851年~
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854年。マーレ大陸のアズマビト様のお屋敷には、定期的にエレンからの便りが届いていた。そしてそこには毎回独断専行で作戦を押し進めようとする事ばかりが記されており、ついに今日、その作戦が実行される。誰も納得などしていない、レベリオ奇襲作戦が。
納得していない上に勝手に進んでいく作戦に不満はあったが、それでも、この作戦が終われば一旦、エレンは戻ってくる。完全にこちらを裏切ったわけではないという事だ。だから私達は、エレンの作戦を決行するしかない。それもこれも、エレンを取り戻すためだ。
「ユニ…そろそろ降りるようだが、やっぱり、お前は残った方が…。」
「心配しないで。せっかくあんなに訓練したんだから、大丈夫よ。」
調査兵団として壁外調査に赴く際は、巨人を倒すための訓練に明け暮れた。それが敵は巨人だけではないと分かってから──エルヴィンが死にルーカスが産まれてからは、人を殺すための訓練に力を入れてきた。敵が変わったのだから、仕方のない事。ここにきてそんな事はしたくないなど生温い事は、言ってはいられなかった。
「行こう、リヴァイ。その戦闘服、よく似合ってるよ。」
「あぁ…お前もな。」
闇夜に紛れられるよう、装備は黒いものに一新された。敵の銃弾に少しでも耐えられるよう金属の鎧のついたそれは重かったが、体を鍛えたおかげかそこまで気にならなくなっていた。
空に浮く飛行艇からヒュ、と飛び降りて、街の明るいところを目指す。私達はエレンに攻撃する戦士を無力化すれば良い。
「…!」
街の中心に向かって飛んでいると、下の方で大勢の市民が街の中心から外側へと走っているのが見て取れた。それが壁を破壊された時に見た逃げ惑う住民のように見えて瞬間的に「助けなきゃ」と思ったが、ここはマーレ。あの時とは違う。私達は彼らにとって敵で、私達はここに、エレンを取り返しにきたのだ。
ドオォォン!
雷槍、銃、超硬質ブレード。我々の持つ武器という武器を用いて、敵を次々と無力化していく。トン、と建物に着地するとすぐ側の住居が大きく爆発し、何事かと様子を見に行くとジャンとフロックが口論をしているところだった。
「収容区ごと燃やすつもりか!?民間人への被害は最小限に抑えろ!」
「ここにいるのは敵と、敵の住む建物だけだ。俺達壁内人類が、どれだけ壁の外の奴らに殺されてきたか忘れたか!?」
意見の食い違いだ。フロックを始め一部の人間には、そういう思想を持つ者も多い。調査兵団という小さな組織の中でも軋轢が生まれているのだから、通りで世界から戦争が無くならないわけだ。
「…フロック。その気持ちは分かるけど、それじゃ争いは終わらないの。繰り返すだけだよ。」
思想の違うもの同士が分かり合うのは、難しい。それは人類の歴史の中で、いつの時代も起こってきた問題だ。だからフロックの思想を否定する事は無駄なのだろうが、それでももしかしたら分かってくれる時が来るかもしれないと、僅かながら諭した。しかし、己の思想に支配されたフロックには、案の定その言葉は届くことはない。
「…エレンは示した。戦えってな。…俺達はただ、壁の中で死を待つだけじゃない。俺達には、あの悪魔が必要だ。」
「!」
まただ。フロックはいつも、悪魔の存在を求めている。私達の間でその単語は禁句となっていたが、目の前の惨劇を目撃して、気が立っているのだろう。
「…悪魔…、悪魔、ね…。あなたは、エルヴィンの事もそう言っていたそうね…。」
「えぇ、言っていましたよ。俺達に必要なのはいつだって、悪魔だ!!」
「…エルヴィンは確かに、悪魔だった。人類を救うためだと言いながら、たくさんの調査兵を死なせた、悪魔。だからあえて言わせてもらうけど、エルヴィンとエレンを、一緒にしないで。エレンはどんな大義があって、人を殺すの?エルヴィンは人を死なせた事はあるけど、殺した事はないよ。」
「…ユニさん。」
「…お喋りが過ぎたね。ごめんね、ジャン。行こう。今は無駄話をしている暇も、無駄に人を殺す暇もない。やるべき事をやって、早く戻ろう。」
こうして仲間内で争っているというのに、敵と分かり合える日など、本当にやって来るのだろうか。
「!あれは…エレン!」
被害の大きい区画には、エレンの進撃の巨人。そして、リヴァイの姿。そこに辿り着くと同時にリヴァイが動き出し、小柄な顎の巨人目掛けて斬りかかった。なぜここに顎の巨人が…と頭を過ったが、いるものは仕方ない。この場合の武器は……超硬質ブレードか、雷槍か。考えながらも無意識に腕は超硬質ブレードを装填しており、地面に突っ伏す顎の巨人目掛けてその刃を振り下ろした。
「っ!ユニ!」
ガガガガガッ!
