気まぐれ天使
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ユキちゃんと付き合ってから約半年、高校2年生になってもユキちゃんの可愛さは日に日に増していく一方、俺のユキちゃんへの気持ちもどんどん大きくなっていく。そして俺は今、人生最大の試練に直面している。そう、クラス替えや。今まで同じクラスやったのに急に一緒に居られへんとかあってたまるか。
そしてクラス替えの結果が気になり過ぎて今朝4時に目覚めた俺は、学校の門が開くまで校門前で待機し、朝1番で学校に来てクラス替えの貼り紙を確認している。
えっと、まずユキちゃんは2年2組…。そんで2組に宮侑の名前が…………あった!!!!
誰も居ない廊下で1人ガッツポーズをして声を上げればたまたま廊下を通りがかった守衛のおっちゃんに奇怪な目で見られた。でもそんなことはどうでもええねん。俺は、今年もユキちゃんとおんなじクラスになれたんや。と気分上々のままユキちゃんに同じクラスだったことをLINEで伝えてから朝練に向かう。
「侑、今日早いな」
「北さん!?もう来てたんすか」
「俺はいつもこの時間や。なんや侑機嫌ええな」
「ユキちゃんと同じクラスになれたんですよ!」
「そうか。そらええことやけど、浮かれすぎんようにせえよ」
「はい!」
やっぱ北さん厳しいなあ。でも今の俺は北さんの正論パンチも気にならない!今日はコンディション最高の日やな。
「あつむ、おはよう」
ああ気分良すぎてユキちゃんの声まで聞こえてきた。俺の頭の中お花畑すぎんか?まあユキちゃんの声がいつも聞こえるならそれはそれでええけど。はあ、ユキちゃん早よ部活に来おへんかな。
「あつむ!」
もう一度俺の名前を呼ぶ愛しい声と同時にグイッとジャージの裾を引かれてそちらを向くと、ちょっと頬を膨らませてムスッとした顔のユキちゃん。
あ、ほんまにユキちゃんや。なんでそんなに眉間に皺を寄せてるかわからへんけど、朝からかわええなあ。しかめっ面のユキちゃんをガバッと抱きしめてやると満足気に笑って頭をグリグリ押し付けて甘えてくるユキちゃん。ん"ん"このまま離したくない!!
「はざーっす……あいつら体育館の真ん中でなにやってんだよ」
「新学期早々、相変わらずのバカップルぶりでなによりやわ。俺も彼女欲しい!」
* * *
ガヤガヤ、、ガヤガヤ
なんだ?2年の棟の廊下がやたら騒がしい。いつもこんな騒がしかったやろか?新学期だからか?
それにしても、こっちはこっちである意味騒がしいなあ…。と俺は今年も同じクラスになったバカップルを横目に廊下の様子を観察する。明らかに女の子が多いような、あの靴の色だと新入生か…?なんで2年の棟にいるんやろ、ボケっとしながらそんなことを考えていると、突如耳を劈くような悲鳴が廊下に響き渡った。
「キャー!!」
うわ!なんや急に。って治?叫び声をあげる女子生徒の間を通り抜け、眠そうな顔をしてこのクラスに入ってくる治を見て色々察した。ああなるほど今の盛り上がりは、隣のクラスから治が出てきたから。
っって双子のファンかいな!!そして治はなんで廊下に出てきたんや!
「ツム、国語の教科書返せや」
「ああ、返すん忘れとったわ!すまんな!」
たった二言。双子が会話をするだけで更に煩くなる廊下。双子のやり取りを見れたファン達は歓喜に溢れている。相変わらず凄まじい人気…と若干の呆れと羨望の眼差しを双子へと向けると、双子は観客にいっさい興味を示さず互いを小突き合っている。それはもうガン無視である。そして眠そうに欠伸をする治は、おにぎりを片手に隣のクラスに戻った。その後も侑はユキちゃんと話すのに夢中で何も気になってない。いやあれは…気づいとらんのか、あえて無視しとるんかな。
あの子たちには侑の背中で隠れたユキちゃんのこと見えてへんのやろな。ユキちゃんにヘイトが向くんだけはちょっと心配やな。
「侑先輩!あの、これ作ったんで食べて下さい!」
うわあ、あの子勇者すぎんか。2年の教室に足を踏み入れたひとりの女子生徒、そして侑に差し出されるお弁当。
それに対してファンの子を見向きもせずに、1mmの反応と示さない侑。まじかアイツ、もうユキちゃん以外の情報シャットダウンかよ。対して、ファンの子も負けずにもう一度侑に声をかける。こっちもこっちで神経図太過ぎんか。しかし侑にそのしつこさは逆効果やろな…。
「あ"?なんやねん自分、そんなん要らんわ」
やっぱり。せっかくガン無視を決め込んでいたのに、ついに話しかけられたせいで侑の機嫌が悪くなる。
ユキちゃんと話してたときのふわふわした表情を一変させてものすごい剣幕で相手を睨む侑。こわすぎる。
女の子は驚きのあまり固まってしまって友達に回収されていた。侑の覇気に押されてか、朝の廊下騒ぎはこれにて終わりを迎えた。
侑の頭の中はバレーとユキちゃんしか入っとらんからな。思いっきり睨まれたファンの子にはちょっと同情するけど、まあしゃーないわな。
それにしてもユキちゃんは大丈夫なんやろか。ファンたちの圧力に気圧されてなければいいけど…なんて心配をした俺は休み時間、侑が忘れた教科書を隣のクラスに借りに行った隙に聞いてみた。
