Jean Kirstein
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嫌よ嫌よも好きのうち
「なんだよ、弱えじゃねぇか」
今は対人格闘術の訓練中で相手はジャンだ。
自分よりも体が大きくて敵うわけがない相手なのだが態度もでかくて気に食わない。
「弱いとか言わないでよ。私だって懸命にやってるんだから」
「はっ。弱えもんは弱えんだよ」
ニヤニヤと嘲笑うような顔に腹が立って思い切り顔面パンチを食わらせてやった。
「ほんっとにムカつく!!」
「いってーな!何すんだよ!」
「ジャンが悪いんでしょ!人のこと見下してそんなに楽しいの?!」
「あ"ぁ?!本当のことを言ったまでだろうが!」
なんですって!、やんのかこら!、とイガミ合っていると痴話喧嘩と周りの同期から囃し立てられる始末。尚更機嫌が悪くなり腹の虫がおさまらない。それは向こうも同じらしく睨み合う。それを教官に見つかり罰として訓練後の片付けと走らされる羽目に。
「これがお前じゃなくミカサなら良かったのによ」
「口を動かさないで手を動かしてよ」
「やってるじゃねーか!」
「うるさい!」
ーーほんとになんなのこの男!
一緒にいるだけで気分を悪くするなんてこの男はある意味天才だ。イライラしながら黙々と作業を進める。
「こっちは終わったよ」
「そうかよ。こっちも終わる……っ!危ねぇ!!」
えっ、と声を上げた瞬間棚の上からライフル銃が体の上に落ちてくる。避けようとしたが足が絡まり転倒してしまう。衝撃に備えたが思ったより痛みがない。
不思議に思い目を開けるとジャンが覆い被さり庇ってくれていた。
「ジャンっ!!」
咄嗟に名前を呼んでジャンの顔を見る。
「ちくしょう…なんで俺がこんな目に……」
などと小言が聞こえ大丈夫そうで安心した。
「庇ってくれなくてもよかったのに…」
「あぁ?体が勝手に動いちまったんだよ」
「動ける?」
「あぁ…今動く…って!」
ジャンが動こうとしたその時最後の一本が見事に彼の頭の上に落ちてくるものだから思わず笑ってしまった。
「てめぇ…笑うなっ!」
「ふふふっ。ごめんごめん!」
ジャンの下で体を横にしてお腹を抱えて笑っていると影で暗くなるので顔を上げると彼がまた覆い被さっていた。
「ジャン?」
彼は真剣な顔つきをしているので何事かと名前を呼ぶ。
「あんたはいつもそうやって笑ってりゃいいのによ」
「何よ。惚れたって言っても私は好きになんかならないよ」
舌を出してフンッと顔を背ける。
「別に好きになってもらおうなんざ思ってねーよ。ただ…」
「ただ、何よ?」
どうせまた嫌味でも言われるのだと思って言い返そうと身構える。
「いや、あんたの笑った顔は悪くねぇなと思っただけだ」
予想外の言葉で思わず彼を見て顔を赤くしてしまった。
「何赤くなってんだよ」
「赤くなってない!」
「いいや。なってる」
「なってない!」
顔が赤くなってるのは事実だがこの男の前では認めたくなくて顔をまた彼の視線から背ける。
「へぇー…可愛いところあんじゃねぇか」
「うるさいっ!それより早くどいてよ!」
この状況が耐えられず彼の胸を押すがビクともしない。
「なぁ…俺は男だぞ」
「そんなの知ってるよ!」
「そんなに俺が嫌いか?」
「嫌い!ジャンは生意気だから嫌い!」
顔を赤くしたまま言うと「こっち向け」と言われるので仕方なしに彼の方を向く。彼はニヤリと笑っているがいつもの顔と少し違う。
「そんなに顔を赤くして嫌いと言われてもな、説得力がないぜ」
むしろその逆に聞こえる、とか意味不明な事を言うので焦る。嫌いとかムカつくとか言っているがジャンと言い合いをするのは実のところ本当に嫌ではなかったからだ。
「な、何言ってるの!私はあんたの事なんか好きじゃないわよ!」
「あ?俺だって好きじゃねぇよ。でもな…」
彼は顔を近付けると耳元でボソリと呟いた。
"悪いが、顔を赤くしてるハルを可愛いと思っちまったんだよ"
そして目が合うと自分の顔に熱が一気に集まったのが分かった。
「ふはっ!すげぇ真っ赤だな」
「からかってるなら許さないから!」
「からかってねぇよ。本当だ」
彼はニッとこっちを向いて笑う。
初めて見る彼の笑った顔に不覚にも心臓が高鳴ってしまう。
「まぁ…ジャンもそうやって笑ってれば悪くない…かも」
そう呟くがもう顔が熱くてジャンの顔が見てられず手で顔を覆う。何か反応が返ってくると思ったがなんの反応もない。指の隙間から様子を伺うと彼もまた顔を赤くして顔を背けていた。
ーー照れてる…
それを見て何故か可愛く思ってしまった自分がいて慌てて首を振る。
「なぁ…もう一度聞くぞ」
彼から声がしたので指の隙間から見上げる。
「何をよ」
「俺が嫌いか?」
「…っ!」
ーー今、その質問は反則っ!