我々目掛けて撃ち込まれる弾丸を避けられたのは、直前にリヴァイが私の名を呼んだからだ。咄嗟にヒュ、と建物の影に体を潜り込ませ、事なきを得た。
「四足歩行の……車力の巨人…。」
顎も車力も、イェレナが拘束する手筈になっていたはずだ。やはり彼女は信用ならなかった。ハナから信用などしていないが、こうなるとさすがに、イラついてくる。
「っ…!…獣の、巨人…!」
ズシン、ズシン、と地面を揺らして遅れてやってきたのは、ジークの、獣の巨人。それを見た瞬間にカッと頭に血が昇る感覚を感じたが、リヴァイの「死ぬな。生き延びろ」という声に冷静さを取り戻した。加えて深呼吸をすれば、もう大丈夫。
「サシャ!車力の中をやるよ!」
エレンの話では、ジークは我々に協力をするという事だから、リヴァイ一人に任せて問題ないだろう。それなら私達は、それを阻止しにくるであろう車力と顎をやらなくてはならない。そもそもこの作戦にはいないはずの敵の相手をしなければならないなんて…と、イェレナを恨んだ。
武器を超硬質ブレードから背中に背負うライフル銃に持ち替え、射程距離ギリギリの射角の取れる物陰に身を潜める。ライフル銃の扱いは、この身に叩き込んである。イェレナのお墨付きというのが唯一気に入らないが…銃の扱いの才があるというのだから、これを使わない手はない。
兵士達が車力の周りを飛び回りその巨体を動かして──サシャとそれぞれ一発ずつ、中の人間目掛けて撃ち込んだ。
「…当たった!」
次々と、車力目掛けて雷槍が撃ち込まれる。ひとまず車力は、無力化したと言っていいだろう。視界の端でリヴァイが獣の巨人からジークを引き剥がしたのを確認したところで、最後の敵、顎のところに向かおうと立体機動装置を吹かした。
今は敵を無力化さえできれば良い。無駄に、殺さなくとも。
「ユニ、もう飛行艇が来てる。顎の方はアイツらだけで十分だ。一刻も早く、コイツを飛行艇に乗せるぞ。」
「…ジーク…イェーガー…。」
獣の巨人の、中身。空を見上げると確かに飛行艇が近づいているし、進撃の巨人が戦鎚の巨人を仕留めたところだ。もう、目的はほぼ果たされたと言っていい。
ドオォォン!
「!…鎧の巨人…!」
ここでライナーが出てくるか。鎧との戦いは消耗戦になるため、あまり戦いたくはない。その想いが通じたのかは分からないが、進撃の巨人と一発拳を交えたのち、そのまま動かなくなった。その隙にエレンも巨人の体を脱ぎ捨てミカサと撤退する素振りを見せたため、どうやら無駄な戦いはしなくて済みそうだ。
「…急ごう。」
エレンとジーク、どちらも取り返す事ができた。とりあえずの目的は、達成されたのだ。
我々調査兵団の目的は…だが。
「…こうして目の前にいるのに、殺せないなんて…。」
「我慢してくれ、…二人とも。」
「ねぇハンジさん、殺しちゃダメ?どうしても殺したいんだけど。」
「かわいく言ってもダメだよ!危ないな!いいよって言っちゃうところだったよ!」
「年甲斐もなくかわいこぶってみたのに…。」
エレンの兄だというからどんな好青年が来るかと思っていたのに、その見た目は兄というよりおじさんといった方がしっくりくる。なんなら、リヴァイよりも年上に見える。