徒然なるままに
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徒然なるままに
ゴールデンウィーク、大学生になってから東京で一人暮らしをしていた私は親に言われて実家に帰ってきていた。特に予定は入ってなかったし、私がやってるバイトもゴールデンウィークは休みだったから、特になんの躊躇もなく私は実家に帰ってきた。とはいえ、相変わらず私は暇人である。
帰ってきたのは良いものの、妹は友達と遊び歩いているのでまだ帰省する気はないようだし、ママは普通に仕事がある。パパはゴールデンウィーク中は8日ほどの連休みたいだけど、趣味のバイクで一人ドライブするみたいなので、私はこの無駄に広い家で今日も一人で過ごすことになる。
布団の中でぼけーっと天井を見ること1時間。スマホから聞こえるのは本日3回目のアラーム音。首を動かしてスマホの画面を見れば10:00という表示が見えた。
(ああまた、今日も寝坊だよ。でも布団の中が心地よくて動きたくないし、まだ布団にいてもいいかな。いやでも流石に…)
なんて既に自分以外誰も居ない家の中で悶々と考えた末、スマホから再びアラームが鳴ったので私はようやく起床した。時刻は10時30分。もう一度スマホを見てママからLINEが2件届いていることに気がついた。
ひとつはいつも通り「おはよう」の連絡とひとこと、「風呂掃除してくれても良いんだよ」というメッセージ。そしてもうひとつの吹き出しには「お昼ご飯、冷蔵庫に入ってるから」の文字があった。それを見てほんのりと口角を上げた私は勢いよく部屋を飛び出しキッチンまで走る。目的は冷蔵庫の中にあるお弁当の中身を確認すること。
(今日のお弁当は…ねぎ塩豚丼だ!!)
コレはママが作るお弁当の中でも私が好きな方のメニューだったので私の気分は上々。
さっそく今日のお昼が少し楽しみになったところで、私は冷蔵庫の下段にあるパックのピーチティー手に取ってコップに注ぐ。起きたばっかりだし、とりあえず喉が渇いた。紅茶の中でもピーチティーは群を抜いて好きだ。
(まだ封の空いてないのもあるし、ストックも十分あるからいっぱい飲んじゃお)
冷蔵庫の脇にはまだ開封されてない1リットルの紙パックのピーチティーが2本並んでいる。これは昨夜パパが買ってきてくれたものだ。
私のパパはいつも買い物する時に「なにか買うものある?」と連絡をくれる。とはいえ、お願い通りのものを買ってくる確率は40パーセント程度だけど。だいたいお願いしたものとちょっと違うものを買ってくることに定評のある私のパパだが、先週お願いした時にはこのピーチティーを間違えずに買ってきてくれたので私は満足である。というわけでパパは私の好きな飲み物を学習したらしい。昨日同じピーチティーをもう二パック買ってきてくれた。だからこんなにストックがある。
さてと、溢れるくらいのピーチティーが注がれたコップを持ってリビングに行くと、壁いっぱいの大きさの窓から光がめいっぱい差し込んでいた。レースカーテン越しに見える空には雲ひとつない。今日はいい天気だし、家の中も少しは暖かくなりそう。そう思いながら私は大きな炬燵に潜りスイッチを押した。ジーーーっという音が鳴って炬燵の火が点く。5分もすれば良い感じの暖かさになるだろう。5月といっても 、特にこの家の、この無駄に広いリビングは気密性が低いのか外気温に比べて寒いのだ。
はあー極楽極楽。実家の炬燵がニューバージョンになったのはつい最近らしい。今までよりも性能アップしたこの炬燵は温度調節もバッチリ完璧にできてしまうからいただけない。まだ炬燵が仕舞われてなくて良かった。
それに…家族がいたら皆して炬燵の電源を切れ!と言ってくるものだから鬱陶しくてしょうがない。私だってわざわざ無駄に電気を使ってるわけじゃない。私は寒いから炬燵をつけてるというだけ。文句を言われる筋合いはない。まったく代謝の良い奴らには寒がりの気持ちは分からないのだ。
炬燵に腹まで突っ込んで寝転がり、首の下辺りにクッションを挟んでベストポジションを見つけたらうつ伏せになってスマホを見る。まずはSNSを開きフォローしている人たちのつぶやきをひと通りチェック。そしたら次に開くのはYouTubeだ。まず見たかったのは好きなアーティストのリアクション動画。
朝起きてからゆっくり見ようって思ってた動画があったような…と思いYouTubeにログインすると、最初に出てきたのは某お笑い芸人のチャンネルのサムネイル。投稿日2ヶ月前。再生回数を見ると600万弱。ということはまあかなりバズった動画と言えそうだ。私はさっそくその動画をクリックした。
――12時のチャイムが聞こえてきて慌てて顔を上げた。このチャンネルが面白くてついつい過去の動画を遡っていたら1時間も経ってしまった。
とりあえず、楽しみにしていたお弁当を食べよう。昼を過ぎてようやく炬燵から出た私は冷蔵庫からお弁当を取り出した。蓋を開けてレンジで1分ほど温めれば出来上がり。箸をだして、ピーチティーを補充して、温まったお弁当を持って席に着けば、ものの数分でお弁当の中身はなくなった。
