851年~
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「ハンジさん。私達、お付き合いを始めました。」
「えっ?…あー、そうなんだ。へぇ…。」
一応報告した方がいいだろうかと、ハンジさんが一人のタイミングを見計らってわざわざ報告したのにその反応は想像よりも薄いものだった。ついこの前は興味津々に聞いてきたくせに、一体なぜ。
しかしハンジさんにしてみれば、「あれで付き合ってない方がおかしいって言っただろ?遅いんだよ、君らは」と、そう主張した。そう言われましても。
「…おめでとうは、言ってくれないんですか?」
「!……君、自分のかわいさに気づいたな?」
「ふふふ…エルヴィンがよく美人だと褒めてくれていたので、もともと知ってます。」
「はぁ…、うん…おめでとう。リヴァイ、ユニを悲しませたりしたら、承知しないからな。」
「あぁ。誓ってそんな事はしねぇ。」
「はは…だろうね。」
なんだか、ハンジさんの声に覇気がない。それに、笑顔を無理やり作っているのがひと目でわかる。それも、私達だけじゃなく誰もが分かるレベルでだ。
「…そんな寂しがらなくて大丈夫です。私とリヴァイがどうこうなったからって、私がハンジさんを好きなのは変わりませんよ。」
「!…ユニ…!」
まさかと思ったが、そのまさかのまさか。そんな理由でシュンとしていたなんて。でもそれくらいハンジさんの中では私とリヴァイの存在が大きいものだという事で、団長になってしばらく経つというのに、ハンジさんは未だこういうかわいらしいところを残しているらしい。
「ユニさん、お久しぶりですね。」
「!イェレナ…本当、久しぶりね。」
たまたまイェレナ達のいる建物に行くと、タイミングよくイェレナが現れ、声をかけられる。最近はこっちの方に全く顔を出していないというのに、本当に目敏い。
「会いに来てくださらないので、もう忘れられてしまったのかと思いましたよ。」
「ふふ、そんなわけないじゃない。こう見えて私も忙しいのよ。それに最近はリヴァイが過保護すぎて、そもそもあまり出歩けてないの。」
「あ?当たり前だろうが。お前に怪我のひとつでもさせたら、あいつに合わせる顔がなくなっちまう。」
「あいつ…?あぁ、前に仰っていた、ユニさんの神様の事ですね?」
「は…?神…?」
「まぁ…そうね。…ごめんねイェレナ。この後も用事があって、もう行かなきゃならないの。」
私としては、イェレナの前でエルヴィンの話はしたくない。すればまた、あの空気感になるだろうから。できればそうなる前に、ここを立ち去りたい。
「…そうなんですか、残念です。」
「そうだ、ライフル銃。あれなら私にも扱えそうで、最近練習してるの。お勧めを教えてくれてありがとね。」
「そうでしたか。お役に立てたようで何よりです。では、また。」
一体イェレナは、私に何を感じ、何を求めているのだろう。私は何も、彼女に対してしていないし、これからもするつもりはないのだが。
「おい…なんだ、神様って。」
「…いや、神様は話の流れで、イェレナが勝手にそう言ってるだけで…。」
「ふ…、…っはは。」
「!」
「神様なんて大層な呼ばれ方をしてるのか、アイツは。似合わねぇな。」
あのリヴァイが、子供みたいに笑っている。付き合いの長い私も、初めて見るかもしれない、楽しそうな笑顔。それを見て思わずドキリとして、同時に嬉しく思った。
「ふふ、そんな事言わないでよ。私だって、たまにそう答えてたじゃない。」
「あぁ、そうだったか?だがお前のは、しっくりこねぇような言い方をしていた気がするが。」
「んー、そうだね。道を示してくれるって意味では確かに神様みたいだけど、それにしては身近すぎる存在だったというか…。最終的には地獄に導かれちゃったから、リヴァイの言う通り悪魔だったのかも。」
