気まぐれ天使
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「マネージャー?」
「おん」
「あつむはわたしにやって欲しい?」
「そりゃもちろん思っとる」
「じゃあやってみる」
ええ、なにそれ、俺のお願いだからやってくれるの?
ユキちゃんと付き合うことになった翌日からバレー部はその話題で持ちきりやった。俺がベタ惚れやとかめっちゃ小さくて小動物みたいやとか部活入っとらんのかなとか頭ええとかそんなんばっか。
俺以外がユキちゃんの話しとるのがちょっと気に入らん。やけど「その子マネージャーやってくれへんやろか」という北さんの一言。そんで俺の気分はうなぎ登り。ユキちゃんがマネとか最高かよ。
とにかく、バレー部でユキちゃんにマネやって欲しいっちゅう話をしたら、さっきの答えや。ユキちゃん今日もかわええなあ。
「ユキちゃんありがとう!大好きや!!」
「ふふ、わたしも」
「ん゛ん゛」
「銀、あのバカップルどうにかして」
「え?俺?なんであんな羨ましい雰囲気に突っ込まなあかんねん、惨めすぎるやろ」
* * *
「1年、水無月ユキです。よろしくお願いします。」
ぺこりとお辞儀をする水無月さん、を囲む図体のでかいバレー部員たち。絵面がヤバすぎるだろ。と角名は思った。てか水無月さんってまじで小さいな。身長いくつくらいなんだろう。
彼女のことは侑の話でしか聞いたことなかったし、遠目で見たことはあるけどこうやってちゃんと顔見るのは初めてだな。思った以上に可愛い。それに想像以上の小動物感。ああ、侑の顔がめっちゃ溶けてる、治の顔が死んでる。なにこれおもしろ。
うわ、ドリンクのカゴ重そうだな。部活の休憩中、ふと新しいマネージャーの方を見た角名はそんなことを思った。ねえ、なんで2段重ねにして持っての。明らかに前見えてないよなあれ。ちょっとふらふらしてるし。まあ、一生懸命運んでる姿だけで癒されるんだけど。あ、ボール踏みそうと思ったそのとき。
突如俺の横を駆け抜ける風。なにごと。
「ユキちゃん!ボール気いつけや?」
「あ、気付かなかった。ありがとう」
「おん、半分持つな?」
侑が速すぎて風かと思った。さっきまで治と喧嘩してたよね?何あれセコム?
水無月さんの目線に合わせてかがみながら諭すように優しく注意をする侑。いや保護者か?侑って実は世話焼きタイプなの?
「はい、あつむ」
「ユキちゃんありがとう!!」
「はい、おさむくん」
「お、おお、ありがとうな」
ドリンクを渡されて何故か動揺する治。ああ、あれか侑の目線が痛いのか。てかあいつなんて顔してんだよ。デレデレしたり嫉妬したり心配したり部活中に忙しいやつだな。それに対して水無月さんはあんまり表情豊かではないような。侑といるときは表情が柔らかい印象だけど、そうじゃないときはどちらかというと無表情。たまにふわっと笑うのがギャップだよな。
* * *
「信介おつかれさん」
「おう、アランもな」
練習終了後、北の目にはドリンクボトルを洗うマネージャーが目に入った。3年生が引退して部活も新体制になった。新しい部長として、マネージャーの存在についても考えていた。今までマネがいなくとも何とかなっていたが、北としてはやはりいた方が選手がバレーの練習にもっと注力できるのではないかと思っていた。しかしながら、クセの強い宮兄弟が気だがかりでマネージャー募集に一歩踏み切れないでいた北。そんなとき、最近侑に彼女ができたという朗報が届いたのだ。だからチャンスとばかりに侑に提案をした。とりあえずマネ募集の話だけして、あわよくば見学にでも来てくれへんかなくらいに思ってたが、翌日すぐにマネやります。と体育館に入ってきた新しいマネジャー。確かに侑の言った通りかわええしええ子やった。いきなりのスタートでちょっと心配やったけど普通に優秀なマネージャーがバレー部に来てくれたことに北は安堵した。
「今日マネの仕事やってみてどうやった?」
「楽しかったです」
「そうか、なら良かったわ。また明日からもよろしゅうな」
「はあい」
緩く間延びした返事をする水無月さん。ちゃんと返事をしろと言いたくなったが、楽しかったとふわふわ笑う顔を見てまあええかと思ってしまった。それに、初日とはいえマネージャーの仕事はよく出来ていた。随分とちっこくて可愛らしいマネージャーが入ったもんや。
* * *
「あれ、日誌なんであんな上にあんの」
今日の試合結果を記録しようと日誌を探していたユキは、部室のロッカーの上に置かれているそれを見つけた。
練習試合を終えた北は、新しいタオルを取るために部室へ訪れた。すると彼の目に部室の近くでうろちょろしている新しいマネージャーがの姿が飛び込んできた。
水無月さんは、なんで脚立なんかを運んでんのやろ。まてまて、部室の中に脚立はおかしないか?
自分よりも先に部室に入って行くのを見ながら、同じく部室に用がある北も、数歩遅れて部室に入る。
「水無月さん、なんで脚立なんか…って危ないやろ!」
「うわ!北さん、おったんですか」
「うわ!やない、そういうときは誰か呼びや」
「はあい」
普通にびびったわ。マネージャーはロッカーの1番上に置かれた日誌を取ろうとしたようだった。脚立を使っても微妙に届かず脚立の上でまさかのジャンプ。さっきまで優秀なマネやとか思っとったけど、思ったより危なっかしいやつやな。
「ユキちゃん!なんて危なっかしいことしとんねん!ほんま怪我がなくて良かったわ。」
「うん、日誌取りたくて」
「そんなとこもかわええけど、そういうときは俺を呼んでや?すぐに駆けつけたるから」
「うん」
(北パパとあつむママ?)
(え?ユキちゃんなんて言うた?)
(んふふ、なんでもないで)
(なんでもないんか、かわええな)