想いは手作り菓子にーLeviー
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3.
2月13日。
幸いにも兵舎から家が近いので夕方家に帰ると台所に立つ。彼は紅茶が好きなのは知っているので奮発して買ったお菓子に使える茶葉を買ってマフィンのようなものを作ることにした。
2月14日。
いよいよこの日がやって来た。
彼は本部にいるので支部に居た自分は昼休憩を返上して急いで馬を走らせた。
本部に着くと彼を探したが見当たらない。
ーーあまり時間がない
本部内を探していると彼の姿を見つけたが別の女性からお菓子を受け取っているのを見かけて思わず隠れる。
「あの…あなたの事が好きなんです…だから…」
「他をあたれ。俺に応える義理はねぇ」
その女性兵士は「すみません…」と泣きながらその場を去っていくのが見えた。
彼がこちらに歩いて来るのが見えたが今のを見て渡せる勇気が萎んでしまう。そっと彼に見つからないようにその場を去ろうと歩き始めた。
「おい」
彼に見つかったことに驚きドキリとする。
ゆっくり振り返ると彼の腕の中にはお菓子の山が小さく出来ていた。それを見てズキリと心が痛む。
「覗き見とはいい度胸だな」
「えっ!気付いて…!」
「俺を誰だと思ってやがる」
彼はゆっくり近付いてくると目の前まで来た。
「てめぇは確か支部の勤務じゃなかったか?」
「はい。ちょっと用事があったので来たのですがもう帰ります」
失礼します、と踵を返そうとしたが彼に腕を掴まれ足を止める。
「兵長?」
「それは誰かに渡すのか」
それ、とは自分が手に持っているものだろう。
小袋に入れて中は見えないはずだが彼は気付いたようだ。
「そうですね…渡そうとしたんですけど…」
やっぱりやめました、と苦笑しながら彼を見ると掴んでいる腕に力が入った。
「…いいのか?」
「はい…彼に迷惑かけたくありませんから…」
「……そうか。なら早く持ち場に戻るんだな」
いつも通りの鋭い眼光で見下ろされるがその瞳が微かに揺れたような気がして胸が締め付けられた。彼は腕を離し目の前から去ろうとしている。
「あの」
「なんだ」
「兵長は特定の相手は作らないのですか?」
「なぜそう思う」
「さっきの兵士に『応える義理はない』と言われていたので…」
「あぁ。あそこではそう言ったな」
「じゃあ、渡しても…」
「気持ちには応えられねぇが菓子は頂く。それが唯一俺に出来る事だからな」
面倒くせぇが、一言多い気もするがその言葉を聞いて彼なりの優しさが伝わり嬉しくなった。
ーーそうだ。彼はこういう人だ
彼に一歩近寄り小袋から中身を取り出す。
「よかったら受け取って下さい。感謝の印です」
想いは伝えない事にした。今はそれでいいと思ったからだ。彼は黙って受け取りお菓子の山にそれを埋めた。
「それだけか?」
「え?」
「これで終わりか?」
「え、あの、はい…」
「言わねぇんだな」
「えっと何を…」
「てめぇは俺に惚れてんだろ」
それを聞いて心臓が一瞬で早鐘のように速くなった。
「な!えっ!」
「何度も言うが俺を誰だと思っていやがる」
彼には既に自分の気持ちに気付かれていたということに驚きを隠せないが確かに彼はよく見ている。
「言うか言わねぇかどっちかにしろ」
ジロリと見下ろすその目は鋭く何でも見透かされているような気がした。
「わ、たしは……好き、です…リヴァイ兵長に惚れてます…」
ーーあぁ…言ってしまった……
言うはずもなかったその言葉は彼に誘導されるような形で言ってしまった。恥ずかしくて泣きそうになるので俯く。
「そうか」
「で、でも!だからと言って何かを望んではいません!兵長の迷惑にはなりたく……っっ!」
話している途中で手を引かれ彼の胸に吸い寄せられた。そして耳元に彼の息遣いが聞こえ顔がすぐ側にあるのが分かると鼓動が更に速くなった。
「残念だったな。俺の方が望んでる」
