851年~
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ヒィズル国のキヨミ・アズマビト様、そしてそのキヨミ様と一緒に来られた方々は、私達とは全然違う顔立ちであった。みな背もそこまで高くはないし、髪の色ももれなく全員黒色で、それもリヴァイのような黒髪ではなく、艶とハリのある髪。何となく、その黒髪が素敵だと思った。
「こちらは私の補佐のユニ・クラインと、その部下のリヴァイ・アッカーマンです。」
「初めまして。ユニ・クラインと申します。このような状態でのご挨拶になってしまって、すみません。」
「いえ。宜しいのですよ。」
私とキヨミ様が話す事は、これ以上はない。ルーカスを抱いたままではあったが深々とお辞儀をすると、隣でリヴァイも私に倣い頭を下げた。リヴァイも随分と大人になったものだ。
挨拶だけすればいいと事前に聞いていたので後ろへ下がると不意に視線を感じて、その視線を辿るとイェレナと目が合った。しばらくリヴァイが私達を合わせないようにと画策していたせいか随分と久しぶりだが、その顔を見た途端に嫌悪感を思い出した。やはり、嫌なものは嫌なようだ。
一応目を細めて笑顔を浮かべはしたがすぐにリヴァイが壁になってくれ、私を案ずるように顔を覗き込んでくるので"大丈夫だよ"という思いを込めて微笑み直した。それをハンジさんが呆れた顔で見ていたのは、気付かないふりをしておいた。
キヨミ様が話した内容は重すぎる話ばかりで、聞いているだけで胸焼けを起こしてしまいそうだった。
まず、ジークは王家の生き残りで、王家の血が流れている事。そして、マーレにはそれを隠しているのだと。つまりは、ジークは完璧にマーレを裏切っているのだと確定されたのだ。
そして、キヨミ様の目的であるヒィズル国の将軍家の末裔であるミカサに接触する事を条件に、地鳴らしを発動しこの島を守っている間に、パラディ島の軍事力を可能な限り高めるという計画に賛同をしたのだという。それには聞くに絶えない事柄も含まれており、失礼かもしれなかったがルーカスを連れて部屋を出てきてしまった。
やはり戦いは避けられないのだろうか?それに…王家の血を引く者に獣の巨人を継承するだなんて……それでは、今までと同じ事の繰り返しになってしまう。
「ユニ。」
「リヴァイ。あなたまで出てこなくても良かったのに。」
「いや、一旦休憩のようだ。話が話だからな。…貸せ。」
私の腕からルーカスを奪い取って、リヴァイがそのまま流れるように抱っこする。もうリヴァイも、すっかり慣れたものだ。
「なんか…ややこしいね。ただ巨人を倒して回ってた頃が懐かしいよ…。」
「そうだな。」
「私達はジークの首さえ取れれば、それでいいのに…。」
窓枠に肘をついて、外を眺める。見えるのは港と、水平線だけだ。
「本当に、ジークの首だけ取って逃げちゃいたい。」
「…お前が、本当にそれを望むのなら…。」
「……ふふ…まさか。リヴァイだって、それじゃ絶対にのちのち後悔するでしょ?」
「…そうだな。」
エルヴィンを含む、死んでいった仲間のためにも、そんな事はできない。それができれば、どんなに楽だろうか。
「!」
不意にリヴァイが顔を覗き込んできたかと思うと頬にキスをされて、驚いて彼を見るとなんだか切なげに眉を下げていて同じように頬へキスを返した。今のは、やりたくてもできないという気持ちが同じかどうか確認したかったのだと思う。私はそう解釈した。
「ぱぱ、ぱっ!」
「!!」
べちっ!