「…お前は…お前だけは、地獄に行かせねぇよ。地獄に堕ちたとしても、引っ張りあげてやる。」
「え、それはダメ。私はエルヴィンと同じ地獄に行くの。そう約束したんだから。だから…リヴァイもこっちに来て。エルヴィンの他にリヴァイもいてくれたら、私は地獄でも幸せだから。…さすがに欲張りかな?」
私はエルヴィンと共に地獄に行くと、何年も前に決めている。それはリヴァイと恋仲になった今でも、変わる事はない。でもできる事ならば、リヴァイとも一緒にいたい。リヴァイには悪いが、エルヴィンとリヴァイ両方と一緒にいるには、リヴァイにも堕ちてきて貰うしかないのだ。
「お前も大概、悪魔みてぇな奴だな。そういうところは似るんじゃねぇよ。」
「ふふ…擽ったいよ。」
ぐ、と正面から抱きしめられたと思ったら顔中に優しくキスをされ、擽ったくて仕方がない。わざわざ帰り道を逸れて建物の影でこういう事をするのだから、かわいらしい。
「ねぇ、リヴァイも来てくれる?」
「お前が行くというのなら、どこでもついて行く。決まってんだろ。」
そう答えて、最後には唇へのキス。リヴァイの言う事は、過去に私が言っていた事ばかりだ。だけど私はエルヴィンみたいに道を示したりはしていないのに、どうしてこんなにも信じてくれるのだろうか。彼に聞いてもきっと、明確な答えは分からないのだろう。こういうのは多分、そういうものだから。
「マーレへの視察…ですか?」
「あぁ、敵情視察ってやつだよ。それにマーレはここよりも文明が発展しているみたいだけど…耳で聞くよりも目で見た方が早いだろ?」
さすがハンジさん。考える事がぶっ飛んでいる。でもまぁ、向こうはこちらの顔をほぼ知らないのだし、知っているライナーやジークが都合よく私達を見つける確率など、たかが知れているだろう。自分で思いつく事は無理だが、ありっちゃありかもしれない。
「それって、私やリヴァイも行けるんですか?」
「もちろん。あぁでも、万が一を考えてルーカスはお留守番だけど。」
「そうですね…それは仕方ありません。いつ行くんですか?」
「ひと月後に予定してるよ。向こうの通貨は、アズマビトの方で用意してくれるって。」
「へぇ…。ずいぶんと友好的ですね。それもこれも、ミカサのお陰ですけど。」
ミカサは実は他の国のとても位の高い家の末裔でした、と言われ、戸惑っている事だろう。また、調査兵団からも王政からも、そしてヒィズル国からも変に期待され、肩身が狭い思いをしているに違いない。しかし背に腹は代えられず、私達も今はミカサを頼るしかないのだ。
「…嬉しそうだな、ユニ。」
「!…バレちゃった?…ふふ、楽しみだなぁ、と思って。」
「フ…、ガキか、お前は。」
ハンジさんの部屋を出るなり、リヴァイから鋭い指摘が入る。彼は私の表情の変化をよく見ている。私も人の表情を読むのは得意だが、別にリヴァイに限ったことではない。しかしリヴァイは私の浮かべる笑顔にも種類がある事を知っている。それが嬉しくもあり、胸の奥の方が少し、ムズムズする。
「だって、まだ私達の見た事がないものや知らない事がたくさんあるんだよ?」
「それで浮ついてんのがガキだって言ってるんだ。だが…そうだな。お前が楽しみにしてるってんなら、俺も楽しみになってきたような…。…いや、お前がいるからだな。」
彼は、この数年間で変わった。それも、多分いい方に。前は照れて言えなかった私を褒める言葉や好きという気持ちが込められた言葉が、最近はスルリと出てくるようになった。それがリヴァイの中での変化なのだろうが…素直すぎて、こっちが照れる。
「私も…リヴァイと行けると思ったから、楽しみなの。」
「!…お前…、その顔でそのセリフは、かわいすぎねぇか?」
ちょうど私の執務室に着いたところで、グイ、と腕を引かれてつんのめるようにドアを潜ったかと思うと、気がついたらドアを背に唇を塞がれていた。