2周目⑬ようこそ、ぼくちん

  • 今日も今日とてガレキの塔、只今ケフカは寝室で、ベッドの中にて目覚めた所

  • ケフカ

    ふぁ〜あ(伸び

  • ケフカ

    …ねむねむ…(目擦り

  • ケフカ

    さて…顔洗って、着替えて、お化粧っと…

  • 身なりを整えたケフカは豪奢な鏡台に向かったままポーズを取り、

  • ケフカ

    ふむ。今日もお化粧のノリ、バッチリ!

  • ケフカ

    こうして見るとつくづく美しいよねぇぼくちん…当たり前だけど

  • ケフカ

    うふふ…今度新色の口紅でも、試してみようかしらん

  • ケフカ

    ………ん?…アレ?

  • ケフカ

    …鏡の中のぼくちんが……二人??

  • ケフカ

    ΣΣあっそびっましょ
    〜〜ん!!!

  • ケフカ

    Σうきゃー!!

  • 突如現れたもう一人の自分に背後から強く抱き着かれ、叫び声を上げるケフカ

  • ケフカ

    ホントだ!ホントに来られた!嬉しい!楽しい!大好きー!!

  • ケフカ

    ウン…そんなドリカム気分な2Pぼくちんは、此処への道程を、無事把握出来た様だね?

  • ケフカ

    そう!ぼくちんがラスボスを務めてる別のナンバリングⅥから、ディシディアNT経由でやっとこさ来られたのだー!!

  • ケフカ

    遠路はるばる、お疲れサマー

  • ケフカ

    うふふ、ぼくちん、ぼーくちーん♡(頬ずり

  • ケフカ

    ウン、ウン…兎に角落ち着き給え、もう一人のぼく様よ

  • ケフカ

    あっ、ごめんね…!

  • ようやく我に帰り、ケフカに抱き着く両腕を緩め、顔を合わせる2Pケフカ

  • ケフカ

    ぼく、ついはしゃいじゃって…お前にはもう、お相手が居るんだもんね?

  • ケフカ

    フフ…まぁ前回みたいなおいたをしなけりゃ大歓迎!やっぱりお前、可愛いとこ有るし

  • ケフカ

    ようこそいらっしゃい、ぼくちん

  • ニコリと微笑み掛けるケフカに、堪らず再び抱き着く2Pケフカ

  • ケフカ

    Σキャー!!何て色男!やっぱり好き、ダイスキー!!

  • ケフカ

    あーあー、たくもー…

  • ケフカは、困り顔の頬を人差し指でポリポリと掻きながら、

  • ケフカ

    所でお前は朝御飯、もう済んだの?

  • 2Pケフカは依然抱き着いたまま、キョトンとした顔を見せ、

  • ケフカ

    ゴハン?そんなもの食べてない、ずっと

  • ケフカ

    …そう。取り敢えず、ぼくちんの食堂へ行こ?

  • ケフカ

    うん、わーい!行く♪

  • ダイニングルームにて
  • ケフカ

    んじゃま、適当な席に座ったんさい

  • ケフカ

    わーお…さっきのお部屋と言い、綺麗にしてるんだねぇ!

  • テーブルを挟んだケフカの向かい席へ、うきうきと腰掛ける2Pケフカ

  • ケフカ

    お前、住まいにはこだわってないの?

  • ケフカ

    ゼーンゼン!テキトーにガレキ集めて、ゼーンブ剥き出しのまんまだよ

  • ケフカ

    …えぇ?世界崩壊から最低一年、その後もプレイヤーの気の済む迄、ぼくちん達は待つ訳だよ?

  • ケフカ

    その間の衣食住、どうしてんの

  • ケフカ

    だって、神なんだもん…住み心地なんてどうでもいいし、寝たり食べたりしなくても、死ぬ事だって無いじゃない?

  • ケフカ

    …まぁ、ぶっちゃけ、そうなんだけど…

  • ケフカ

    …でもさ、教団信者達がお節介で、何かと貢いで来たりしない?

  • ケフカ

    あんなの…カス以下共が勝手に寄り集まって、バカ騒ぎしてるだけ。相手にしなーい!

