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前回の話ののち、共にした風呂から上がり、それぞれバスローブを纏った二人
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ガレキの塔・ケフカの寝所にて
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豪奢なソファの上、セフィロスは何時もそうして来たようにケフカの膝枕に甘え、
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其の白銀に艶めく濡れ髪を、相手の白魚のような指先に、優しく梳き撫でられている
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セフィロス
……………
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セフィロス
……此の…香り…
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ケフカ
…なぁに?
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セフィロス
さっきの風呂に、お前が加えた精油だな……
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ケフカ
ああ、マジョラム…
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セフィロス
…そんな名だったか…
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ケフカ
…ええ…如何です?
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セフィロス
何だか…心が和らぐような…
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ケフカ
其れは何より…あのオイルを用いた甲斐も、有ったと言うもの
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セフィロス
残り香が、お前から匂って来る所為かも…な
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ケフカ
いやん、エッチ!
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ケフカ
…なんつって
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セフィロス
…ケフカ……
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相手の細腰に腕を回し、膝枕へ頬を擦り付け始めるセフィロス
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セフィロス
…俺の…愛しい、ケフカ……
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ケフカ
おやおや?ハイパー甘えん坊タイムに突入?
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セフィロス
…………………
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遂にはケフカのローブの裾をはだけさせ、露わにされた白く柔らかな内腿に、朱く吸い跡を付け始めるセフィロス
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ケフカ
……(マジョラムには心の調整効果と引き換えに、制淫作用も有る筈なんだけど…(汗)
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セフィロス
…ケフカ……
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ゆるりと身を起こしたセフィロスに、熱を帯びて濡れた瞳を向けられて、
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ケフカ
……(此れは…憂苦に基づく、余り宜しくない盛り上がり方…)
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ケフカ
あの…ね、お風呂上がりにお飲み物なんて…欲しく有りません?
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セフィロス
…そう言えば…少し渇きも、覚えるか……
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ケフカ
冷たいお紅茶でも、如何かしらん?
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セフィロス
ああ、貰おうか…
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セフィロス
……お前の入れる茶も…此の周回では、きっと最後になるだろうからな…
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ケフカ
…………
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ケフカに柔らかく微笑まれ、「大丈夫ですよ」と頬に口づけをされても、
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キッチンへ向かう其のほっそりとした後ろ姿を、セフィロスは思わず縋るような目で追ってしまう
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ケフカ
お待たせ。あちらの世界で旬摘みの、アールグレイです
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ケフカの運んで来た銀盆には、紅茶の入った耐熱ガラスポットに、氷の詰まったアイスピッチャー、千切ったミントの葉を入れた小器と、マドラーに、グラスが二つ
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其れをローテーブルに置くと、ケフカは再び、セフィロスの隣に腰掛ける
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セフィロス
…お前の入れる茶は、何時も見るからに美味そうだ
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ケフカ
此度は其れに加えて、ちょっと大人な飲み方、致しません?
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セフィロス
ほう、どんな趣向なんだ?
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ケフカ
お酒なんて、入れてみたりして…ね
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そうウインクしながら取り出したのは、澄んだ緑色の酒瓶
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セフィロス
紅茶に酒?…合うのか?
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ケフカ
あら、試された事無い?
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セフィロス
俺はそう言った嗜みには、余り触れて来ていない…
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ケフカ
ふふ…あのライフストリームからも、得られなかった?
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セフィロス
ああ。人生を豊かにする知識は、殆どがお前からだ
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ケフカ
…では、貴方に新たな知識をもう一つ
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ケフカ
此のお酒は、『ドライヴェルモット』…白にニガヨモギ、香草、スパイス、ブランデーを加えたフレーバードワインで…
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ケフカ
アイスティーに加えると、とっても美味しくなるのですよ
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セフィロス
苦よもぎ…
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ケフカ
…何か?
