851年~
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「なんか兵長……最近若返ってません?」
マーレへの潜入捜査を前に、久しぶりに104期生達と揃って食事を摂り雑談をしているさなか、そう口にしたのはコニーだ。必然的に全員の視線はリヴァイへと集中して、その後なぜか私の方にその視線の束は移動してきた。みんな、リヴァイ=私だと勘違いしてやしないだろうか?
「それを言うならユニさんもですよ!二人を見てると時間の感覚がおかしくなります!」
「そんな事を言われても…。童顔だからそう見えるだけじゃない?」
だから私に文句を言われても、困る。本当に、それしか言いようがない。
「普通30代って、もっと肌が荒れたりとか皺ができてくるモンじゃないんスか?少なくともウチの母ちゃんが30代の時は、そうだった気が…。」
「何か特別な事でもしているのでは!?」
「特別…?まぁ、エルヴィン団長の隣に立つならちゃんとしないとと思って、少し良いものを毎日塗って…それを今も継続してるけど、それくらいかな。」
「じゃあ食べ物だ!!いい物を食べてるんですね、きっと!!」
「まさか。みんなと変わらないよ。」
「納得できない!!」
淡々と事実を述べているだけなのに、そんなに怒らなくても。サシャはいい意味で最近遠慮がなくなってきて、ハンジさんみたいで話していると楽しい。
「正直…ストレスを溜めないのが、一番大事だよ。綺麗で若くいるのも、健康で元気でいるのもね。」
「そうだな… ユニがそう言うのなら、そうなんだろうよ。お前らもお袋さんに、あまり心配かけるなよ。」
「うっ…!」
珍しく口を開いたリヴァイの言葉は、私に刺さった。母に心配や迷惑をかけている自覚は、ある。尤も、彼女がそれを気にしているかいないかは分からないが。
「なんでお前が一番ダメージ受けてんだ。」
「いや、心配…かけてるよなぁと思って。」
「だろうな。お前はもう少し、お袋さんに顔を見せてやるべきだ。」
「そうは言ってもさぁ…今さら話す事もないし、お母さんはリヴァイと話したがるし…。」
気まずいあの空気を思い出して、思わず苦い顔を浮かべる。そしてサシャも、なぜか私と一緒に申し訳なさそうな表情を浮かべおずおずと手を挙げ、言いづらそうに口を開いた。
「あのぉ…過去に何度も尋ねた質問ですけど…、ユニさんと兵長は、今どういったご関係で…?」
「…またそれか。飽きねぇな。」
「そりゃあ気になりますから!で、今はどうなんですか?」
「……。」
サシャの問いを聞き、リヴァイはじっと私を見つめた。私が答えるの?と首を傾げてはみたが、リヴァイはなにも面倒臭くて私に丸投げしたのではなく、もしかして彼も、私がなんと答えるのか知りたいのではないだろうか。
そういう事ならば、私はやはりリヴァイの事を、たいへんかわいらしく思う。
「今は…恋人同士で間違いないよ。それと、ルーカスのお父さんとして一緒に育ててくれるって。だからいずれは……そうなる未来もあるかもね。」
「!…そこまで言わなくても──」
「うおおおおぉ!!そうなるって!?結婚!?って事ですか!!?」
「さぁ…それはどうかな。」
リヴァイの言葉は、サシャの叫び声で掻き消された。しかし彼は特段それを気にする様子はなく、ただ静かに下を向き、僅かに口角を上げたのを見逃さなかった。うちのリヴァイは、本当にかわいい。
「う……船は大丈夫だったけど、あっちもこっちも気になって酔いそう…。」
私達はたった今、マーレの地へと足を踏み入れた。こんなに長時間船に乗る事だって初めてなのに、いざ島に上陸すると辺りは見た事もない物で溢れていて、視線があっちへ行ったりこっちへ行ったりと落ち着かない。104期生達は「なんだあれ!!」と興奮しながらも存分に楽しんでいるようで、本当の若さを見せつけられているようだった。
「あれ…みんな何買ってるの?」
「アイスクリームですよ、アイスクリーム!!ユニさんも一口どうぞ!」
