守られる存在

  • 雨上がりの静寂。
    レイジの視線が、あなたを静かに捉えている。

  • レイジ・コトブキ

    隠し事は、もうしないこと

  • その言葉のあと。
    あなたはゆっくりと息を吸った。

  • 依頼人

    ……分かりました

  • 膝の上で握っていた指をほどく。

  • 依頼人

    私の名前は――

  • 一瞬だけ、迷い。
    けれど逃げない。

  • 依頼人

    ……ハルカナナミです

  • 静かに、はっきりと。
    その名が、部屋に落ちる。
    ランマルの赤い瞳がわずかに揺れた。

  • ランマル・クロサキ

    ナナミ……

  • 低く繰り返す。
    レイジは穏やかに微笑む。

  • レイジ・コトブキ

    日本の名前だね

  • 依頼人

    はい。両親が日本人で……こちらで音楽を学んでいました

  • 音楽、という言葉にランマルの視線がわずかに鋭くなる。

  • ランマル・クロサキ

    劇場って言ったな

  • 依頼人

    はい。作曲の勉強で出入りしていて

  • レイジの指先が封筒の封蝋に触れる寸前で止まる。

  • レイジ・コトブキ

    “持っているだろう”と言われたんだね

  • あなたは頷く。

  • 依頼人

    でも、何のことか分からなくて

  • ランマルが窓の外をもう一度確認する。

  • ランマル・クロサキ

    ……音楽絡みか

  • その声は低いが、先ほどよりも明確に“守る側”の響きがある。
    レイジがあなたを見る。

  • レイジ・コトブキ

    ハルカさん

  • 名前で呼ばれる。
    やわらかく。
    自然に。
    胸の奥が、少しだけ熱くなる。

  • レイジ・コトブキ

    君は、誰かに何かを託された可能性がある

  • 依頼人

    私に……?

  • ランマル・クロサキ

    無自覚だからこそ価値があるものもある

  • ランマルが短く言う。

  • ランマル・クロサキ

    狙われてんのは事実だ

  • そのまま、あなたへ視線を向ける。
    まっすぐ。

  • ランマル・クロサキ

    ここにいろ

  • 命令のようでいて、違う。
    選択肢を与えない強さ。
    でも、拒絶ではない。
    レイジが穏やかに続ける。

  • レイジ・コトブキ

    「安心して。ハルカさん」

  • また名前。

  • レイジ・コトブキ

    君を追う影の正体も、この封筒の意味も――必ず突き止める

  • あなたは初めて、はっきりと感じる。
    ここに来たのは間違いじゃなかった。

  • 窓の外。
    遠くで、何かが動いた。
    ランマルの目が鋭く光る。

  • ランマル・クロサキ

    ……来たな

  • 低い声。

  • レイジは微笑みを崩さない。

  • レイジ・コトブキ

    歓迎しようか

  • あなた――ハルカナナミは、
    知らないうちに大きな渦の中心へ足を踏み入れていた。

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