~844年
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「あなたがリヴァイくんね。よろしく。」
仕方なく調査兵団へ入団した直後に俺達3人の元へやってきたソイツは、それはそれは純粋な笑顔でそう口にした。
舌打ちはどうにか飲み込んだが、思わず眉間には皺が寄った。調査兵団に歓迎されてねぇ事くらい、分かっている。だというのに友達に声をかけるみてぇに気安く話しかけてきたコイツは、おそらく馬鹿なのだろう。特に何も話す事なく視線を逸らしたのは、むしろ無駄な争いを起こす事にならなかったのだから感謝してほしいくらいだ。
「ユニ。お前はその女の案内を頼む。」
「はぁい。じゃあ行こうか、イザベル。」
「えーっ、俺もここがいい!」
「ふふ、ダメ。ほら、行くよ。部屋の案内が終わったら、訓練ね。」
「マジ?立体機動装置?使っていいのか!?」
「うん。だから早く行こうね。」
簡単な口車に乗せられた馬鹿はまんまと女子棟へと連れられて行き、残された俺とファーランは男子棟へと通された。それがまぁ酷いのなんのって……思わず、ハンカチで口元を抑えるくれぇには酷い有様だった。
新入りが入ってくるのが分かってんなら、掃除ぐらいしろ、クソが。
「さっきぶりだね。エルヴィン分隊長から聞いた話では、あなた相当立体機動装置の扱いが上手いんだって?私も兵団内では上手い方だから、立体機動装置の訓練には私がつくね。」
また、あの女。何が楽しいのか相も変わらずヘラヘラしていていちいち癪に障る。しかし、トラブルは起こせない。作戦を遂行するためには、これぐらいの事で怒るわけにはいかない。
「トリガーを押すとアンカーが飛び出すのはもう知ってるね?実はこのトリガー、人によって硬さが変えられるの。今使ってるのはどう?不自由ない?」
「…慣れた。」
「そう。巻き取るスピードも大丈夫?」
「問題ない。」
「分かった。リヴァイくんのは、1回もメンテナンスしてないでしょ?終わったらメンテナンスの仕方を教えるから、一緒にやろうね。じゃあ早速訓練を始めるから、後ろから着いてきて。」
そう言って、女は立体機動装置のアンカーを森の中へと向けた。指示通り着いていくと、女は自身で「私も兵団内では上手い方だから」と言った言葉通りに、華麗に木々の間をすり抜けていく。確かに、地下で調査兵団に追いかけられた時にいた兵士達に比べたらとても器用に装置を扱っている。まるで、自分の手足のように。
(鳥……いや、蝶…みてぇだな…。)
柄にもなくそんな事を考えた。本当、柄じゃねぇ。だがそう例えるほかなかったのだ。ヒラヒラと飛び回る、この女を見てしまっては。
バシュッ!
「あ、ちょっと浅かったな。」
訓練用の人形の項辺りを切り落とした女は、トン、と近くの木へと着地し、自身も考え事を頭の隅へ追いやり隣へ着地した。人形を見ると数十cm程の切れ込みが入っていたが、この女の言葉を聞く限り、あれでは浅いらしい。
「巨人の弱点は、項なの。縦1m、横10cm。そこを切り落とさない限り、奴らは何度でも再生する。逆にそこを切り落とせば、奴らは動かなくなり、やがて蒸発する。その際はかなり高温の蒸気を発するから、火傷しないようにね。」
「…承知した。」
「…って言っても、私のアレは切り落とせてないかもね。あはは!」
「…オイ…。」
「ん?あ、ごめん。名前教えてなかったね。私、ユニ・クラインっていうの。で、何?」
「……なんでもねぇ。」
一体何がそんなにおかしくて笑ってるんだ?と聞こうと思ったが、なんだか無駄な気がしてやめた。しかしなんとなくだが、コイツには今後も世話になる気がするから名前だけは覚えておいてやる。
──数ヶ月後
調査兵団へ入団してから数ヶ月。その間例の書類を探し続けたが、手がかりひとつ掴めぬまま、今に至る。あと数時間もすれば、壁の外へと壁外調査に出向かなきゃならねぇ。
元々の予定では例のブツを奪い今頃はどこかに身を潜めている予定だったっていうのに……完全に誤算だ。
「…!リヴァイくん…こんな時間にどうしたの?明日は壁外調査なのに…眠れないの?」
「ユニか…。別に、そんなんじゃねぇよ。」
実際眠れないのは確かだったが、即座に口から出たのは否定の言葉。しかし怖くて眠れないと思われるのだけは死んでもごめんだ。俺はただ、今後どうするかの考え事をだな。
「良かったら、紅茶飲む?カフェインレスの。確かまだあったはずなんだけど…。」
「…あぁ。戴こう。」
例のブツ、そして金髪野郎といえば、この女─ユニに関してこの数ヶ月で分かった事がある。
それは、コイツはあの金髪野郎の事を心から尊敬─いや、それどころか敬愛しているという事。今はフラゴンとかいう奴の班に所属しているが、元々は金髪野郎の班にいたのだという。ただの班員というには些か距離が近すぎる…と他の団員が話しているのを聞き気にして見てみると、確かによくこの女はアイツの部屋を出入りしているし部屋の外でも金髪野郎にベッタリと纏わりついていた。そしてアイツもアイツでそれを受け入れているように見え…なんというかまぁ、気色悪かった。…つまりは、恋人同士なのではないかと結論づけた。今だってコイツが歩いてきた方向には、あの金髪野郎の部屋があるのだから。
「お前は…、あの金髪野郎のコレか?」
単刀直入に聞けば、コイツはすぐに話すと思った。嬉しそうなあの笑顔で「うん、そうだよ」とすぐに認めるだろうと。
しかし予想とは裏腹に目の前のユニは紅茶を淹れる手を止め、気まずそうに視線を落とした。
「そんなんじゃないよ。私がエルヴィン分隊長の恋人なんて…恐れ多い。」
そう言いながら襟を正すその仕草は、奴らのそういう行為を連想させ自然と視線を逸らした。よく見れば少し乱れた髪に服。それだけで嫌でも察してしまった。恋人同士ではないのに、そういう事はするのだと。
「…そうか。悪かったな。」
これでは、例のブツについて聞き出す事もできない。コイツから情報を抜く事はさっさと諦めて、明日に備えて寝てしまうのが良い。
カフェインレスだという紅茶をいつもの倍のスピードで飲み干し「美味かった。また今度頼む」と来るかも分からない今度を約束し、逃げるように自身の部屋へと歩を向けた。気分は悪ィが、少しでも眠った方がいい。
明日からの壁外調査は必ず生き残って…一刻も早く調査兵団を出て行かなくては。
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