851年~
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ユニさんは…戦闘面以外で、リヴァイ兵長とミカサの共通点を感じた事はありませんか?」
「!…何が言いたいの?」
「…アッカーマンの習性の話です。」
エレンがジークの元へと行き、そこで得た知識についての話を聞いた。私をこの部屋に連れ込んだのは、この話を聞かせるためだったのだ。ミカサと同じアッカーマンであるリヴァイと関係の深い私がいれば、説得力が段違いだから。
「エルディア帝国がその長い歴史の中でユミルの民を弄り回した結果偶然できたのが、人の姿のまま巨人の力を引き出せるアッカーマン一族だ。何でもアッカーマン一族はエルディアの王を守る意図で設計されたもんだから、その名残で誰かを宿主と認識した途端血に組み込まれた習性が発動するって仕組みだ。」
「…え?」
「つまりお前が俺に執着する理由は、アッカーマンの習性が作用しているからだ。」
「…違う。」
「違う?何がだ?」
「違う…、そんなわけ…ない。だってリヴァイは…、私と出会う前から、強かった…。」
リヴァイが力に覚醒した時期を聞いた事はない。だけど、私と出会った時からリヴァイは、既に十分強かった。幼い頃から生きるために人を殺す練習をしていたといえど、あの強さはアッカーマン一族の力で間違いない…と、思う。だけど、元々のリヴァイの持つ身体能力の高さ故という可能性も捨てきれずにいる。リヴァイがこの場にいないので、断言できないのが…辛い。
「…要するに本来のミカサ自身は、9歳を最後にしてあの山小屋に消えちまったんだよ。アッカーマンの本能に忠実なお前を残してな。本来の自分を失い、ただ命令に従うために作られた一族。つまりは奴隷だ。…俺がこの世で一番嫌いなものが分かるか?不自由な奴だよ。もしくは家畜だ。」
「エレン!!」
「そいつを見ただけで、ムカムカしてしょうがなかった。その理由がやっと分かった。なんの疑問も抱かず、ただ命令に従うだけの奴隷が見るに堪えなかった。俺は…ガキの頃からずっと、ミカサ、お前が嫌いだった。」
「…うぅ…。」
「エレン!よくもミカサを!!」
ダンッ!
「…ミカサ?」
勝手に体が反応した。今目の前で起こった一連のやり取りは、そう確信するのには十分であった。
「…ユニさんは、ここから先はご自由にどうぞ。一刻も早く、兵長のところに行きたいでしょう。」
「っ…、エレン、エレンは本当に…、安楽死計画が人類に必要だと、考えてるの?」
「…安楽死…?」
「…イェレナが言ったんですか?…まぁ良いですけど…。」
「ねぇ、私はエレンの味方だよ。イェーガー派にはなれないけど、エレン自身に寄り添って、力になりたい…。エレンは一人で、何を抱えてるの?幼馴染には無理でも、私にそれを背負わせてよ。」
「…ユニさんは、ずっとそうですね…。ユニさんだけは、ずっと変わらず…。……だから、ダメなんですよ。コイツらと、同じだから。」
「…どういう、事…?…っエレン!」
ドンッ、と肩を押され、突き放される。一瞬揺らいだように見えたその表情は、瞬きの間に冷たいものへと変貌してしまった。
「早く行ってください。顔も見たくない。あなたの口から出てくるのはいつも、綺麗事ばかりだ。…良いんですか?マーレ産のワインはここだけじゃなく、各地に送られているんですよ。」
「っ!!」
もう完全に、取り付く島もない。私が彼を説得するには、もう遅すぎたのかもしれない。
リヴァイの元へ急がなければと、急ぎ立ち上がって、窓から飛び出す。
ごめんなさい、エレン。私はあなたの事を心配だと言っておきながら、本当に分かってはあげられなかった。そして、リヴァイ。エレンの言う事が嘘か本当か分からないけど、一瞬でもリヴァイを疑ってしまった。リヴァイがアッカーマンだからとか関係なく、リヴァイはリヴァイなのだと、胸を張って言えなかった。だから、一刻も早くリヴァイに会って、謝りたい。だから…どうか、無事でいて。
ドオォォオオン!
