851年~
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あのあとリヴァイは一切口を閉ざし、やがて「酔っ払いはさっさと帰れ」と半ば無理やりハンジさんを家から追い出した。そうして追い出したあとは「寝る」とだけ告げて自室に向かったのでその後どうしたのかは知らないが、翌朝顔を合わせると目の下にクマを携えていたので、おそらく寝てはいないのだろう。それでも彼は普段通りのパフォーマンスを出すので、慣れというものは怖いと思う。
「リヴァイ…昨日のは、気にしないで。」
「…あ?」
休憩中のリヴァイを引き止めると、寝不足気味という事もありずいぶん久しぶりに睨まれた。といっても睨むような目つきはそもそもリヴァイのデフォルトなので、むしろ最近の優しい目つきの方がレアなのだが、まぁとにかく久しぶりに睨まれた。
「その、結婚がどうのこうの…とかさ。アレは私の価値観が昔とは違うよってだけの話で、現状リヴァイとの結婚を考えてるとかそういうんじゃないから。」
「は?」
「リヴァイ、眠れてないみたいだから心配で…。」
「…大丈夫だ、体調面は心配ない。…ただ、そうだな…。少し、話せるか?」
「もちろん、いいよ。」
ルーカスはちょうど、ヒストリアがつけてくれたベビーシッターが見てくれている。彼女が帰るまではまだ時間があるし、ゆっくり話ができるだろう。
場所を変えるためあてもなく歩き出し、港にある防波堤までやってきてからようやく、リヴァイは口を開いた。
「お前は…なぜ、結婚してもいいなんて考えに至ったんだ。」
考えが変わったというのは、昨日すでに話した。お酒を飲んではいたが、ザルのリヴァイが覚えてないなんて事はないだろう。つまりリヴァイは、私の心境の変化の、その過程や詳細を知りたいのだろう。そう思い至り、防波堤に腰を下ろした。
「…簡単に言うと、ルーカスがいて、リヴァイがいて…一時的かもしれないけど、今は平和なわけじゃない?そんな日常を過ごしていたらふと、家族っていいな、って、思ったからかな。」
「…それは……、お前は俺と、家族になってもいいと、そう思っているように聞こえるが…。」
「そう捉えてもらって構わないよ。ただ…、結婚って本来は、恋人という過程を経てするものでしょう?リヴァイとそういう…いわゆる恋人同士がするような事ができるかは、今は分からないけど…。」
「…そうか。」
「でも…今はリヴァイと近い距離で触れ合うようになって…それは、嫌じゃないよ。むしろ安心するし、癒されてる。」
「…俺もだ。」
リヴァイもそう思ってくれていて、良かった。安心したところでリヴァイが未だ立ったままな事に気づいて、隣に座るように促して、その肩に寄りかかった。
「好きって、どういう気持ちなんだろう…。いま私がリヴァイに感じている、近くにいると安心するだとか嬉しいって気持ちは、違うのかな?」
「は…?お前は、エルヴィンの事が好きだったんじゃねぇのか?」
「う…。それはもちろん、そうなんだけど…。私のエルヴィンに対する気持ちは、崇拝とか、敬愛とか、そういうのも含まれてたから、純粋な好きだけじゃなかったというか…。だから、好きってどういう気持ちかと言われたら、分からない…。…ねぇ、どういう感情なの…?」
「…俺も似たようなものだが…。…相手に笑顔を向けられたら嬉しいとか、相手が喜ぶ事をしてやりてぇと思うとか…、そういうんじゃねぇのか?…おい、なんだその顔は。」
失礼かもしれないが、驚いた。私から聞いておいてなんだが、リヴァイは「キスしたいと思ったら」とか、「その先をしたいと思ったら」とか、そういう風に答えるのだと思っていた。それが予想と大きく違っていて、また純粋な答えだったから、驚いたのだ。
「ふ…、…そうだね。それなら…私はリヴァイの事、好きだよ。」
「!お前…。」
「あとね、もう1個思いついたの。相手が自分だけにしか向けない笑顔を見せてくれた時に嬉しいと思ったら…きっと好きだよね?」
好きじゃないなら、相手からのあからさまな好意を示されたら困ってしまうはずだ。実際、以前の私自身はそうだった。それが今は嬉しいと思っているという事は私の気持ちが変わったからで、それはきっと、好きというものなのではないだろうか?
「…なぁ、ユニ。抱きしめて…、キスしてもいいか?」
リヴァイの口から、およそ数年ぶりに出た「キスしてもいいか?」には、前までとは違う、重みがある。その言葉の重さ分、私も慎重に考えて答えなくてはならない。
今リヴァイが言ったキスは、今さら頬などではなく、唇に、という意味だろう。私は未だ唇へのキスは、エルヴィンからしか貰った事がない。それはリヴァイも承知のはずで、その上で発言をしているのだろう。彼の事だから、余程の想いで口にしたはずだ。
「…うん…、…いいよ。」
「っ…、…ユニ…!」
私の片割れといっても過言ではないリヴァイが、私を好きだと言って私を求めてくれているのなら、その想いに応えたい。それにリヴァイには申し訳ないが、私自身がリヴァイとキスをしてどういう気持ちになるのか、知りたかった。
ぎゅう、と強く抱きしめられて、リヴァイの薄い唇が、自身の唇に触れた。リヴァイは体温が低そうに見えるのに、触れた唇は意外と温かくて、意外とちゃんと柔らかかった。
「ん、…リヴァイ…。」
エルヴィンとするのとは違う幸福感とドキドキが、胸の中に広がった。エルヴィンとキスした時は情熱的で、もっともっとと求めるような気持ちでいっぱいだった。でもリヴァイとのキスはじんわりと満たされるような、そんなキス。唇が触れているだけでなんだか切なくて、胸がきゅ、と小さくなるような感覚がする。
「…ユニ…、…は…。夢じゃ、ねぇだろうな…?」
「ふふ…夢なんかじゃ、ないよ…リヴァイ。」
背中に腕を回して、私からもぎゅっと抱きしめる。エルヴィンと比べると、ずいぶんと目線が近い。だけどこれも、距離が近くていいかもしれない。