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セフィロス
『そして其れは、川の三分の一とその水源との上に落ちた。この星の名は"苦よもぎ"と言い…
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セフィロス
…水の三分の一が"苦よもぎ"のように苦くなった。水が苦くなったので、その為に多くの人が死んだ』……
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ケフカ
フフ…ヨハネの黙示録、ですか
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セフィロス
ああ
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ケフカ
貴方のご親友と言い…ソルジャー1stには、古典を好まれる傾向がお有り?
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セフィロス
いや、甚だしいのはアイツだけで…
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セフィロス
俺はⅦの世界観から聖書を学んでおいた方が良かろうと、少々齧っていただけだ
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セフィロス
…だが、この一節のお陰でどうも、ニガヨモギとやらの印象は、悪い…
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ケフカ
ププッ……!
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ケフカ
ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!
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突如吹き出したかと思うと、腹を抱えて爆笑するケフカ
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セフィロス
何だ?
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ケフカ
だって貴方、ラスボスもラスボス、泣く子も黙るセフィロスなのにー!
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ケフカ
ぼく達、そんなのにゼンゼン負けない位のカタストロフィ、とっくに引き起こしちゃってるじゃないのよー!
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セフィロス
そう言えば…そうだな
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セフィロス
フ…何だか、我ながら可笑しくなって来た…
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ケフカ
……(ようやく、笑いましたね…)
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其処でケフカは人差し指をピンと立てると、戯けた調子で講釈を垂れ始める
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ケフカ
しかしながら心配ご無用!このお酒に使われてるニガヨモギとは、其のような物騒な代物では、更々ござんせん!
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セフィロス
ふん…?
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ケフカ
ニガヨモギはヨーロッパ原産の極々フツーの植物…別名をワームウッドやらアルテミシアつってね、アラ何処かで聞いたような…やっぱりアブナイかしらん?
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ケフカ
でも昔から良く使われてるハーブだし、そりゃ毒性や習慣性の有る成分も含んでるけど、大量摂取しなけりゃゼンゼン平気…って、やっぱこれ、キケン…??
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ケフカ
…ま、何で有ろうとデバフ効果への耐性には定評の有る我々ですから大丈夫、ってな訳で!
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ケフカが手際良く二人分のアイスティーを作り、其れぞれに適量のヴェルモットを注ぎ入れ、
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更にミントをちょこんと乗せて仕上げる様を眺めつつ、セフィロスはおもむろに呟き出す
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セフィロス
…無闇に飲んでは、ならない美酒か…
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セフィロス
俺が、心に留め置かねばならぬ事だな…
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ケフカ
…ン、どゆこと?
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セフィロス
…お前の懐の深さに、つい甘えてしまう…近頃は、其れも度を越して来た……
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セフィロス
自覚しているんだ、気苦労を掛けてしまっているとな……何時も、済まない
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ケフカ
はん?チミは何を言うとるの?
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ケフカ
…きぐろう…?一体、何の事?
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セフィロス
だから…俺が、重くはないかと…
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ケフカ
んなの…片翼の天使はこの有翼の破壊者サマに、頼りまくっときゃいーんだよ!
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セフィロス
…身も蓋も無いな…
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ケフカ
……と言うのが通常の私のノリですが、では此処で一つ、本音の真面目なご意見を
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セフィロス
…………
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ケフカ
…とかく絶望の空へ浮きがちな私の足を、貴方の重みが…存在が、希望に繋がる大地へと、しかと留めて下さっている……
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ケフカ
…私も、貴方に甘えています…と言うよりも、貴方が救いとなっている…
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ケフカ
ですから、貴方の懊悩を破壊する為ならば、私は持ち得る限りの力を尽くしたいと…そう、思っています
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セフィロス
…ケフカ……
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ケフカ
っつーか、ほれ、さっさと飲んじゃって!氷が溶けて薄まっちゃうじょ…
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セフィロス
あ、ああ…
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セフィロスはヴェルモットを加えたアイスティーを、一口飲んでみる
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セフィロス
…美味い
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ケフカ
うふふ…でしょ!
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セフィロス
紅茶に、香り高さが伴って…此れがニガヨモギか?
