851年~
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「ユニ…キスしてくれねぇか?」
交代で眠ろうと決めて、ハンジさんが眠る番。リヴァイは無理して起きていて、ハンジさんが眠るやいなやそうお願いをしてきた。それがかわいいのなんのって…!先ほどの会話の気まずさを隠しながら、そっと口付けた。
「…物足りねぇな…。もう一回頼む。」
「リヴァイは怪我人なんだから…我慢して。」
「…チッ。クソが。…水。」
体を動かすのも痛いだろうからずっと横になっているというのに…本当に威勢だけは良い。
ご所望の水も口移しじゃなきゃ飲まないなどとわがまま放題で、でもそれが私の前でだけ見せる彼の姿なのだと思うと嬉しく、ついお願いを聞いてあげたくなってしまう。
「ん…、…吸わないでよ。」
「ハッ、美味そうだったんで、つい。」
キスもしたし水も飲んだし、しばらくは大丈夫だろうと口元の包帯を元の位置に戻すと眉間に皺が寄ったが、乾燥して菌が入ったら治るものも治らなくなるので大人しく従ってもらった。
「…リヴァイはさ、アッカーマンの力に目覚めたのって、いつ?」
聞き辛かったが聞かなければならない事を口にすると、緊張から思いの外低い声が出た。リヴァイはそれを不思議がったが、特に追及する事なく、過去の記憶を探った。
「…まだガキの頃だ。生意気だってんで大人達に囲まれて痛めつけられていた時…だったな。…それがどうし…、おい…なんてツラしてやがる。」
「……いや…、ごめん…安心、して…。…ごめん…。」
一筋の涙が、頬を伝った。リヴァイが痛む体を動かそうとしているのを察してこちらから身を寄せると、触れ合ったところが温かくて、さらに涙の量が増えた。
やっぱりエレンが言っていたアッカーマンの習性の話は、嘘だった。
「エレンがね、アッカーマン一族は王家を守るために作られたものだって…。ミカサは、極限状態でエレンに命令された事で宿主だと錯覚して力に覚醒したんだって、言ってたから…。」
「…じゃあ、なんだ。お前が俺の、宿主だと?お前…それをまんまと信じたのか…?」
「だって…、ミカサは全部心当たりがあるみたいだったし…。」
「…まぁ、力に目覚めた時の話はしてなかったしな。…安心しろ。俺はアッカーマン一族じゃなくとも、お前を愛している。」
「…!!」
「…口が滑った。忘れろ。…ただ、まぁ…短くなった髪型も似合っている。むしろその方が好みだ。」
「あっ、ありがとう…!!」
やっぱり、リヴァイは短いのが好みだった。聞いたわけじゃなくともそれが当たっていて、嬉しい。
「…さ、怪我人はもう寝て。治るものも治らなくなっちゃうよ。」
「あぁ。…お前がいれば、すぐにでも…、…。」
「……え?リヴァイ?」
話しながら、眠りに落ちるリヴァイ。もう限界だったのだろう。そんな中であんな話をしたのだから、口が滑っても何らおかしくはない。ただ極限の状態であの言葉が出たのだと思うと……私の心臓が、煩い。
「…あれ?もう朝…?…まさかユニ、寝てるのか!?」
「…おはようございます、ハンジさん…。寝てません、起きてます…。ただ…リヴァイが私の胸倉を掴んで、離さなくて…。…助けてください…。」
リヴァイは一晩中私の胸倉を掴んで、離さなかった。眠る前にくっついて話していたのが原因だが、眠っているというのに馬鹿力すぎるし、解こうにもリヴァイを起こしたくないし無理やり解けば傷に響くだろうしと気を遣った結果、リヴァイもしくはハンジさんが起きるまで我慢する事を選んだ。そうしたら朝になっていた、というわけである。
「これが君の言う、リヴァイのかわいいところ…なのかな?」
「はは…。…かわいいでしょう?」
「怖いよ、顔が。…仕方ない。私が朝食の準備をするから、それを食べたら眠るんだ。分かったね?」
「はぁい…。」
私も、限界だ。半分眠っているような状況で朝食を口に運び、四つん這いで荷車で眠るリヴァイの隣まで行き、布団に包まった。そうしたら瞬く間に夢の中へ落ち、エルヴィンとリヴァイとルーカスと、私の大好きな3人と草原で転げ回って遊ぶという何ともメルヘンチックな夢を見た。極限状態の時に見る夢は突拍子もない下らない夢だというのが、この時証明された。
「……あれ…エルヴィンとルーカスは…?」
話し声が聞こえて目を開けるとそこは夢の中とは少し違うが外で、夢と現実の境目が分からずしばしボーッとしてしまった。そして寝返りを打つとその先には傷だらけのリヴァイがいて、驚いた。
「リヴァイ…その傷、どうしたの?…あれ、…あぁ、夢か…。」
「…少々、呑気すぎやしねぇか?見ろ…マーレの戦士だ。」
「…えっ!?」
ガバッと飛び起き、みすぼらしくなった荷車から飛び退く。リヴァイの指さした方には確かにマーレの戦士が2名いて、私の今の動きを見て武器を構えたので慌てて両手を上げた。
「ご、ごめんなさい、寝起きで…!」
「寝起きというのは、コイツの頭を見れば分かるだろう。抵抗の意思はねぇ。許してやってくれ。」
「えっ寝癖ついてる!?」
髪を切ったばかりだしケアもできていないし、何らおかしな事ではない。ぐしぐしと手ぐしで誤魔化して佇まいを直してようやく、思考が正常に戻ってきた。
「…お見苦しいところをお見せしてしまい、お恥ずかしい限りです…。どうぞ、本題に…。」
「…俺の目的は…ジークを殺す事だ。あんた達とは、利害が一致する。テオ・マガト。ピーク・フィンガー。」
「リヴァイ・アッカーマン。九つの巨人に引けを取らない強さを持つらしいが…そのザマで、どうやって俺の弾丸を避けるつもりだ?」
「!…今の彼には、弾は避けられません。ただ…撃つと言うなら、私が盾になります。」
「…そうだ、避けられない。だがこのザマを、敵の前にみすみす晒した。撃つか、聞くか。あんた達次第だ。」
リヴァイの真っ直ぐな物言いでの説得は、いつだって相手に届いた。今回も、届いてくれそうだ。
「我々はやるしかないんだよ…。みんなで力を合わせよう、ってやつを。」
コンコン、
「…ジャン、私。出てこられる?」
作戦を伝えに敵地までやってきたのは、私と、ハンジさんだ。髪を切ってすぐにはバレにくい私だけで行くと言ったのに、ハンジさんはどうしてもついて行くと言って聞かなくて結局二人でやってきた。ハンジさんは団長としてどうしても自分で行かなければと譲らないので、こうして夜になってからやってきたのだ。
「…ジャン…、来てくれて、ありがとう。」
「ユニさん…、その髪は…。…いえ。」
「…移動しよう。」
朽ちかけた古城の手頃な部屋のドアを開け、先に合流したミカサも入れた4人で中へと入る。少し埃っぽいが、長居するつもりもないので構わないだろう。
「リヴァイは…無事ではないが生きてるよ。しばらくは戦えないけど。そして…私達は車力の巨人らマーレ残党と手を組んだ。」
「…!!」
「エレンを止めるためだ。皆殺しは間違ってる。」
そう、間違ってる。そんなもののために、みんな命を投げ打ったのではない。そんな事をしては、死んでいった仲間達が浮かばれない。
私としてはジークの命さえ取れれば良いが、リヴァイやエルヴィンの事を想うと、死んでいった仲間が納得できるような結末にしてやりたい。