「!リヴァイ、大丈夫!?いや、それよりも今…!」
「………。」
ルーカスの小さい手が、思いきりリヴァイの顔を叩いた。たまたま動いた手がぶつかったとかではなく、真正面から叩かれていたのを見た。それに、いま確かに──ルーカスはリヴァイの事を、「ぱぱ」と呼んだ。…と思う。
呼ばれた張本人であるリヴァイは目を見開いてしばしの間固まって、ようやく動き出したかと思うと私の肩をガッ、と力強く引き寄せて、ルーカスと私をいっぺんに抱きしめた。未だ掴まれたままの肩は痛かったが、息を詰まらせて涙を流すリヴァイに離してくれなんて言えるはずもなく、静かに受け入れた。
本当に、全てほっぽって逃げてしまいたいと思った。
「君らさぁ…ぶっちゃけどういう関係なの?」
私達の仮住まいである家に突然やってきて「今日は難しい話は抜き!飲もう!」と酒を携えてやってきたハンジさんは、ルーカスを寝かしつけるなり先に酒を飲み始め、30分足らずで顔を赤くさせてそう質問をしてきた。完全に酔っ払いである。私はまだ数口しか飲んでいないのでまだ頭は働いているが、ここが今暮らしている家という事もあり完全に寛ぎモードで、涼しい顔してお酒を飲んでいるリヴァイに凭れかかっていた。
「どういう関係って?」
「君らのそれだよ!近すぎるだろ!まさか私に内緒で、とっくに恋人同士とか…!?」
「…いや?」
「じゃあおかしいだろ!たまにほっぺにチューしたりしてるしさぁ!」
「お互いがそれでよくてやってるんだから、いいじゃないですか。これが私とリヴァイとルーカスの、幸せの形なんです。」
エルヴィンがいたら、こうはならなかっただろう。だけど実際に彼はいないから、こうなった。それだけの事だ。
「そもそも、俺らの事はお前には関係ねぇだろうが。」
「うっ…!悲しい事言わないでくれよ!」
「まぁまぁ。関係ないは言い過ぎだけど、確かにその通りではあるかも。」
「ユニまで!ひどい!」
「あはは!でもねハンジさん。私とリヴァイはね、二人でいなきゃ生きていけないの。それが恋人か夫婦か友達かは関係なくて、こうなったからには死ぬまで一緒なの。」
他でもないハンジさんには、話してもいいと思った。質問の答えにはなっていないかもしれないが、それはお酒のせいにしておこう。
「ユニ…。…クソ…、キスしてぇ…。」
「…リヴァイ、君は元からそんなにバカみたいな事言ってたっけ?…痛っ!!」
「ふふ…、あはは!」
なんだか、懐かしい。私達の関係は変わってしまったかもしれないが、ハンジさんだけはずっと変わらずにいてほしい。勝手かもしれないが、それだけで私は、安心できる。
「私はちゃんと、ハンジさんも好きですよ。」
「は…、…やっぱり君は、いくつになってもかわいいなぁ…。やっぱり、私と結婚してくれ、ユニ!」
「ふふ、やです。」
「ざまぁねぇな、ハンジ。」
「くっ…!…でもリヴァイ。あのエルヴィンでさえユニとは結婚できなかったんだ。いくら君といえど、結婚はできないんじゃないのか?ねぇ、ユニ?」
結婚…。エルヴィンと、もしかしたらしていたかもしれない、結婚。夫婦になる、書類上の儀式。
「……さぁ…。未来は誰にも分かりませんからね。」
「!?」
「えっ…!!?ちょっと待ってよユニ!!私の事は速攻振ったのに、リヴァイはアリって事!!?」
「アリとかナシとかじゃなく、ハンジさんとは無理って事です。察してください。」
「こんな時に毒を吐かないでくれよ!エルヴィンとは"結婚しない"って言ってたのに、どうしたのさ!」
「どうしたもこうしたも、状況が変わって心変わりするのは当然じゃないですか。…あの時は、とてもじゃないけど結婚なんて考えられなかった。でも今は……もしもエルヴィンがいたら、彼と結婚していたかもしれませんね。でもエルヴィンだからとかリヴァイだからとかじゃなく、自分自身がもう結婚してもいいかなと…心変わりしたってだけです。」
今だっていつ敵が攻めてくるかも分からない状況ではあるのだが、こうして平和な日々を過ごしてきて、私の中では結婚を意識し始めていた。別に結婚したい!というわけではない。結婚なんて書類上の関係というのは変わらず思っているが、だからといって絶対にしたくないというわけでもない。してもしなくてもいい、というのが本心だ。
そしてもしもするのならリヴァイなのだろうと薄々思ってはいるが…彼にその気があるのかも分からないし、結婚すれば色々と関係値も変わるだろうし、今すぐではないだろうな…と思っている。
これを聞いた彼がどのような考えに至るのかは、分からないが。