845年~851年
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845年。その年のある壁外調査は、過去最高の死傷者を出してしまった。
それによりキース団長は、その団長の座を退いた。それはつまり、調査兵団のトップが変わる事を意味する。
キース団長の次に団長を務めるのは当初の予定通り、エルヴィン・スミス。それと同時に、私の隊の隊員であったリヴァイは新たに兵士長という肩書きを得た。
私はというと変わらず分隊長という地位を任されながらも、団長補佐という新たな役目を与えられた。
調査兵団は新生調査兵団となり、これからさらなる発展を遂げるだろう──そう思われた矢先、それを打ち砕くかのような事態に陥った。
空気が震えるほどの轟音と、今まで経験した事のない地響き。何らかの異常事態が起きている事は、明らかだった。
「いっ、た…!…なに、今の…。」
「オイ、無事か?」
それはいつものようにリヴァイとの立体機動訓練の最中の出来事だった。
轟音と地響きのおかげで手元が狂ってしまい、ワイヤーを巻き取っている最中にアンカーが抜けリヴァイの上に着地した。幸いお互いに咄嗟の判断でブレードを外し地面へと打ち捨てた事によりブレードの刃による怪我はなかったのは不幸中の幸い、と言うべきだろう。しかしその代わりにお互いのワイヤーが絡まってしまい、身動きが取れなくなってしまった。
「うわ…最悪だ…。今すぐにでもエルヴィン団長の無事を確認しに行きたいのに…。」
「アイツは今、団長室か?無事ならそこの窓から外の様子を見にくるだろうよ。…ほらな。」
「…!エルヴィン団長!ご無事ですか!?」
リヴァイの言葉通り、団長室の窓からエルヴィン団長が顔を覗かせた。遠くの方を一度見たあと、私の声が届いたのか今の地響きで建付けが悪くなったのか開きづらい窓をこじ開け、私達を見下ろした。
「2人とも、無事か?…幸い、怪我はないようだな。」
「はい。飛行中に衝突してしまいましたが、大きな怪我はありません。…あ、取れた。」
リヴァイの手からカシャン、とアンカーが落ち、絡まりが解けたのをちゃんと確認してから団長室の窓へ向かってアンカーを飛ばした。窓の外から見た団長室の中は、酷い有様だった。
「団員を今すぐ、街の様子の確認に向かわせますか?」
「…いや。音の発生源がどこか分からない以上、むやみに兵を動かすわけにはいかない。上からの指示があるまで、我々は待機だ。総員立体機動装置を身につけ、いつでも動けるように…と伝えておいてくれ。」
「承知しました。」
私も、ブレードやガスを補給しておこう。それと今の事故で立体機動装置に不具合が起こっていないか、確認もしなくては。
「総員、立体機動装置を装備し、調査兵団本部内で待機!分隊長以上は、直ちに隊員に周知を!そして先ほどの衝撃で怪我をした者がいれば、分隊長は私まで報告するように!」
後半は、私の判断。負傷者がいた場合、人員の不足した隊は組み直さなければならなくなるかもしれないからだ。案の定数名負傷者がいたらしく、そこの隊には最低限連携の取れそうな団員を補充した。
…つい壁外調査の時のように巨人との戦闘を前提として動いてしまったが、問題なかっただろうか?
「さすがだな、ユニ。素晴らしい判断だ。」
「エルヴィン団長!」
他にも何か報告等が上がってくるかもしれないと講堂にて待機をしていると、ポン、と肩を叩かれる感触。振り返るまでもなくエルヴィン団長だと笑顔を見せるとやはり彼で、敬礼のポーズを取る。
過剰に指示を出してしまったかもしれないと少しばかり不安だったため、彼の「素晴らしい判断だ」という言葉は何よりも私を喜ばせた。
「隊の再編成は既に完了しています。外からの連絡は、まだありません。」
「あぁ、助かるよ。」
「それで…、やはり私はリヴァイを連れ、様子を見てこようかと思っています。何か想像もつかぬような最悪の事態が起こっていて、連絡が遅れてしまっているのかもしれませんし…。」
その言葉通り、もしも私達が想像できないような事態が遠くの方で起こっているのだとしたら…調査兵団の力を必要としているのだとしたら…と思うと、いてもたってもいられない。
許可が下りるだろうかと顔を上げると、エルヴィン団長は思案するような表情を浮かべ、一度頷いた。
「そうだな…一先ず君とハンジで、馬で様子を見てきてくれ。信煙弾の使用を許可する。何もなければそのまま帰還。紫の信煙弾で、リヴァイと、君の隊、ハンジの隊を立体機動で向かわせる。黒の信煙弾で、調査兵団全兵を馬で向かわせる。どの信煙弾をどのタイミングで使うかは、君の判断に任せよう。」
「…、承知しました。すぐに向かいます。ハンジさん!」
「頼んだぞ。」
「はい!」
これは、かなりの大役。責任重大だ。
まさか調査兵団団長レベルの判断を任されるなんて…肩に力が入る。しかし外へ出て馬に跨ったところで「そんな緊張しなくて大丈夫だよ〜」というハンジさんを見たら少し緊張が解れたので、心の中で感謝した。
「これは…、一体何が…!?」
街を馬で駆け数十分。進むにつれ街の人々の様子がおかしい事に気がつき話を聞くと、「シガンシナ区の住人が次々と、トロスト区に入ってきているらしい」という事であった。市民たちも何があったのかは、分かっていないようだった。まさか…シガンシナ区で何かが起こっていて、避難してきている…?