耳元で話す彼の声が直接耳に響き脳が痺れ体が震えた。そのまま彼は耳を甘噛みし舐める。
「んっ……」
「このまま味わいてぇところだが時間だ。早く支部へ戻れ」
彼は体を離すと何事もなかったかのようにこちらを見ている。
「今度会った時は覚悟しておけ」
そう言って頭に手を乗せるとスタスタと歩いて行ってしまった。
何が起きたのか分からなかった。
その場に座り込むとボーっと彼が歩いて行った先を見つめていた。
ーー私が何も望んでないって言ったら彼は望んでる、って言ったよね…それに今度覚悟しとけって、それってつまりはそういう……
そこでようやく理解し顔を一気に赤くさせ体も火照るのを感じた。
その日の仕事終わりの兵舎。
同期の彼女の元へ向かった。
「ハル!」
姿を見かけ名前を呼ぶと駆け寄る。
側に来ると想い人 に渡せたのか聞いてみる。彼女は自分が気付いていたことに驚いていたが当たり前だと答えた。
ーー何年一緒にいると思ってるのよ
クスリと小さく笑うと彼女の言葉を待つ。
「それが…寝てたからそのまま置いてきちゃった…」
「えっ?!分隊長が寝てた?!」
あの隙を見せないような分隊長が寝ていたとはなんとも珍しいことがあるものだと心底驚いた。
ーーまぁでも彼も人間だものね
しかし寝ていたという事は気持ちは伝えられてないということ。それを言うと彼女は「これでいい」と言っていた。何やら慌てている様子が気になったがそれよりも伝えられなかった気持ちの事を考えていた。
ーーでもそれじゃあ…
ここ調査兵団にいる限りいつ命が消えてもおかしくない。だから彼女には気持ちを伝えてほしいものだが無理強いしては意味がない。彼女の事を思い切なくなる。
「サラはどうだったの?」
考えごとをしていたら彼女の方から話しかけられた。
今日の事を思い出して頬を染めてしまう。
「その…うまくいったみたい?」
「なんで疑問形なの」
クスクスといつも通りに笑う彼女を見て安堵した。
「気持ちは言うつもりなかったんだけど…でも兵長から『俺に惚れてんだろ』って言われて…だから、彼に促される形で気持ちを伝えたの」
「兵長の方から…」
同期は目を見開いて驚いていた。
それもそうだ。彼のそういう色恋沙汰の話なんて聞かないし、面倒くさいと興味がなさそうに見えるからだ。
「でも何も望まないって伝えたら、自分の方が望んでるって言われて…それってやっぱり…」
「そういうことなんだと思うよ?兵長もサラのことを想っていたのね」
良かったね、とハルは抱きしめて喜んでくれた。それからは彼女とこの行事について話し、談笑して楽しい時間を過ごした。
ーーーーーー
「おい。何をふざけてやがる」
「いえ!ふざけてなんか!」
「だったらいいだろ」
「それは無理です!」
自分は今彼の自室に呼ばれて来ていた。
部屋に入った途端勢いよく手を引かれベッドへ連れて来られたのだが驚きのあまり彼を押して堪らず逃げてしまった。
後ろには壁、目の前には彼が立っている。
「面倒くせぇ…」
彼は壁に手をついて顔を近づけてきた。
"覚悟しておけと言ったはずだが?サラ 。俺はお前がほしい"
耳元で囁かれ耳と顔に熱が集まる。
するとこの間のように耳を甘噛みされ声が漏れる。
「そういや言ってないことが一つある」
耳から顔を離して視線が交わるが彼の瞳は熱を帯びており真剣な眼差しに鼓動が速くなった。
「一度しか言わねぇからよく聞け」
彼はそう言って頬に手を添え撫でるがその手つきは妖しく動く。
「俺もサラを好いている。誰よりもな」
覚えておけ、と彼が言うのでコクリと頷くと彼の瞳が揺れたと思ったら唇が塞がれていた。
2月14日。
お菓子と共に想いを伝える日。
あの日伝えた想いは数日後に彼の想いとお菓子よりも甘く濃厚なひとときによって返される。
想いは手作りのお菓子と共に……
想いは手作りお菓子にー Levi ー
これを読んだ皆様にも素敵な日になりますように。
fin.