「ユキちゃん、双子のファンの子たちの勢いすごかったけど大丈夫か?」
「うん?まあ、あつむは私のこと大好きやし、私もあつむのこと大好きやから平気やで」
真顔で、何が心配なの?というユキちゃん。予想外のその返答に思わず目を丸くした。
侑の執着も異常やけど、ユキちゃんも大概やったの忘れとったわ。2人ともお互い以外目に入ってないのがよお伝わってくる。
「それならええけど、なんかあったら言いや」
「銀島くんは優しいね」
「え、そう…「おい、銀お前何照れとんねん」
…かな」
「あつむお帰りなさい」
「ただいまあユキちゃん」
侑怖ぇ。背後から刺されるんかっちゅうくらいゾクッとしたわ。ユキちゃんの声が聞こえた瞬間、別人かと見間違えるくらいのデレデレした表情しやがって、お前の表情筋どうなっとんねん。
侑の彼女ことユキちゃんはかなり頭がええ。それは1年のときから何となく思ってたけど最近はさらに顕著になってきた。
なぜなら、今ここで俺らはユキちゃんに勉強を教わっているから。現在テスト期間中、部活が休みでファミレスに集まった俺ら2年はマネージャーから勉強を教わるという青春イベント真っ只中である。
「ユキちゃん、この部分の翻訳ってこれで合ってる?」
「うん、ほぼ合ってるよ。ここはもうちょっと意訳しても良いかも」
「ユキちゃん、これ何で解けへんの?」
「おさむくん、まずは展開してみてや」
こうやって俺らが質問しても直ぐに答えてくれるし、説明もめっちゃわかりやすい。不得意な教科もなくオールマイティなユキちゃん、ほんまに頭がええんや。
一方で侑はというと、大好きなバレーが出来ないのと大嫌いな勉強をしなくてはならないという状況に憔悴しきって魂が抜けかけとる。
「あつむ、もう飽きてもうたんか?」
「ユキちゃん、、、俺、ユキちゃんが可愛すぎて集中できへんねん」
「何言うとんの、テストで困んのはあつむやで」
「うう、ユキちゃんいつもより厳しい…」
ついにユキちゃんに泣きつくも完全に勉強モードなユキちゃんにたじたじな侑。なんか北さんのような圧を感じるのは気のせいか。
* * *
うう…今日のユキちゃんは完全に勉強モードや。勉強モードのユキちゃんも可愛ええで、髪をサイドに結んどるのも集中して問題を解いとる姿も可愛ええ。やけど、俺に構ってくれへん。まあそりゃ勉強会やろ言うたんは俺やし、来週からのテストでやばい点取るわけにはいかんから俺らはユキちゃんに色々教えて貰わなあかんねんけど、ユキちゃんが俺以外の奴に勉強教えてるの目の前で見るの嫌や!勉強教えなあかんから仕方ないけど、距離がちょっと近いねんて!
無意識に机をバンバン叩いていたらしく周りから冷たい目で見られた。もう嫌やこの空間。
「あつむ、分からへんとこどこ?」
「ユキちゃん…分からへんとこが分からへん!!」
申し訳なさそうな顔をして俺の様子を伺うユキちゃん。こんな心の小さい男って思われたないのに。勉強が進まず今日全然ユキちゃんと会話の出来てない俺に構おうとしてくれるユキちゃんの優しさに涙目になる。やけど、ほんまに何を質問したらええかも分からへんねん!
「じゃあ一緒にこの問題解いて見よっか」
「うん…」
* * *
ユキちゃんの気遣いで先程からバンバンと机を叩いたり、鬱陶しい視線を俺らに浴びせ続けていた侑が大人しくなってようやく息をつく。涙目でユキちゃんユキちゃん連呼する侑に角名も治も呆れてんで。
けど、随分としょぼくれた様子だったのがユキちゃんに勉強を教わり始めて一気にだらしない表情になりよって。……いや待て、お前ユキちゃんの話聞いとるんか?目線が完全にユキちゃんの顔やねんけど。とりあえず解いてるはずの問題を見ろや。
「そしたら、これを代入…あつむ理解出来とる?」
「…ん!?で、できとるよ!ユキちゃんリップ替えたん?」
あつむ…と苦笑いのユキちゃん。それを見ていた俺らももう呆れるしかない。いやもう呆れとるけど。流石にユキちゃん怒るんやないか?大丈夫かな。どちらかというと見てる角名や治の方がキレそうやけど。
あ、ついに痺れを切らした治が立ち上がった。と思ったらユキちゃんが侑の頬っぺたにちゅっと軽く口付けた。…へ!?ユキちゃん、!?、?
「あ"」「おお」「んん!?」とそれを目撃した俺らが一斉に声を上げたあと、赤く染まった顔を両手で覆い「えっ」と乙女のような反応をする侑。
「ふふ、これでちょっとはやる気でた?」
「ユキちゃん、もっかいやってや!」
「ちゃんと勉強したらね」
うおおおおぉ!!!と効果音がつきそうなほど勢いよく問題集に向かう侑。さ、流石やなユキちゃん。侑の扱いが分かっとる。
よく見るとユキちゃんの顔も少し赤い。少し恥ずかしそうに侑に向かって「がんばって」とエールを送るユキちゃんのいじらしい姿に心を打たれた。かわええなおい!そしてくそ羨ましいなあああ!
「ユキちゃん、今の俺らへの嫌がらせか?」
「んー?やってあつむがヤキモチ焼くから」
「ほんと侑に甘いよねユキちゃん」
「せやで、もっと罵ってやってや」
「お前らうっさいねん!ユキちゃんに話しかけんな!俺に集中させろや!」
「うわ、さっきまで人の邪魔ばっかしてるお前に言われたくねえわ」
「ほんま人格ポンコツやな」
5/5ページ