「ハンジさん。私は一度、信煙弾を打つべきかの判断のため、壁を登り確認してきます。その間、私の馬を頼みます。」
壁を登ったその後、ちゃんとハンジさんと合流できる保証はない。だが、増援を呼ぶのなら判断は早ければ早い方が良い。
「オーケー。地上に戻ったら緑の信煙弾を上げて位置を知らせてくれ。近ければ向かうし、遠ければこちらも緑の信煙弾を上げるよ。」
「了解です。では、お願いします。」
約50mあるという壁にアンカーを突き刺し、ワイヤーを巻き取る。それを繰り返して、壁の上へ。そうしてやっと壁を登り切った時、私は絶望した。小型の望遠鏡で確認したが、なんと遥か遠く─外へと続く門に、穴が空いているではないか。そこから、無数の巨人が進軍してきている。
バシュゥゥ、バシュゥゥウ──
私は問答無用で、紫と黒の信煙弾を打ち上げた。だってこんなの、考えるまでもない。これは誰がどう見たって、異常事態。緊急事態。非常事態だ。
すぐにハンジさんと合流しなければならない。
打ち上げるのは壁から地上に戻った時と言っていたが、そんな暇はない。一度降りてハンジさんと合流しまた壁を登るなんて、そんな時間は勿体ない。戦える私は、早く前線へと赴くべきだろう。
バシュゥゥウ─と緑の信煙弾を打ち上げて間もなく、トロスト区側の地上から緑の信煙弾が打ち上がる。ここからは、少し距離がある。
もう一度緑の信煙弾を打ち上げたが、これで意図は伝わっただろうか。
自身の足で壁上を駆けながら、この後の作戦を考える。先ほどの信煙弾を見たリヴァイがすぐさま飛び出したとしても、ここへ辿り着くまでには時間がかかる。良くて20分、といったところだろうか。それまでに私達は、シガンシナ区の住人を守り、避難させなくてはならない。であれば──
トロスト区とシガンシナ区を繋ぐ、門へ向かわなくては…!
恐らくその門は今、避難してくる住民が多くトロスト区側からシガンシナ区側へは通れない。なら、シガンシナ区側を行くしかない。すぐさま壁の上から飛び降り、立体機動へ移る。
「!…そこの駐屯兵!私は調査兵団分隊長のユニ・クライン!状況は何となく分かっている!ピクシス司令は、今どちらに!」
「!!…調査、兵団…!ピクシス司令は、シガンシナ区とトロスト区を繋ぐ門にいらっしゃいます!」
「門か…。ありがとう!先ほどリヴァイ兵士長含む調査兵団全兵力を動かす信煙弾を上げた!到着までまだ時間は掛かるが、希望はある!それまで諦めるな!」
「は、はい!!」
目的地はこのまま、門のままで変わりないようだ。この辺りへの巨人の進軍はまだのようで、下の方に人々が押し寄せる群れが見える。みな門の方へ、一直線に移動している。
「今!調査兵団がこちらへ向かっている!慌てずに避難するように!ここへ来る巨人は!我々調査兵団が倒す!」
駐屯兵も住人も、諦めるな!
ただそれだけを伝えたくて、声を張り上げた。私が、リヴァイが、エルヴィン団長率いる調査兵団が、巨人から守ってみせるから…!と。