2019.2.8
2月13日。
幸いにも兵舎から家が近いので夕方家に帰ると台所に立つ。彼は紅茶が好きなのは知っているので奮発して買ったお菓子に使える茶葉を買ってマフィンのようなものを作ることにした。
2月14日。
いよいよこの日がやって来た。
彼は本部にいるので支部に居た自分は昼休憩を返上して急いで馬を走らせた。
本部に着くと彼を探したが見当たらない。
ーーあまり時間がない
本部内を探していると彼の姿を見つけたが別の女性からお菓子を受け取っているのを見かけて思わず隠れる。
「あの…あなたの事が好きなんです…だから…」
「他をあたれ。俺に応える義理はねぇ」
その女性兵士は「すみません…」と泣きながらその場を去っていくのが見えた。
彼がこちらに歩いて来るのが見えたが今のを見て渡せる勇気が萎んでしまう。そっと彼に見つからないようにその場を去ろうと歩き始めた。
「おい」
彼に見つかったことに驚きドキリとする。
ゆっくり振り返ると彼の腕の中にはお菓子の山が小さく出来ていた。それを見てズキリと心が痛む。
「覗き見とはいい度胸だな」
「えっ!気付いて…!」
「俺を誰だと思ってやがる」
彼はゆっくり近付いてくると目の前まで来た。
「てめぇは確か支部の勤務じゃなかったか?」
「はい。ちょっと用事があったので来たのですがもう帰ります」
失礼します、と踵を返そうとしたが彼に腕を掴まれ足を止める。
「兵長?」
「それは誰かに渡すのか」
それ、とは自分が手に持っているものだろう。
小袋に入れて中は見えないはずだが彼は気付いたようだ。
「そうですね…渡そうとしたんですけど…」
やっぱりやめました、と苦笑しながら彼を見ると掴んでいる腕に力が入った。
「…いいのか?」
「はい…彼に迷惑かけたくありませんから…」
「……そうか。なら早く持ち場に戻るんだな」
いつも通りの鋭い眼光で見下ろされるがその瞳が微かに揺れたような気がして胸が締め付けられた。彼は腕を離し目の前から去ろうとしている。
「あの」
「なんだ」
「兵長は特定の相手は作らないのですか?」
「なぜそう思う」
「さっきの兵士に『応える義理はない』と言われていたので…」
「あぁ。あそこではそう言ったな」
「じゃあ、渡しても…」
「気持ちには応えられねぇが菓子は頂く。それが唯一俺に出来る事だからな」
面倒くせぇが、一言多い気もするがその言葉を聞いて彼なりの優しさが伝わり嬉しくなった。
ーーそうだ。彼はこういう人だ
彼に一歩近寄り小袋から中身を取り出す。
「よかったら受け取って下さい。感謝の印です」
想いは伝えない事にした。今はそれでいいと思ったからだ。彼は黙って受け取りお菓子の山にそれを埋めた。
「それだけか?」
「え?」
「これで終わりか?」
「え、あの、はい…」
「言わねぇんだな」
「えっと何を…」
「てめぇは俺に惚れてんだろ」
それを聞いて心臓が一瞬で早鐘のように速くなった。
「な!えっ!」
「何度も言うが俺を誰だと思っていやがる」
彼には既に自分の気持ちに気付かれていたということに驚きを隠せないが確かに彼はよく見ている。
「言うか言わねぇかどっちかにしろ」
ジロリと見下ろすその目は鋭く何でも見透かされているような気がした。
「わ、たしは……好き、です…リヴァイ兵長に惚れてます…」
ーーあぁ…言ってしまった……
言うはずもなかったその言葉は彼に誘導されるような形で言ってしまった。恥ずかしくて泣きそうになるので俯く。
「そうか」
「で、でも!だからと言って何かを望んではいません!兵長の迷惑にはなりたく……っっ!」
話している途中で手を引かれ彼の胸に吸い寄せられた。そして耳元に彼の息遣いが聞こえ顔がすぐ側にあるのが分かると鼓動が更に速くなった。
「残念だったな。俺の方が望んでる」
耳元で話す彼の声が直接耳に響き脳が痺れ体が震えた。そのまま彼は耳を甘噛みし舐める。
