851年~
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「…おい、テメェ…何見てやがる…!」
リヴァイの地を這うような低い声に、思わずビク、と体を強ばらせ、目が覚めた。しかし今日も今日とてリヴァイに胸倉をがっちりと掴まれており、体を起こす事は叶わなかった。
「…なに…どうしたの、リヴァイ…?」
首だけを動かしてリヴァイを見ると彼は一点を睨みつけており、その刺すような視線の先にいたのはイェレナであった。…これは確かに寝起きから、胸糞悪い。
「…こっち来ないで…。分かるでしょう…?」
私、リヴァイ、ハンジさん、104期。
ピークちゃん、マガトさん、ライナー、アニ、ガビ、ファルコ。
イェレナ、オニャンコポン。
自然とこのように別れていたはずだ。それがなぜ、目が覚めたら私達のそばにいるのか。
「すみません…危害を加えるつもりはありません。ただ私は…ユニさんと、仲良くなりたいんです。」
「…まだ出発の時間じゃないでしょう?私はプライベートの時間を削ってまであなたとお話はしたくないの。今まであなたとお喋りしてたのは、それが私の仕事だったから。勘違いしないで。」
「…想像以上に、手厳しいですね…。」
「寝込みを襲うのが悪い。私、こう見えて寝起きは最悪なの。分かったらあっち行って。」
ジークに裏切られたイェレナと話す事は、今はもう無い。強いて言えばエレンの目的地ぐらいだが…それなら、私じゃなくとも問題ない。私は今、睡眠という完全プライベートな時間を邪魔されて、内心かなり苛ついている。
「はぁ…リヴァイ…。」
「おい、匂いを嗅ぐな。毎日体を拭いてもらってるとはいえ、風呂に入ってねぇんだ。」
「私はリヴァイの匂いが好きだから、いいの。どうしても嫌だというなら、昨日リヴァイが着てた洗濯前の服で我慢──」
「いや、このままでいい。…クソが。」
なんだかんだ言って胸倉を掴んだままの手は離さないのだから、かわいい。本人の許可が降り思う存分匂いを堪能しているうちにイライラはすっかり収まり、そうしているうちにやがて一人、また一人と起き出してきた。
「…エレンを殺す覚悟の方はどうだ、ユニ。」
リヴァイの言葉に、ようやく上体を起こす。胸倉を掴む手は、離されていた。
「んー…、半々、かな。…いや、覚悟はあるけど…できる事なら殺さずに済む未来があればと思ってる。最後の望みに賭けて、それでもダメなら…殺すしかないよ。それが、心臓を捧げた仲間が報われる、唯一の方法なら。」
「……そうか。お前らしいな。」
「!」
私らしい…。私自身が自分の事が分からないのに、リヴァイは私の言葉を聞き私らしい、と言った。私は…自分が知らないだけで、自分というものを持っているのだろうか?この数年いくら考えても分からなかったので、今さら考えても分かるわけがない。でもリヴァイはそれを分かってくれているのだから…もう少し、自分に自信を持っていいのかもしれない。
「ユニさん、兵長。おはようございます。」
「おはよう、みんな。…よし、朝のお支度をしたらすぐ出発しよう!」
「あ、あの、ユニさん…髪の毛がエラい事に…。」
「えっ!」
「フッ…。」
リヴァイめ…!分かってて言わなかったな…!というか、この姿を104期生だけじゃなくてイェレナの前にも晒したって事じゃ…!