  • ケフカ

    うん…其れもまぁ、そうなんだけど…

  • 魔神

    …………

  • ケフカ

    あ、おはよ魔神。今日の朝食は二人分、腕によりをかけて、宜しくね

  • 魔神

    …………

  • 2Pケフカにも恭しく頭を垂れ、キッチンへと向かう三闘神が一柱・魔神

  • ケフカ

    へー、ビックリ!此処の三闘神は、ちゃんと自由意志で動くんだねぇ!

  • ケフカ

    お前んとこのは、違うの?

  • ケフカ

    違う違う!ぼくに力を取り込まれてからは、ホントに残りカスそのものだよ

  • ケフカ

    思念で操れば、まぁ戦力にはなってくれるんだけど…

  • ケフカ

    ……………

  • ケフカ

    …お前はずーっと一人きりで、荒れ果てたガレキの寄せ集めの中で…

  • ケフカ

    …食べる事も眠る事もせずに、一体何をしているの?

  • ケフカ

    え?だから、外界でイキってる奴を見付けては裁きの光でぶっ壊したり、

  • ケフカ

    たまに気分で、イキって無いのもぶっ壊したり、

  • ケフカ

    其れから、プレイヤーキャラ達に絶望を知らしめる為の台詞を延々と考えたり、

  • ケフカ

    後は…鏡を見ながら、自…

  • ケフカ

    ハイハイハイハイ!解った解った!

  • ケフカ

    (全く…ほっとくと何を言い出すやら、いけない子!)

  • ケフカ

    なーんかお前は、正に絶望を地で行く生活を、送っとる様だねぇ…

  • ケフカ

    まぁね、ラスボスとしては其の方がイカス生き様なのだけど、余りに味気無いでしょうよ

  • ケフカ

    味気無いだなんて、考えた事も無かったじょ…

  • ケフカ

    どんどん力を取り込んでる段階では、そりゃ愉しい思いも有ったけど…

  • ケフカ

    …神にまで到達してしまえば、後はもう…私を満たすのは、破壊のみ…

  • ケフカ

    ……けれどお前は行動を起こし、今もこうして私の元へ来ている…

  • ケフカ

    ………あ…

  • 魔神

    …………

  • 其処へ魔神がやって来て、銀の盆に載せた朝食を二人にサーブし終えると一礼し、キッチンへ退がって行く

  • ケフカ

    …さ、話の続きはまた後で。先ずはきっちり朝御飯!

  • ケフカ

    わぁ、オレンジジュースと、バゲットのフレンチトースト…いい匂い。何だかとっても久し振りー!

  • ケフカ

    ええ、魔神が一晩、手製のアングレーズソースに漬け込んでますからね、美味しいですよ

  • ケフカ

    いっただっきまーす!

  • ケフカ

    どーぞ、召し上がれ

  • ケフカ

    んー!おいちー♪…アレ?食べるって、こんなにワクワクする事だったっけ??

  • ケフカ

    そりゃ、ワクワクする事なんですよ。自分が何に変わろうと、どんな設定を授けられていようと、

  • ケフカ

    己の心根を潤わせる事を捨て去らねばいけないと言う法は、無い筈です

  • ケフカ

    …ん、何時もの味。美味しい

  • ケフカ

    …でも、ぼく……

  • ケフカ

    どうしました?

  • ケフカ

    おうちに帰って一人ぼっちで食べても、ワクワクしないと思う…

  • ケフカ

    ………(本当は、貴方以外の誰と、食べても……)

  • ケフカは温めておいたティーセットで、二人分の紅茶を入れながら、

  • ケフカ

    でしたら、これからも度々此方にいらしたらいい…

  • そして入れたての熱い茶を勧めつつ、

  • ケフカ

    …この程度のおもてなしなら、何時だって出来ますから

  • ケフカ

    うん、…うん…!

  • ケフカ

    …お茶も、凄く美味しく入れられるんだね…何だかぼくちん、泣いちゃいそう…

  • ケフカ

    やれやれ…私は此処まで、感激屋さんでしたかね?

  • 其れから暫くの間、二人は存分に朝食を楽しんで、

  • ケフカ

    …お腹いっぱい、御馳走様っと。食後にお茶のお代わりは如何?

  • ケフカ

    うん、有難う……でもね、

  • ケフカ

    何です?