「っ!この音は、雷槍の…!」
巨大樹の森は、もぬけの殻だった。しかしそこで何かあったのだとひと目でわかるほどに、激しい戦闘の跡があった。降り出した雨に荷馬車の車輪の跡が消されぬうちにと、途中で拝借した誰のかも分からぬ馬で駆けて数分。突如として雷槍の爆発音が雨の音に掻き消される事なく辺りに響いた。ここからそう遠くない場所から聞こえて来た音の正体は、雷槍で間違いないだろう。また、それを使う人物は──リヴァイしかいないはずだ。
ドッドッドッ、と心臓が嫌な音を立てる。
そうして馬を走らせていくらか拓けた場所へ出ると、惨劇が目の前に広がっていた。体を激しく損傷し、蒸気を上げる巨人。まもなく息絶えるであろう馬2頭。爆発により粉々になった、荷馬車。
「…リヴァイ…、どこ…?…どこにいるの…?」
馬を降りると、手足が震えている事に気づく。向こうの方から誰かがやってくるのが見えたが、それよりも、見つけたくなかったものを地面に捉えた。
超硬質ブレードと、指だ。超硬質ブレードを好んで使っているのは、今やリヴァイしかいない。巨大樹から続いていた荷馬車の車輪の跡。その先の、大惨事の跡。つまりこの指は、リヴァイのものだ。
「──っ!?…リヴァイっ!!」
とうとう川岸に転がる、小さな体を見つけた。駆け寄って転がすと顔は酷く傷だらけであったが、確かにリヴァイであった。
「ユニ!君…どうしてここに…、っ!リヴァイ…!」
「リヴァイ…!返事してよ!起きてっ…、目を覚ましてよ、リヴァイ…ッ!!」
小さい割にずっしりと重いリヴァイの体を起こして、ぎゅっと抱きしめる。その体はまだ、辛うじて温かい。
「リヴァイ…、私を一人にしないって、約束…したじゃない…!」
「何があったか知らねぇけど…運がいい。一番の脅威が血塗れになってる。」
「頭に一発、撃ち込んでおきましょう。」
「!リヴァイに触るな。殺す。それ以上近づいたら、私が全員殺す。無理だと思う?私はやるよ。私が死んでも、地獄でエルヴィンが待ってくれてる。エルヴィンに会えるなら、リヴァイを守れるのなら、私はできる。」
「…ユニ。…もう手遅れだ。死んでるよ。」
「!?し…死んでない!!だってリヴァイは、私を一人にはしないと、私とエルヴィンに、そう誓ったんだから!!リヴァイが私を、一人にするわけが…。リヴァイが…私とルーカスを残して…死ぬわけ、ないじゃないですか……。」
最後の方はか細い声で、雨の音とすぐそばを流れる川の音で掻き消されてしまったかもしれない。ボロボロと零れる涙は、雨と混じって見分けがつかなくなった。リヴァイが死んだという事実が、私から冷静さを、思考を奪った。このまま何もかも、分からなくなってしまいたかった。何も分からないうちに、静かに死んでいきたいと…そう、思ってしまった。
「フロック!巨人の様子がおかしい!!」
「消えている?…死んだのか!?」
「いや…普通…蒸気が吸い込まれるようにして消えたりしない。」
「……リヴァイ…。」
すぐ側の喧騒など放っておいて、縋るようにリヴァイの胸へ頬を寄せた。そうしたら気のせいか、かなり弱々しくはあったが心臓の鼓動が聞こえた気がして、耳を澄ませた。
……トッ、……トッ、
「っ…!」
生きてる…。リヴァイはまだ、生きている…!そう思った瞬間に希望が湧いてきて、同時に、川の中へと引き摺り込まれた。雨で増水した川は流れが速く、簡単に追っ手から逃れる事が叶った。