一日中家でグータラ生活をしている私に、わざわざお弁当を作って仕事へ向かうのが私のママである。もう大学生も後半に差し迫っている私に対してつくづく過保護なのが私のママなので、私は実家に帰ってくる度に甘えてしまう。けどこれは仕方がない。パパも、休みの日はいつも夜ご飯を作ってくれるので私は特にやることなし。だから一日中リビングでぐーたらする。これは甘やかしてくる両親が悪いのだ。私は悪くない。
食べ終わった弁当箱を洗い終えて、せめてもの良心で私はお風呂場へ向かった。とりあえずお風呂掃除くらいしとかないと、流石に帰ってきたママに何か言われそうだから。
お風呂の掃除を終えたら次は自分のパソコンをリビングのテーブルまで持ってくる。パソコンの電源をONにするのと同時にテレビの電源ボタンも押し込んだ。
テレビでYouTubeを開き、好きなゲーム配信者の生放送を流す。そしてパソコンでは今流行りのRPGゲームを起動させた。スマホで攻略記事を検索すれば準備完了。テレビ、パソコン、スマホ。これぞ必殺三刀流である。ちなみにこれは私のパパもよくやっている。
夕方、パパより先にママが帰ってきた。慌てて部屋の電気を点けてから、もう画面を閉じて使っていないパソコンを急いで定位置に戻した。そしてスマホを片手に炬燵へ潜る。
するとママは私を外に連れ出そうと声をかけてきた。どうやら今から"ばぁば"の家へ行くらしい。それは、確かに行かないと。私も久しぶりにばぁばに会いたいと思ってたから、思ったよりも重い腰がスムーズに上がった。
ばぁばの家に着く直前、コンビニの前で車が止まった。車内でスマホをいじっていた私は、チラリと窓の外を見て目線をデジタル書籍に戻す。
そんな私を見て、なにか飲み物を買っていったら?とママが言うので私は頷いて車を出た。だってばぁばの家の冷蔵庫には水しかないから。たとえ何か飲み物があったとて、どこからかもらってきたオレンジやリンゴのフルーツジュースのみ。正直そこまで好きじゃないので、全ていらないと答えるとあっついお茶が出てくる。
だからコンビニで自分用のジュースを買うのはあり。私は期間限定のピーチティーが飲みたい。
と思ってたのに…。そのコンビニには目当てのものが見つからなかった。心の中で落ち込んだ私の心境を知ってか知らずか、すかさずママがコレならあるよ!と言って指さした先には、初めて見るモモジュースがズラリと並んでいた。違う、そうじゃないんだよ。それじゃばぁばの家にあるフルーツジュースとあんまり変わらないってば…。
というわけで結局ストレートの紅茶を買ってばぁばの家へ行けば、さっそくばぁばが私がいることに驚いて、予想通りの反応をしてくれた。
どうやら ばぁばは唐揚げと焼きそばを作って私たちを待っていてくれたらしい。 焼きそばはママの大好物だから、あの大量の焼きそばは全部ママの夕食。ちなみに焼きそばがママの大好物であるのを知ったのは割と最近だった。その時の衝撃といったらまさに背後に雷が落ちたかのようだったのをよく覚えている。ばぁばの作る料理はいつも量が多いから、食べ切るのが大変そうだった。一方で私のためにばぁばが作ってくれたのは鳥の唐揚げ。私たち姉妹はばぁばの作る唐揚げが大好きである。いつからか分からないけど、ずっと前に私たちがそう言ったのをきっかけにして、ばぁばの家に私たちが行く時はいつもこの唐揚げがある。実家に帰ってくる目的の一つがこれだと言っても過言では無い。
家に帰ればもうパパが帰ってきていた。とりあえず上着をクローゼットにしまって手を洗いうがいをササッと済ませて滑り込むように炬燵へ入ればさっそくパパが"いつもの"問いかけをしてくる。
「今日はどうだった?」
どうだった、とは。私が普段自分から外出しないことを知ってるクセにパパは毎度毎度こう質問してくる。いったい何を聞きたいのか、ただ会話をしたいだけなのか、たぶん私のパパは特に何も考えてないんだろうけど、とりあえず「普通」と答えればパパは「ふーん」という返事をしてパソコンに目を向けた。
帰宅してすぐに家の片付けを始めたママだがようやくキリがついたようで、リビングでくつろぐパパと私の間に座った。ママがリモコンを手に取る。あっ と私とパパが反応してリモコンを目で追う。20時からは私も見たいバラエティがあるのに。そんな意味を込めて「あーー!」と少し大きな声を出せばパパと被った。おいパパ、お前に関してはさっきまでパソコン見てただろふざけんな。
ママがリモコンを操作してチャンネルを回していく。中々気になる番組が見当たらないようで、リモコンを私にパスしてきた。なので私が番組表を開いて目当てのバラエティのチャンネルを確認するも、探しているタイトルが見つからない。「ソレ、多分今日やってないよ。スペシャル番組がやるから来週はお休みって前回言ってたでしょ」私が好きな番組を知っているママがそう言ったのを聞いて私は絶望した。
(な、なんだと…。今日ずっと楽しみにしてたのに…最悪だ。何の番組か知らないけど3時間スペシャルクソ!)
