851年~
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ドンッ、ドンッ、ドンッ、
「さすがですね、ユニさん。」
「ありがと。連射できるのはすごいけど…私はあまり、長時間は扱えないかも。」
イェレナは、私達に武器の類いを全て渡してくれた。あまりにすんなり渡してくれるので全員戸惑ったが、渡してくれるならと、恐らく訓練兵時代ぶりに銃を手に取ってみた。とはいってもパラディ島の武器とは全く勝手が違うので、まさに訓練兵の時のように使い方を教えてもらい、数分練習してようやく狙ったところの脇に着弾した、というところだ。訓練兵時代ならもう少し的に近づけたはずだが、もう10年も使っていないので悪くはない結果だろう。
指先が僅かに痺れ始めてきたところで、ようやく銃を置いた。
「確かにユニさんは、ライフル銃の方が向いていそうですね。」
「ライフル銃…?」
「両手で扱う銃の事です。照準がブレにくいのでよく狙えば当たりやすく、無駄撃ちをせずに済みます。実物をお見せできなくて、残念です。」
「機会があったら、使わせてくれる?」
「えぇ、もちろんですよ。港が完成すれば、色々な物が手に入るでしょう。」
「…パラディ島の文明が、一気に発展するのね。…すごいなぁ…。」
もしもエルヴィンがいれば、きっととても喜んだだろう。もしかしたらまた新しい夢ができて、私もその夢を一緒に追いかけたかもしれない。
──なんて、無意識に考えたもしもの空想を、頭の中から無理やり追い払った。
「……ユニさんはいつも、花が咲いたように笑ったり、時には子供のように笑ったり、少女のような人ですが…、視野が広かったり慈悲深かったり、大人の余裕を感じられるというか…そんな雰囲気も持っていますよね。」
銃を撃つための装備を外しながら、イェレナは何の気なしに雑談を始めた。雑談…なのだろうか?彼女の事だから、発言ひとつひとつに意味があるような気がしてならない。
「…そうかな?」
「えぇ。こう言ってはなんですが、たまに知的な一面も見え隠れするというか…。…もしかして、ユニさんにとっての"神様"は、そういう人でしたか?」
顔には出さなかったが、内心、その発言にイラッとした。彼女がエルヴィンの事を"神様"と呼んだのが引っかかったからだ。何となく、エルヴィンと私の関係を馬鹿にされたような、そんな風に感じたのだ。
「…私と彼の事は、放っておいてほしいな。あなたはあなたにとっての"神様"の事を考えてた方がいいよ。その方が、お互い幸せでしょ?」
「……そうですね。大変失礼しました。」
「ユニ、どうかしたか。」
ピリ、どころかビリ、と空気が震えた途端、すかさずリヴァイが私の肩に手を置いた。まさか殺気のようなものでも出ていただろうかと思ったが、リヴァイの私を心配するような表情を見て急激に頭が冷えた。やっぱり、イェレナといるとすぐにピリついてしまっていけない。だが私の意志とは関係なく、彼女の方から寄ってくるのだ。私の性格上、これはもう避けようがない。
「…何でもないよ。そうだ。ヒストリアからエビのお礼にって、高級茶葉を貰ったの。一緒に飲もうよ。」
「あぁ、いいな。せっかくならお前が淹れたのが飲みてぇ。」
「ユニさんは、本当に紅茶がお好きなんですね。マーレ産の紅茶が手に入ったら、すぐにお知らせします。」
「いや、紅茶が好きなのは俺だ。俺に知らせろ。」
「…へぇ、意外です。承知いたしました。」
「行くぞ、ユニ」と背中を押す力が、いつもよりも強い気がする。もしかしたら私をイェレナから、早く引き離したいのかもしれない。
「そんなに早く、紅茶が飲みたいの?」
「馬鹿言え。紅茶も大事だが、お前がストレスで暴れねぇか、心配してるんだ。」
やっぱり、当たりだった。相変わらず、素直じゃないけど。
852年。年号が変わって少し経った頃、ようやく港が完成した。その頃にはイェレナ達の協力もあり、パラディ島は飛躍的に文明が発展していたが、これでさらに発展するというのだから驚きだ。もう食糧難の心配をする必要はなくなったと言ってもいい。世界がこちらに敵意を向けているという事以外は、今のところ順調である。
「君達さぁ…今から海外からの要人を迎え入れるんだから、イチャイチャしないでくれないか?」
「?イチャイチャ…?」
港が完成するまでの間、同時進行で近くに何軒もの家が建てられた。そのうち一軒は私とリヴァイとルーカスが暮らすためにとありがたく借りているのだが、そのすぐ側には新しく調査兵団壁外支部も建てられ、これからそこに初めて、パラディ島の外からの要人──ヒィズル国のキヨミ・アズマビトを招き入れる予定だ。港に船が着くまでの間、最近掴まり立ちを習得したばかりのルーカスを連れてきてリヴァイと歩く練習をしていただけだというのに、イチャイチャしているなんて聞き捨てならない。
「近すぎるんだよ君らは…!その距離で幸せそうに微笑みあってるんだから、イチャイチャしてるように見えるのも不思議じゃないだろ!?」
「…幸せな事は、いい事じゃないですか。」
「確かにそれはそうだけど!女王様の前でよくそうしていられるね!?緊張感とかさぁ!」
「ハンジさんには言われたくないです。」
「ほっほっ。まぁ、今はまだ良かろう。いつこの幸せが壊れるか、分かったもんじゃないからの。」
私達の間に割って入ったのは、ピクシス司令。ずいぶん久しぶりに会った気がする。実際は王政会議の度に顔を合わせてはいたが、雑談をするような雰囲気ではなかったため久しぶりに感じた。
「どれ、ワシにも抱かせてくれ。…おぉ、この大きな瞳はユニに……いや、エルヴィンにそっくりじゃな。」
「ふふ、そうでしょう?」
むしろルーカスには、私に似ているところなんてないんじゃないだろうかと思っているが、リヴァイは「笑った時の目尻の感じが似てる」だとか「横顔が似てる」だとか、私とルーカスの似ているところを探したがる。私としては、エルヴィンに似ている方が嬉しいのだが。
「まっ、…まま。」
「!ちょっと皆さん聞きました!?今ママって!!」
「…それ、昨日も言ってたろ?」
「何回言っても良いじゃないですか!!はぁ…、かわいい…っ!ねぇ、リヴァイも聞いたよね?」
「あぁ…確かに聞いたぞ…。」
「我が子の成長が、こんなに嬉しいなんて…!!」
当たり前の事だが、こんな感情は生まれて初めて抱いた。エルヴィン以外に唯一、無条件で愛を与えたくなるような、そんな存在。そんな尊い存在を残してくれたエルヴィンには、感謝しかない。
「まぁ君が幸せなら、なんだっていいんだけどさ…。」
「あ…、ハンジさん。あの影はもしや、船では?」
気づけば完成した港のさらに奥の海の上に、黒いシルエットが見えていた。あの位置なら相当遠くの方だが、あの位置であの大きさならかなりの大きさなのではないだろうか?
「なんだって?あぁ本当だ。下に降りて出迎えよう。ユニもリヴァイも、本当にここに残るのかい?」
「?はい。」
「出迎えたあとはどうせここに戻ってくるんだろ?ユニとイェレナを極力接触させたくねぇんだ。それでも引き下がるってんなら、帰ってやってもいいが?」
「いいや大丈夫だ!ここで待っててくれ!」
全く…団長になってからしばらく経つというのに、彼女のこういうところは、いつまで経っても変わらない。だから、好きなのだが。