「な、なんでよ!」
「いいから言えよ」
「言わない!」
「言わねえとその口塞ぐぞ」
それは嫌だと思い間を空けて答えた。
「今のジャンは…嫌いじゃない…」
「そーかよ。俺も同じだ」
何を言ってるんだ、思っていると手を握られ押さえ込まれた。
「なっ!ジャン?!」
「イガミ合ってた俺らが認め合った記念だ」
彼はそう言って唇を塞いだ。
驚いて顔を離そうとするが舌で唇を舐められビクリと体を動かすのを止まってしまった。それをよしと思ったのか唇を啄むように何度もキスを落としてくる。
「まっ…じゃ、ん……んっ…」
唇が離れた瞬間に名前を呼ぶとその空いた口から舌を割り込まれ深くなる口付け。
彼の舌が口の中を動き回るが熱情的なものとは相反して時折優しく舌を絡めてくる。
「んっ…はぁ…ジャン……」
唇が離れジャンを見ると熱っぽい瞳でこちらを見ていた。
「ちっ…そんな目で見るな。止まらなくなっちまうだろうが…」
「なっ!ジャンこそ!てか、なんでキスなんか!」
「てめぇとキスしてぇと思ったんだよ」
悪りぃか!、とまた顔を赤くして言うのでこちらまで顔が赤くなる。
「キス…嫌だったか…?」
「…別に…嫌じゃなかった…」
「やけに素直じゃねぇか。もっかいしとくか?」
「いやよ!もうしない!ジャンなんか…っ!」
嫌い、そう言おうとしたがまたしても彼に唇を奪われ言う事が出来なかった。
「はぁ……ジャンなんか…嫌い…」
唇を離した瞬間に小さな声で紡いだ言葉。
でも彼はニヤリと笑って余裕そうだ。
「そうかよ。別にかまわねぇよ」
ほらよ、と彼は起き上がるのを手助けしてくれる。
心臓が落ち着かなくて顔も赤いし彼の顔が見れない。
その後は彼と言葉を交わすことなく教官の言いつけ通り走るが彼の口付けと言葉と笑った顔が頭から離れず考えを振り払うかのように無心になるように走った。
後日。
「てめぇは本当に頭悪りぃな」
「悪かったわね。ジャンこそその態度どうにかならないの?!」
いつものようにこの男とイガミ合っているのだがふとジャンと見つめ合うと先日のことを思い出して慌てて顔を背けることが増えた。
「なんだよ。もう終わりかよ。以前までの威勢はどうした」
などとニヤニヤ笑うのでやはり気にくわない。
ーー少しでも見直していいなと思った私が馬鹿だった…
頬を少し染めながら腹の立つ笑い方をする彼を睨みつける。
「もう…ジャンなんか嫌い!」
「奇遇だな。俺もだ」
バチバチと睨み合った後顔を背ける二人。
だが背けた後に彼がこちらを盗み見ていることは知らない。
その様子を見ていた周りの同期の中でマルコやアルミンなど勘の鋭い人らは微笑ましく眺めていた。
嫌いと言いながらもお互いを意識している二人。
それはもう好意を寄せているような反応で周りにもバレている。
ーージャンなんか…嫌いなんだから……
離れた場所から彼を見ていると目が合ってしまう。
彼はニッと笑うと口元を動かす。その言葉はムカつくものだったが二人だけの秘密の会話みたいでちょっと嬉しかったり。
"バーカ"
"きらい"
"おれも"
"ジャンのバカ"
ふんっと顔を背けたその顔を彼はあの時の笑顔で見ている。
二人が気持ちを認めるのも時間の問題。
果たしてその時がくるのはいつだろうか。
嫌よ嫌よも好きのうち
fin.
