まって、流れるような動作で立体機動装置を外され、追いかける事は叶わなかった。
「リヴァイ…、ハンジさんが…!」
「あぁ…。」
リヴァイの声は、震えていた。リヴァイだって本当は、止めたいはずだ。エルヴィンを看取った時のリヴァイはもしかしたら、こんな気分だったのかもしれない。
「う…っ!」
「泣くな、ユニ。…いや、思う存分泣け。…お前が戦場で泣くのは、初めて見るな。」
確かに、そうだ。泣きたい時はいくらでもあったが、実際にこうして大声で喚きながら涙を流した事は、今まで一度もない。それくらいハンジさんは、私にとって大事な人だったのだ。
「塞がった!出発するぞ!!」
「!…行くぞ。ハンジの命を無駄にしねぇためにも。」
「っ…!」
手足の震えを無理やり押さえつけて、外れた立体機動装置を拾ってリヴァイの肩を支え歩き出す。ハンジさんは私達を生かすために、あの壁の群れに立ち向かって行った。なら、私はここで死ぬわけにはいかない。そう思ったら涙は引き、手足に力が戻ってきた。本来の、私の姿だった。
「ルーカスは?」
「既に、向こうの船の中だ。」
「挨拶…しそびれちゃった…。」
「問題ない。俺が伝えるべき事は伝えた。あとは生き残りさえすれば良い。」
「…なんだ。なら大丈夫だね。」
みんなで押し出した飛行艇に飛び乗って、窓から外を見る。そこには死力を尽くして地鳴らしに立ち向かうハンジさんの姿があって、ちょうど、落ちていくところであった。
「…自由の、翼…。」
その姿は、調査兵団の証である自由の翼を体現していた。思わず無意識に、心臓を捧げた。
「ユニ。念のため、それは外しておけ。」
「え…?…あぁ、これ?…うーん…いや、着けておきたい、かな。」
それとは、左手に着けた指輪の事。これからまた戦場で激しい戦いになるのだから、失くしたり傷ついたりしないためにも外しておいた方がいいというのは、理解できる。が、私はどうしても、これを外したくない。
「あ?…貸せ。…っ、おいこれ…抜けねぇじゃねぇか。」
「痛たた!無理!千切れる!…はぁ…リヴァイの気持ちも分かるけど、今は外したくないの。諦めて。」
「外れねぇの間違いじゃねぇのか?」
「まぁそれもそうだけど…、これを見れば、すぐにエルヴィンを思い出せるから。」
「…クソが。」
「ふふ…今さらヤキモチ妬かないでよ。かわいいんだから。」
「あぁ?」
かわいい。リヴァイは年上だし男の人だけど、やっぱりずっとかわいい。子供のようだとは思わないが、子供をかわいがるように甘やかしたいと思うのは、変だろうか?
「…無理やりにでも歩けるようにはなったんだね。でも、戦場に行くまでは横になってて。」
「……チッ。承知した。」
リヴァイは、不思議だ。何をして欲しいか、その発言の意図は、行動の真の意味などは私にも分かるが、どうしても、なぜそこまで私に従うのかが分からない。これがアッカーマンの習性じゃないというのなら、一体何なのだろう。彼との10年の付き合いの中で、一番の謎だ。
私の膝に大人しく頭を擡げるリヴァイの頬を、優しく撫でる。擽ったそうにしながらも受け入れるその姿は、やっぱり猫のようだった。