「んぅ…!つ、冷た…!」
サシャに無理やり口に突っ込まれたのは、白くて冷たくて甘い、アイスクリームというもの。落ちかけていた気分が、少し良くなった気がする。
「私もひとつ、貰おうかな。」
「まいど!」
「ありがとうございます。ん、美味しい。リヴァイも食べて。」
ミルクのような味がして、また砂糖がふんだんに使われているのか、甘くて美味しい。冷たいからか、この甘さも気にならなかった。
「お前まで…。…ふむ、悪くはねぇか…?」
「ね。ルーカスにも食べさせてあげたいな。」
エルヴィンに食べさせたらきっと、その大きな瞳を丸くさせた事だろう。
「あまりはしゃぎすぎるなよ。逸れねぇように、しっかり掴まっとけ。」
そう言って差し出した腕に、素直に自身の腕を絡める。こうしてリヴァイに掴まっておけば、逸れる心配は皆無。掴まる場所としては、一番信用できる。
「そこのボク。甘ぁ〜〜いキャンディはいかがかな?」
「!」
「キミだよ。カッコイイね!チビッ子ギャングかな?」
「………。」
子供に話しかけるように、リヴァイにキャンディとやらを差し出す、怪しい男。いや、この男はおそらくただ純粋に、リヴァイを子供だと思いキャンディというお菓子を差し出している。私達の間には静かに、一触即発の空気が流れた。
「おじさん。それ、私が貰ってもいい?」
「あぁ、もちろんいいよ。お嬢ちゃん、お金は持ってる?」
「…!…うん。これで足りる?」
「あぁ、ぴったりだ。ありがとね。」
まさか私までお嬢ちゃん呼ばわりされるなんて思ってなかった。怪しい男と手を振って別れた途端に、すぐそばで成り行きを見守っていたハンジさんはここぞとばかりに吹き出した。私もリヴァイも、身長が低いせいだ、きっと。
「あっははは!君ら、子供に変装しても案外バレないんじゃないか?…いったぁ!!」
「殺すぞ。」
ハンジさんの肩に一発食らわせたリヴァイの目は、本気だった。きっと今の一発は、相当痛かったに違いない。でも私達を揶揄ったのだから、私も別に諌める気もなかった。
「…そろそろアイツらを止めねぇと…、…オイ。それはお前の財布じゃねぇぞ。」
「!」
「スリだ!」
「また敵国の移民か?」
「言葉が通じてないな。船に紛れ込んできたんだろ。」
リヴァイが一人の少年の腕を掴んで掲げると、周囲の人々が一斉に集まってきて断罪のようなものが始まった。相手はまだ子供なのに、海に放り投げるだとか右手をへし折るだとか、思想はかなり物騒だ。サシャが「やりすぎです!」と抗議の言葉を発したが、ユミルの民かもしれないと全員が全員、その子供を蔑むような目で見続けた。
これが、文化の違いだ。
下手に動けない今、どうこの場を諌めたら良いものかと様子を伺っていると、リヴァイが一歩踏み出し、少年を担ぎあげた。
「…誰がスリだと言った。俺は"お前の財布じゃねぇ"と言っただけだ。それはこのガキの姉の財布だってな。」
「…ふざけんな、そんなデタラメ!」
「行くぞ。」
「っわ…!」
大所帯で、見慣れぬ街を駆け抜けた。私達は一体、何をしているのだろう。まるで子供みたいだ。
走れるだけ走って、気がついた頃には街から遠ざかっていて、喧騒から少し離れた村のようなところまで来ていた。走りながらもリヴァイの腕を離さなかった自身を、褒めてやりたい。
「…あのガキ、どこ行った?」
「……あそこ。」
「あれ…リヴァイのじゃ…。」
離れたところの、岩の上。嬉しそうに少年が天に掲げていたのは、リヴァイの財布。助けてあげたというのに、ちゃっかりしている。しかしその少年の笑顔が純粋で涙まで流しているものだから、取り返すのも気が引けた。
「まさかあのリヴァイからスるなんてね。」
「まぁ…アズマビトから貰った小遣いだしな…。」
「ふふ…。…ねぇリヴァイ、…楽しいね。」
「……そりゃ良かったな。」
エルヴィンにも、見せたかった。ここであった事、全てを。そしてみんな一緒に、あの時は楽しかったねと思い出したかった。
…今となっては叶わぬ、ささやかな願いだった。