2019.2.21
「なんだよ、弱えじゃねぇか」
今は対人格闘術の訓練中で相手はジャンだ。
自分よりも体が大きくて敵うわけがない相手なのだが態度もでかくて気に食わない。
「弱いとか言わないでよ。私だって懸命にやってるんだから」
「はっ。弱えもんは弱えんだよ」
ニヤニヤと嘲笑うような顔に腹が立って思い切り顔面パンチを食わらせてやった。
「ほんっとにムカつく!!」
「いってーな!何すんだよ!」
「ジャンが悪いんでしょ!人のこと見下してそんなに楽しいの?!」
「あ"ぁ?!本当のことを言ったまでだろうが!」
なんですって!、やんのかこら!、とイガミ合っていると痴話喧嘩と周りの同期から囃し立てられる始末。尚更機嫌が悪くなり腹の虫がおさまらない。それは向こうも同じらしく睨み合う。それを教官に見つかり罰として訓練後の片付けと走らされる羽目に。
「これがお前じゃなくミカサなら良かったのによ」
「口を動かさないで手を動かしてよ」
「やってるじゃねーか!」
「うるさい!」
ーーほんとになんなのこの男!
一緒にいるだけで気分を悪くするなんてこの男はある意味天才だ。イライラしながら黙々と作業を進める。
「こっちは終わったよ」
「そうかよ。こっちも終わる……っ!危ねぇ!!」
えっ、と声を上げた瞬間棚の上からライフル銃が体の上に落ちてくる。避けようとしたが足が絡まり転倒してしまう。衝撃に備えたが思ったより痛みがない。
不思議に思い目を開けるとジャンが覆い被さり庇ってくれていた。
「ジャンっ!!」
咄嗟に名前を呼んでジャンの顔を見る。
「ちくしょう…なんで俺がこんな目に……」
などと小言が聞こえ大丈夫そうで安心した。
「庇ってくれなくてもよかったのに…」
「あぁ?体が勝手に動いちまったんだよ」
「動ける?」
「あぁ…今動く…って!」
ジャンが動こうとしたその時最後の一本が見事に彼の頭の上に落ちてくるものだから思わず笑ってしまった。
「てめぇ…笑うなっ!」
「ふふふっ。ごめんごめん!」
ジャンの下で体を横にしてお腹を抱えて笑っていると影で暗くなるので顔を上げると彼がまた覆い被さっていた。
「ジャン?」
彼は真剣な顔つきをしているので何事かと名前を呼ぶ。
「あんたはいつもそうやって笑ってりゃいいのによ」
「何よ。惚れたって言っても私は好きになんかならないよ」
舌を出してフンッと顔を背ける。
「別に好きになってもらおうなんざ思ってねーよ。ただ…」
「ただ、何よ?」
どうせまた嫌味でも言われるのだと思って言い返そうと身構える。
「いや、あんたの笑った顔は悪くねぇなと思っただけだ」
予想外の言葉で思わず彼を見て顔を赤くしてしまった。
「何赤くなってんだよ」
「赤くなってない!」
「いいや。なってる」
「なってない!」
顔が赤くなってるのは事実だがこの男の前では認めたくなくて顔をまた彼の視線から背ける。
「へぇー…可愛いところあんじゃねぇか」
「うるさいっ!それより早くどいてよ!」
この状況が耐えられず彼の胸を押すがビクともしない。
「なぁ…俺は男だぞ」
「そんなの知ってるよ!」
「そんなに俺が嫌いか?」
「嫌い!ジャンは生意気だから嫌い!」
顔を赤くしたまま言うと「こっち向け」と言われるので仕方なしに彼の方を向く。彼はニヤリと笑っているがいつもの顔と少し違う。
「そんなに顔を赤くして嫌いと言われてもな、説得力がないぜ」
むしろその逆に聞こえる、とか意味不明な事を言うので焦る。嫌いとかムカつくとか言っているがジャンと言い合いをするのは実のところ本当に嫌ではなかったからだ。
「な、何言ってるの!私はあんたの事なんか好きじゃないわよ!」
「あ?俺だって好きじゃねぇよ。でもな…」
彼は顔を近付けると耳元でボソリと呟いた。
"悪いが、顔を赤くしてるハルを可愛いと思っちまったんだよ"
そして目が合うと自分の顔に熱が一気に集まったのが分かった。
「ふはっ!すげぇ真っ赤だな」
「からかってるなら許さないから!」
「からかってねぇよ。本当だ」
彼はニッとこっちを向いて笑う。
初めて見る彼の笑った顔に不覚にも心臓が高鳴ってしまう。
「まぁ…ジャンもそうやって笑ってれば悪くない…かも」
そう呟くがもう顔が熱くてジャンの顔が見てられず手で顔を覆う。何か反応が返ってくると思ったがなんの反応もない。指の隙間から様子を伺うと彼もまた顔を赤くして顔を背けていた。
ーー照れてる…
それを見て何故か可愛く思ってしまった自分がいて慌てて首を振る。
「なぁ…もう一度聞くぞ」
彼から声がしたので指の隙間から見上げる。
「何をよ」
「俺が嫌いか?」
「…っ!」
ーー今、その質問は反則っ!