  • ケフカ

    …あのね、さっきから気になってたんだけど…

  • 2Pケフカの目線の先には食堂の隅、黒く艶めくグランドピアノ

  • ケフカ

    あ、お前もやっぱりピアノ弾きます?

  • ケフカ

    弾く弾く、そりゃもう弾きまくり!

  • ケフカ

    やー、嬉しいですね…どうぞお好きに、奏でてみて下さいな

  • ケフカ

    ありがと!でも一年振りだから、ちょっと腕が鈍ってるかも…

  • 2Pケフカはピアノの椅子に腰掛けると、手慣らしに鍵盤を一撫でする

  • ケフカ

    うひゃ、いい音…♪

  • ケフカ

    調律も万全ですよ

  • ケフカ

    …じゃあ、先ずはやっぱりこの曲を…

  • ケフカ

    ああ、私達のテーマ曲…

  • ケフカ

    そう…

  • 2Pケフカがコミカルながらも高い技術の要求される楽曲『魔導士ケフカ』を流麗に弾きこなし、やがて演奏し終えると、ケフカは大きな拍手を送りながら、

  • ケフカ

    素晴らしい…!流石は私と言った所です

  • ケフカ

    うふふ…やっぱり楽しいね、音楽

  • ケフカ

    ぼくちんも帰ったら早速、おうちにピアノを置こうかな

  • ケフカ

    是非そうされた方がいい…塔のモンスター達も喜んで、鑑賞客になるでしょう

  • ケフカ

    うん。音楽の解りそうな子達を呼んで、集めてみる

  • 其の答えに微笑みつつ、ケフカはおもむろに立ち上がると、ピアノの方へと歩み寄る

  • ケフカ

    折角ですから、次は連弾と行きませんか?

  • ケフカ

    ヒャハ!一緒に弾いてくれるの?

  • いそいそとベンチ椅子の半分を空ける、2Pケフカ

  • ケフカ

    ええ…曲は勿論、

  • ケフカ

    『妖星乱舞』!

  • 全四楽章で構成され、自らの生涯を辿りレクイエムともなり得る壮大な楽曲を、二人は至妙に丹念に、息を合わせて奏で続ける

  • ケフカ

    第四楽章…あそこんトコ、一緒に笑ってみましょうか

  • ケフカ

    ソレいいねぇ!

  • 原曲ではSEの笑い声が入る箇所で、実際に笑ってみる二人

  • ケフカ

    ホワッホッホッホ!

  • ケフカ

    ホワッホッホッホ!
    …やだ、ゼイタク!!

  • 長い曲も終末を迎え、椅子に並び座る二人には、弾き終えた充実感と沈黙とが訪れる

  • ケフカ

    ……………

  • ケフカ

    …やっぱり…愛しい……

  • 溜息の様な呟きの方へ目をやれば、己と全く同じ作りをした端整な瞳が、真っ直ぐに此方を向いている

  • ケフカ

    ……………

  • ケフカ

    ……口付けは、許されない?

  • ケフカ

    …もう、お招き出来なくなりますよ…

  • 2Pケフカは長い睫毛を伏せて、

  • ケフカ

    ……じゃあ、どうして優しくするの

  • 吐き捨てる様にそう言い俯く相手へ、ケフカは半ば慌てつつ、

  • ケフカ

    …何だかお前は可愛くてね、いやその、弟か妹が出来たみたいな……

  • ケフカ

    ……ぼくにも、こんな…優しさを失わずに居られる個体が、存在し得るんだね……でも

  • ケフカ

    …優し過ぎるのも、残酷なんだじょ……

  • ケフカは椅子から立ち上がると、決まり悪そうにマントの皺を直しながら、

  • ケフカ

    お前、他ナンバリングにでも気になる子居ないの?ホラ、ディシディアとかで

  • ケフカ

    居ない…皆、お前に比べりゃカスばっか…

  • ケフカ

    ……仮にね、私がお付き合いを受け入れたとしても、其れでは今迄と同じ事…

  • ケフカ

    鏡相手に自らを慰めるのと、何ら変わりが無いのですよ…お前の心が真に満たされる事は、有り得ない

  • ケフカ

    ……其れでもいい…!