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ケフカ
まぁ、他にも色々入ってるんだけど…でもサッパリしてるよね
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セフィロス
そうだな、全く飲み易い…
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其の美味しさに、ついゴクゴクと飲み干してしまう
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セフィロス
……しまった。余り飲んでは、いけないのだったか
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ケフカ
あんなの冗談!もう一杯作るね?ぼくちんもオカワリしたいし
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セフィロス
…有難う
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飲み物を、今度はちびちびと楽しむ二人
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ケフカ
…垣根が、瓦解して…
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セフィロス
…ん?
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ケフカ
いやホラ、ディシディアを始めとする共闘ゲーの増加のせいで、ナンバリング間の垣根がさ、
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ケフカ
心理的にも物理的にも、もう殆ど取っ払われてるじゃない?
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セフィロス
…そうだな。だから俺も、お前と出逢えた…
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ケフカ
…ええ、そう言った恩恵は、全く喜ばしい事で
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ケフカ
…其れに、以前は知り得なかったであろう、我がナンバリングの外の諸事情も……
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セフィロス
諸事情…?
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ケフカ
滅びが確約されているからこそ、私を含めヒトを基にしたラスボスは…
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ケフカ
ある者は野望に、またある者は絶望へと、狂気の如く暴走し…世界を震駭させる役割を全うする事も、為し得て来た筈
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セフィロス
…………
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ケフカ
お話を伺うまで、存じませんでした…貴方のような破滅を赦されぬ特例が、存在していたなんて
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セフィロス
…其の処置も、制作陣の胸一つでどうなるか…だがな
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ケフカ
…私も、彼の者達の創作物では有るけれど…
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ケフカ
閉じられた箱庭で、虚無に囚われる人形で有り続けた分、
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ケフカ
信じる事を思い出させて下さった貴方と…もう、絶対に離れたくは無い
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セフィロス
俺も、絶対に離しはしない
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ケフカは少しく憂いの覗く微笑を見せて、手元のグラスの中身を少量口に含むと、
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セフィロスの方を向き顔を近付けながら、相手のおとがいにそっと触れた指先で、口を開く事を促す
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セフィロス
……は………
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待ち兼ねていたかのようにうっとりと開かれた其処へ、ケフカは唇を合わせると、
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ケフカ
………………
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体温を乗せたヴェルモットティーを少しずつ、相手の口腔へ流し込んで行く
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セフィロス
………………
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こくり、と喉の鳴る微かな音のみが、寝所の静寂に響き渡ると、
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ケフカ
………
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ケフカは、ゆっくりと唇を離した至近距離で、
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ケフカ
『ワームウッド』…エデンより追放された蛇の、這いずった後に生えたとされる草の味……
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セフィロス
私はお前に取り…創造主を忘れさせんと欺く者か?
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ケフカ
いいえ…世界を広げ、自我を呼び起こせし輝く者…
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ケフカ
私はいばらもあざみも掻き分けて、貴方の導き給うた地で…まことの自我を、発露してご覧に入れましょう
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セフィロス
…ケフカ…一体、何をするつもりだ
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ケフカ
フフ…
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ケフカは意味深に微笑むと、今度は激しく、相手と唇を噛み合わせる
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セフィロス
………ン、ッ…
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差し入れた舌先で上顎を頬裏を愛で尽くし、舌根をつつけば溢れ出す唾液を飲み込んで、セフィロスが差し出して来る舌と巧みに絡め、息の続くまで擦らせたのちに、
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少しく伸ばし出した紅い舌先から一筋の名残りを引きつつ、徐々に顔を離していく
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ケフカ
……っは…
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セフィロス
………ケフカ……
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ケフカ
…セフィロス…今は、何も考えず…
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ケフカ
どうぞ私を…強く抱いて下さいませんか?
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セフィロス
…………
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セフィロス
…ああ、
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セフィロス
来るがいい……
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互い、既に上気したような肌をローブの下に秘めながら、
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セフィロスはケフカを、ソファから寝台へと導いて行く。
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