「んっ……」
「このまま味わいてぇところだが時間だ。早く支部へ戻れ」
彼は体を離すと何事もなかったかのようにこちらを見ている。
「今度会った時は覚悟しておけ」
そう言って頭に手を乗せるとスタスタと歩いて行ってしまった。
何が起きたのか分からなかった。
その場に座り込むとボーっと彼が歩いて行った先を見つめていた。
ーー私が何も望んでないって言ったら彼は望んでる、って言ったよね…それに今度覚悟しとけって、それってつまりはそういう……
そこでようやく理解し顔を一気に赤くさせ体も火照るのを感じた。
その日の仕事終わりの兵舎。
同期の彼女の元へ向かった。
「ハル!」
姿を見かけ名前を呼ぶと駆け寄る。
側に来ると
ーー何年一緒にいると思ってるのよ
クスリと小さく笑うと彼女の言葉を待つ。
「それが…寝てたからそのまま置いてきちゃった…」
「えっ?!分隊長が寝てた?!」
あの隙を見せないような分隊長が寝ていたとはなんとも珍しいことがあるものだと心底驚いた。
ーーまぁでも彼も人間だものね
しかし寝ていたという事は気持ちは伝えられてないということ。それを言うと彼女は「これでいい」と言っていた。何やら慌てている様子が気になったがそれよりも伝えられなかった気持ちの事を考えていた。
ーーでもそれじゃあ…
ここ調査兵団にいる限りいつ命が消えてもおかしくない。だから彼女には気持ちを伝えてほしいものだが無理強いしては意味がない。彼女の事を思い切なくなる。
「サラはどうだったの?」
考えごとをしていたら彼女の方から話しかけられた。
今日の事を思い出して頬を染めてしまう。
「その…うまくいったみたい?」
「なんで疑問形なの」
クスクスといつも通りに笑う彼女を見て安堵した。
「気持ちは言うつもりなかったんだけど…でも兵長から『俺に惚れてんだろ』って言われて…だから、彼に促される形で気持ちを伝えたの」
「兵長の方から…」
同期は目を見開いて驚いていた。
それもそうだ。彼のそういう色恋沙汰の話なんて聞かないし、面倒くさいと興味がなさそうに見えるからだ。
「でも何も望まないって伝えたら、自分の方が望んでるって言われて…それってやっぱり…」
「そういうことなんだと思うよ?兵長もサラのことを想っていたのね」
良かったね、とハルは抱きしめて喜んでくれた。それからは彼女とこの行事について話し、談笑して楽しい時間を過ごした。
ーーーーーー
「おい。何をふざけてやがる」
「いえ!ふざけてなんか!」
「だったらいいだろ」
「それは無理です!」
自分は今彼の自室に呼ばれて来ていた。
部屋に入った途端勢いよく手を引かれベッドへ連れて来られたのだが驚きのあまり彼を押して堪らず逃げてしまった。
後ろには壁、目の前には彼が立っている。
「面倒くせぇ…」
彼は壁に手をついて顔を近づけてきた。
"覚悟しておけと言ったはずだが?サラ 。俺はお前がほしい"
耳元で囁かれ耳と顔に熱が集まる。
するとこの間のように耳を甘噛みされ声が漏れる。
「そういや言ってないことが一つある」
耳から顔を離して視線が交わるが彼の瞳は熱を帯びており真剣な眼差しに鼓動が速くなった。
「一度しか言わねぇからよく聞け」
彼はそう言って頬に手を添え撫でるがその手つきは妖しく動く。
「俺もサラを好いている。誰よりもな」
覚えておけ、と彼が言うのでコクリと頷くと彼の瞳が揺れたと思ったら唇が塞がれていた。
2月14日。
お菓子と共に想いを伝える日。
あの日伝えた想いは数日後に彼の想いとお菓子よりも甘く濃厚なひとときによって返される。
想いは手作りのお菓子と共に……
想いは手作りお菓子にー Levi ー
これを読んだ皆様にも素敵な日になりますように。
fin.
2019.2.8
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