  • ケフカ

    ……………

  • ケフカ

    いつ…いつ、消滅するか解らないのです…あの曲の終わりと共にこの身は、必ず終焉を迎える運命……

  • ケフカ

    でしたら一番愛しい自分に…貴方に、刹那でもいい……愛されたい……

  • ケフカ

    ……其れは、今はっきりと申し上げておきますが、

  • ケフカ

    愛情では無く……憐憫の情と言う事に、なりますよ…

  • ケフカ

    …ええ。望んでも望んでも、ヒトの心はどうにもならない事位、解っています…だから、せめて、

  • ケフカ

    どうか、私を…憐れんで……

  • ケフカ

    ……………

  • ケフカは椅子に座ったままの2Pケフカのおとがいを捕えると、己の方へ上向かせる

  • ケフカ

    …あっ……

  • ケフカ

    ……瞳を閉じろ

  • ケフカ

    …………

  • 言われるがまま瞼を閉じ、口をうっすら開いた相手のかんばせへ、ケフカはゆっくりと唇を寄せると、

  • 其の白い額に口付けて、再び顔を離していく

  • ケフカ

    ………えっ、オシマイ?

  • ケフカ

    オシマイ。

  • ケフカ

    Σツマンナ〜〜イ!!

  • ケフカ

    うっせー!35のオッサンをカリ城ヒロインと同格に扱ってやったんだから、有難く思え!!

  • ケフカ

    大体何だその、「ぼくちんをカワイソがって〜ん(泣)」的な、情け無い事極まり無い姿勢は!

  • ケフカ

    …全く反吐が出る!私ならばそんな弱音を吐く暇に、前向きで手段選ばぬ策略をドンドン巡らせている筈です

  • ケフカ

    だから今回は、更にお涙チョーダイで迫ってみたんじゃないのよー!

  • ケフカ

    ふむ、今回も策略だったか…!いいぞ、その意気だ!!

  • ケフカ

    んー、結構いいセン行ってたと思うんだけどなー。正直、絆され掛けてたでしょ?

  • ケフカ

    ………(本当は、策略なんかじゃ無かった癖に…)

  • ケフカ

    ………(本当は、全部本心だったのだけど…)

  • ケフカ

    ……兎に角ぼくちんは、折角オトモダチになれたお前との仲を、壊したくないの!!

  • ケフカ

    あっ、「壊したくない」だって!其れこそぼくちんらしくなーい!!

  • ケフカ

    むふ…これは、あと一押しと言った感じだねぇ…

  • ケフカ

    …諦めろ

  • ケフカ

    諦めない♡

  • ケフカ

    ぐぬぬ…流石ぼくちん、執念深い……

  • その時ダイニングの隅に現れる、ディシディアNTとの境界線の裂け目

  • ケフカ

    …あっ、裂け目だ

  • ケフカ

    お前もあんまり自分とこのⅥを留守すると、マズいんじゃ無い?

  • ケフカ

    むー、そうだね…今日の所はぼくちん、この辺で帰ろうかな

  • ケフカ

    んじゃま、気を付けて…また遊びにおいで?但し下心は、キチンとおうちに置いて来て

  • ケフカ

    うん!其れでさ、何時かまた、しよーね!あのⅦの彼氏サンも交えて、濃厚3ぴ…

  • ケフカ

    ΣΣもう無ぇよ!!下心は置いて来いっつったろ?!

  • ケフカ

    そんな事言ってぇ、忘れられない癖にー♪

  • ケフカ

    Σキー!!黙れや!ホラホラさっさと、帰れ帰れ!

  • ケフカ

    ………

  • 2Pケフカは怒り狂うケフカの一瞬の隙をつき、互い毒々しく塗り込めても美しさを隠し切れない唇同士を、そっと重ね合わせる

  • ケフカ

    ………!

  • ケフカ

    じゃねぃ♪今回も色々と、御馳走様!

  • そう言ってバイバイと手を振り、裂け目の向こうへ消えて行く2Pケフカ

  • ケフカ

    ……んもー、唇はダメなんだっつの…

  • ケフカは眉間に皺を寄せつつ、傍のテーブルナプキンを取って口許を拭いながら、

  • ケフカ

    済まん、セフィ坊…

  • ケフカ

    はぁ……どいつもこいつもぼくちんも、

  • ケフカ

    全くもって、純情バカ!

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