「親父、家に着いたで」と電話をかけてきた渡瀬に黒澤はこう返した

「部屋に入ったらすぐ携帯をメイに渡せいいな。あと何があっても娘を傷つけるなよ」

「ほな、失礼するは親父」と言って渡瀬はメイがいるであろう部屋に入っていった。そしてベッドで丸くなって寝ている少女に目がいった。彼女がこの少女が親父の娘と思いながら彼女を起こすために彼女の肩に手を置いた瞬間渡瀬の視界は１８０°変わった。今渡瀬の目の前に親父の娘、お嬢の顔がある。さっきまでは渡瀬が見下ろしていたのに今は逆お嬢に見下ろされていた。お嬢に跨られながら


「だれ？」と少女にしては低い声で渡瀬に向かって言う。

「俺は渡瀬勝っちゅうもんや。親父に頼まれてお嬢を連れに来たんや」落ち着け渡瀬勝10歳の少女に上に跨がれたぐらいで何緊張しとんのや。さっきのは吃驚したがそれだけや

「証拠は？」

「おい、渡瀬、おい！」と渡瀬が握っていた携帯電話から聞き知った声が聞こえてきた

「お父さん？ねぇコレ出てもいい？」と渡瀬を見ながら聞く

「かまへん」と言われてメイは渡瀬から携帯を受け取り渡瀬に跨ったまま電話に出た

「お父さん？」

「おお、メイか大丈夫か？渡瀬に何かされたか？」

「渡瀬さん本当にお父さんが寄越したの？何もされてないよ・・・」

「ああそうだ。そろそろお前を子分らに紹介しようと思ってな。俺は席を外すことができなかったから渡瀬を行かせたんだが・・・何かされたかと言うより何かしたか」

「そっか分かった。ナニモシテナイヨ・・・それより渡瀬さんに変わるね」と言ってメイは渡瀬さんの上から降り渡瀬さんに携帯を渡した。

「変わったで親父」

「メイを連れて早くこっちに戻ってこい。それとメイに何かされたか？」

「・・・ナアンモサレテマヘン」

「・・・そうか、まいい。ならメイを連れて早く戻ってこい」




「あの・・・？」と遠慮がちに聞いてくメイに渡瀬は何かよくわからないが何とも言えない気持ちになった。

「外で待っとるはよ着替えてくれ。着替えたら親父のとこに連れて行くさかい」と言って渡瀬は部屋の外に出た。

「・・・」私は着替え始めた。適当にクローゼットの中から選び着替え部屋の外に出た。

「着替え終わったんか、ほな行くで」と言いながら歩き出した渡瀬さんの後に付いて行った。家の外に出ると車が止まっておりその車に乗り込んだ渡瀬さんに続いて乗り込んだ

「・・・なぁ、お嬢」と前を見ながら話しかけてきた渡瀬さんにビクビクしながらお嬢と呼ばれることに不思議に思った私は質問を返してしまった

「お嬢？」

「親父の娘だからお嬢や」

「はぁ」

「お嬢は親父が好きかぁ？」

「好きですよ」

「ならなんでそんな顔しとんのや？」どんな顔をしているのか私自身わからない

「顔？」

「嫌そうな顔しとるで」嫌そうな顔をしていたのか・・・嫌そうな顔ってどんな顔？

「嫌そう・・・」

「そや、こんな顔や」と言って渡瀬さんは渡瀬さんなりの嫌そうな顔を見せてくれた。

「そんな顔していましたか・・・そんなことはないんですけどね。感情と表情が合ってないんですかね？」

「表情どっかに忘れてきたんか？」

「・・・そうかもしれませんね」

「そーか」

「・・・」

「ほな、取りにいかんとな。自分の表情」

「うん、あ！」

「どないしたん」

「自己紹介してなかったですね。黒澤メイです。宜くお願いします」

「ああ、そうやった。そうやった。もう一度ワシも自己紹介しとこうか。渡瀬勝やよろしゅう」

「渡瀬勝・・・渡瀬さん？」

「それでええで、勝さんと読んでもええで？」

「渡瀬さん、勝さん・・・じゃ勝さんと呼びますね」

「今度は無表情だったわ」

「・・・笑ったつもりなんですが・・無表情でしたか。笑顔って難しいですね」

「・・・ワシが一緒に探したるわ」

「ご迷惑じゃないですか」と申し訳なさそうに言うメイに親父の気持ちが分かった

「迷惑なんてこれぽっちも思わへんで、まだ小さいんやそのいなこときにするなや。自分甘えれば良いんとちゃうか」

「甘えるですか」

「そや、親父もお嬢に甘えられたいみたいやで」

「そうなんですか、じゃ甘えてみます」

「おう、そうしい」

「ありがとうございます勝さん」