「な、なんでよ!」
「いいから言えよ」
「言わない!」
「言わねえとその口塞ぐぞ」
それは嫌だと思い間を空けて答えた。
「今のジャンは…嫌いじゃない…」
「そーかよ。俺も同じだ」
何を言ってるんだ、思っていると手を握られ押さえ込まれた。
「なっ!ジャン?!」
「イガミ合ってた俺らが認め合った記念だ」
彼はそう言って唇を塞いだ。
驚いて顔を離そうとするが舌で唇を舐められビクリと体を動かすのを止まってしまった。それをよしと思ったのか唇を啄むように何度もキスを落としてくる。
「まっ…じゃ、ん……んっ…」
唇が離れた瞬間に名前を呼ぶとその空いた口から舌を割り込まれ深くなる口付け。
彼の舌が口の中を動き回るが熱情的なものとは相反して時折優しく舌を絡めてくる。
「んっ…はぁ…ジャン……」
唇が離れジャンを見ると熱っぽい瞳でこちらを見ていた。
「ちっ…そんな目で見るな。止まらなくなっちまうだろうが…」
「なっ!ジャンこそ!てか、なんでキスなんか!」
「てめぇとキスしてぇと思ったんだよ」
悪りぃか!、とまた顔を赤くして言うのでこちらまで顔が赤くなる。
「キス…嫌だったか…?」
「…別に…嫌じゃなかった…」
「やけに素直じゃねぇか。もっかいしとくか?」
「いやよ!もうしない!ジャンなんか…っ!」
嫌い、そう言おうとしたがまたしても彼に唇を奪われ言う事が出来なかった。
「はぁ……ジャンなんか…嫌い…」
唇を離した瞬間に小さな声で紡いだ言葉。
でも彼はニヤリと笑って余裕そうだ。
「そうかよ。別にかまわねぇよ」
ほらよ、と彼は起き上がるのを手助けしてくれる。
心臓が落ち着かなくて顔も赤いし彼の顔が見れない。
その後は彼と言葉を交わすことなく教官の言いつけ通り走るが彼の口付けと言葉と笑った顔が頭から離れず考えを振り払うかのように無心になるように走った。
後日。
「てめぇは本当に頭悪りぃな」
「悪かったわね。ジャンこそその態度どうにかならないの?!」
いつものようにこの男とイガミ合っているのだがふとジャンと見つめ合うと先日のことを思い出して慌てて顔を背けることが増えた。
「なんだよ。もう終わりかよ。以前までの威勢はどうした」
などとニヤニヤ笑うのでやはり気にくわない。
ーー少しでも見直していいなと思った私が馬鹿だった…
頬を少し染めながら腹の立つ笑い方をする彼を睨みつける。
「もう…ジャンなんか嫌い!」
「奇遇だな。俺もだ」
バチバチと睨み合った後顔を背ける二人。
だが背けた後に彼がこちらを盗み見ていることは知らない。
その様子を見ていた周りの同期の中でマルコやアルミンなど勘の鋭い人らは微笑ましく眺めていた。
嫌いと言いながらもお互いを意識している二人。
それはもう好意を寄せているような反応で周りにもバレている。
ーージャンなんか…嫌いなんだから……
離れた場所から彼を見ていると目が合ってしまう。
彼はニッと笑うと口元を動かす。その言葉はムカつくものだったが二人だけの秘密の会話みたいでちょっと嬉しかったり。
"バーカ"
"きらい"
"おれも"
"ジャンのバカ"
ふんっと顔を背けたその顔を彼はあの時の笑顔で見ている。
二人が気持ちを認めるのも時間の問題。
果たしてその時がくるのはいつだろうか。
嫌よ嫌よも好きのうち
fin.
2019.2.21
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