「向こうの川で洗濯してくるっ!」
この状況…逃げるしかない。洗濯物とタオルを引っ掴んで、川下へと駆け出した。そして頭をザバ、と濡らしてタオルで拭いて顔を上げると、そこには何も言わずにこちらを見るイェレナがいて、思わずビク、と飛び跳ねた。
「びっ…くりしたぁ…。なに、どうしたの?」
「驚かせて、すみません…。今ならお話してくれるかな、と。」
「……いいよ。その代わり、洗濯手伝って。」
「…ありがとうございます。」
イェレナをここに連れてくるのは、マガトさんの条件だった。なら、連れてきたあとはちゃんと監視しておいてほしい。いや…もしかしたらちゃんと監視はしているのかもしれないが、手綱は握っててほしい。フラフラと好き勝手歩き回るのは如何なものだろうか。
「あなたには…神のような人がいるんですよね?」
「…またその話?いるよ。正しくはいた、だけど。この人について行けば、私は絶対後悔しないって人が…。それが何?」
「そんな人が亡くなってしまったあとは…ユニさんはどうされたんですか?死んでしまいたいと思った事は、ないんですか?」
「…ないよ。彼が…、エルヴィンが、そんな事望んでなかったから。私を死なせないためにルーカスを残したの。…それに私には、リヴァイもいたから。」
「…ユニさんはどちらの事も、愛していらっしゃるんですか?」
「もちろん。」
「それは、どちらも同じ気持ちですか?」
「…少し違うかな。エルヴィンを愛する気持ちは、彼のためなら命を投げ打ってでも尽くしたいって思ってたけど…リヴァイを愛する気持ちは、私に尽くしてくれるリヴァイを、何がなんでも幸せにしなきゃ、というか…。…って、なんであなたと恋バナなんてしなきゃならないのよ。」
洗濯に集中しすぎて、正直に話しすぎた。洗濯も終わった事だし会話を切り上げみんなの元へ戻ろうと腰を上げ、洗ったばかりの衣服をカゴに入れた。
「それで、あなたの神はあなたを裏切ったみたいだけど…ジークからエレンに鞍替えでもするの?」
「…そうですね。ユニさんがエルヴィンさんからリヴァイさんに乗り換えたように、私もジークさんからエレンに乗り換えても許されるでしょうか?」
「は?…イェレナ…今なんて言った?」
「え?何か気に障る事を言ってしまったでしょうか?」
ドサ、と洗濯かごを取り落とす。中身は飛び出してはいないようだが、そんな事は、今はどうでもいい。
「お前っ…!っ、ふざけんな!!お前と一緒にするな!!」
「ユニ!おいお前ら、ユニを止めろ!」
「わー!!っユニさん、どうしたんですか!」
「落ち着いてください!!」
「離せッ!!一発殴らせろ!!」
「いったァ!!」
やっぱり、イェレナと話なんてするんじゃなかった。104期生達に羽交い締めにされ、捨て身で止めに入ったハンジさんの横っ面に肘鉄を一発食らわせたところでようやく我に返って、それでも腹の虫は治まらなかったがリヴァイの「ユニ。落ち着いて、こっちに来い」という呼び掛けに応じてようやく、乱闘騒ぎは収拾した。もう絶対に、イェレナと話なんてしないと心に誓った。
洗濯物を吊るした荷車が港近くへと到着する頃、先に偵察へ向かっていた車力の巨人が慌てた様子でこちらへと引き返してきた。なんでも、港は既にイェーガー派に占拠されているのだという。
「そん、な…!…ルーカス…!!」
フロックを侮っていた。まさか昨日の今日で既に先回りし、港を占拠するなんて…!港にある調査兵団本部のほど近くの家は、私とリヴァイと、ルーカスの家がある。仮住まいではあるが幸せな思い出が詰まった家で、壁内は戦場になるだろうからと実家ではなくこちらに匿っていたのに。フロックは非道で非情な奴だから、ルーカスが子供だからと手加減はしないだろう。ましてや、フロックが憎んでいるエルヴィンの実子なのだから。
「待てリヴァイ!動くな!」
「!…リヴァイ…!」
「泣くな、ユニ…。俺も戦いに参加す…っ、クソ…!」
ブルブルと、手足が震える。それはリヴァイも同じで、顔色も最悪だった。
「ユニ…、ユニ…!落ち着け!!」
「…ハンジさん…、ルーカスが…、ルーカスがいるの…。早く、行かなきゃ…!!」
「っ落ち着けって言ってるだろ!一人で行って、何になるっていうんだ!!」
「!!」
ガチャガチャと立体機動装置を装備する手を止め、ハンジさんを見る。ハンジさんだって、ルーカスを助けたいと、ルーカスの無事を、願っている。そのためには作戦を立て、順序だてていかなければならない。
「ごめんなさい…。皆さんどうか…力を貸してください…。」
深々と頭を下げ、ゆっくりと息を吐き出した。
こんなのはきっと、私らしくない。いつもの私はもっと冷静で、周りを良く見られるはずだ。
そうじゃなきゃ、死ぬから。
ここは、そういう世界だ。