-
沈黙が落ちる。
あなたはゆっくりと息を吸った。 -
依頼人
……探してほしい人なんて、いません

-
ランマルの赤い瞳が鋭く光る。
-
ランマル・クロサキやっぱりな
-
低い声。
逃げ道を塞ぐ位置のまま動かない。 -
レイジは責めない。
ただ、静かに促す。 -
レイジ・コトブキでは、誰が追われているのかな?
-
あなたは顔を上げる。
震えは、まだ止まらない。 -
依頼人
……私です

-
空気が変わる。
ランマルがわずかに目を細める。
レイジの表情は変わらない。 -
レイジ・コトブキ誰に?
-
依頼人
分かりません

-
即答。
でも嘘ではない。 -
依頼人
三日前、劇場の裏口で……声をかけられました

-
指先が震える。
-
依頼人
“持っているだろう”って

-
ランマルが低く言う。
-
ランマル・クロサキ何をだ
-
あなたは迷う。
そして、バッグの奥から小さな封筒を取り出す。 -
開いていない。
古い紙。
封蝋が押されている。
見覚えのない紋章。
レイジの目がわずかに細まる。 -
レイジ・コトブキ開けていないんだね
-
依頼人
怖くて

-
正直な声。
-
ランマルが一歩前に出る。
封筒を奪うようには取らない。
ただ、手を差し出す。 -
ランマル・クロサキ貸せ
-
あなたは一瞬ためらう。
けれど、渡す。
ランマルは封蝋をじっと見る。 -
ランマル・クロサキ……ただの脅しじゃねぇな
-
低い呟き。
-
レイジが近づく。
あなたとランマルの間に自然に入る形。
でも守るのはあなたではなく、状況。 -
レイジ・コトブキ君はこれを受け取った後、追われ始めた?
-
依頼人
はい

-
レイジ・コトブキ具体的には?
-
依頼人
同じ足音が、毎晩

-
声が小さくなる。
-
依頼人
窓の外に影が

-
ランマルの顎がわずかに引かれる。
警戒の合図。
レイジは穏やかに微笑む。 -
レイジ・コトブキなるほど
-
封筒に触れない。
観察だけ。 -
レイジ・コトブキ君は誰かの“鍵”だ
-
あなたの背筋が冷える。
-
依頼人
鍵……?

-
ランマルが言う。
-
ランマル・クロサキ中身を知らねぇなら、尚更厄介だ
-
レイジがあなたをまっすぐ見る。
優しい瞳。
でも奥は鋭い。 -
レイジ・コトブキ今夜からここにいなさい
-
一瞬、理解が追いつかない。
-
依頼人
え……?

-
レイジ・コトブキ追われているなら、ひとりにするわけにはいかない
-
さらりと言う。
ランマルが低く付け足す。 -
ランマル・クロサキおれがいる
-
短い。
それだけで十分。
あなたの胸が、わずかに軽くなる。
レイジが柔らかく笑う。 -
レイジ・コトブキただし
-
その一言で空気が締まる。
-
レイジ・コトブキ隠し事は、もうしないこと
-
あなたはゆっくり頷く。
-
依頼人
試す様な真似をしてすみませんでした

-
窓の外。
雨は止んでいる。
けれど、闇は濃い。 -
ランマルがカーテンの隙間から外を確認する。
-
ランマル・クロサキ……いるな
-
小さく呟く。
あなたの心臓が跳ねる。
レイジは落ち着いた声で言う。 -
レイジ・コトブキ大丈夫
-
その声音は、不思議と揺らがない。
-
レイジ・コトブキここはコトブキ探偵事務所だ
-
ランマルが振り返る。
赤い瞳が静かに燃えている。 -
ランマル・クロサキ手ぇ出したら、ただじゃ済まねぇ
-
あなたは初めて気づく。
この場所はただの事務所じゃない。 -
ここは、
守る者と、見抜く者がいる場所。 -
そして今夜、
あなたはその中心に立っている。
タップで続きを読む