そして私はリモコンをパパにパスした。ようやく回ってきたリモコンを受け取り満足そうにビデオをつけるパパの様子を見て私は咄嗟にビデオを見るならドラマじゃなくてバラエティね!なんて声を出した。そんな時、ママのスマホに電話がかかってきた。「あ、珍しい」とはママが言うで画面を除けばそこに表示されている名前は妹のもの。
「もしもしどうしたの?珍しいね」
『今友達と解散したとこ。送った写真見た?』
そんな会話が聞こえてきて私は「スピーカーにして!」と声をかける。そして少し大きな声で妹の名前を呼べば、妹はやっほーなんて返事をくれた。妹の声が聞けて喜んでいれば、今度はママの隣に座るパパが喋りだした。いつも通り「パパもいるんだよー!!」と。
すると妹はパパの声が聞こえないのかガッツリ無視をして先程の写真の話を続けた。妹がママに送った写真とは、友達と遊んだ時に撮った自撮りのことだった。ママがLINEの会話から写真を見つけて拡大すれば、私とパパも同時に写真を覗き込む。
うん、可愛い。妹が一番可愛い。その服似合ってるね。妹が一番顔が小さい。髪型良い感じ。妹が一番大人っぽい。と私たちが同時に喋り始めれば妹は「でしょ?」と満足そうに笑った。
私の妹は3日後に帰省するらしい。帰ったらカラオケ行かない?最後に妹がそんな話をするので私は大きく頷いた。そんな時、何か甘いものが食べたいとパパが立ち上がってキッチンへ向かったので、ママが追加でデザートを持ってくるように催促する。
パパがデザートを持ってくるのを待っていれば「そういえば風呂洗ってくれたの?」と思い出したようにママが私に言った。そのセリフに私はしめしめと顔に満面の笑みを浮かべる。その通り。ちゃんとお風呂洗っといたんだからね、そんな気持ちで頷けばママは笑って「ありがとう」というのだ。やっぱり私のママは私に甘い。
私は東京での気ままな一人暮らしを気に入っているけど、やっぱり実家に帰ってくるのも悪くない。
ゴールデンウィーク、大学生になってから東京で一人暮らしをしていた私は親に言われて実家に帰ってきていた。特に予定は入ってなかったし、私がやってるバイトもゴールデンウィークは休みだったから、特になんの躊躇もなく私は実家に帰ってきた。とはいえ、相変わらず私は暇人である。
帰ってきたのは良いものの、妹は友達と遊び歩いているのでまだ帰省する気はないようだし、ママは普通に仕事がある。パパはゴールデンウィーク中は8日ほどの連休みたいだけど、趣味のバイクで一人ドライブするみたいなので、私はこの無駄に広い家で今日も一人で過ごすことになる。
布団の中でぼけーっと天井を見ること1時間。スマホから聞こえるのは本日3回目のアラーム音。首を動かしてスマホの画面を見れば10:00という表示が見えた。
(ああまた、今日も寝坊だよ。でも布団の中が心地よくて動きたくないし、まだ布団にいてもいいかな。いやでも流石に…)
なんて既に自分以外誰も居ない家の中で悶々と考えた末、スマホから再びアラームが鳴ったので私はようやく起床した。時刻は10時30分。もう一度スマホを見てママからLINEが2件届いていることに気がついた。
ひとつはいつも通り「おはよう」の連絡とひとこと、「風呂掃除してくれても良いんだよ」というメッセージ。そしてもうひとつの吹き出しには「お昼ご飯、冷蔵庫に入ってるから」の文字があった。それを見てほんのりと口角を上げた私は勢いよく部屋を飛び出しキッチンまで走る。目的は冷蔵庫の中にあるお弁当の中身を確認すること。
(今日のお弁当は…ねぎ塩豚丼だ!!)
コレはママが作るお弁当の中でも私が好きな方のメニューだったので私の気分は上々。
さっそく今日のお昼が少し楽しみになったところで、私は冷蔵庫の下段にあるパックのピーチティー手に取ってコップに注ぐ。起きたばっかりだし、とりあえず喉が渇いた。紅茶の中でもピーチティーは群を抜いて好きだ。
(まだ封の空いてないのもあるし、ストックも十分あるからいっぱい飲んじゃお)
冷蔵庫の脇にはまだ開封されてない1リットルの紙パックのピーチティーが2本並んでいる。これは昨夜パパが買ってきてくれたものだ。
私のパパはいつも買い物する時に「なにか買うものある?」と連絡をくれる。とはいえ、お願い通りのものを買ってくる確率は40パーセント程度だけど。だいたいお願いしたものとちょっと違うものを買ってくることに定評のある私のパパだが、先週お願いした時にはこのピーチティーを間違えずに買ってきてくれたので私は満足である。というわけでパパは私の好きな飲み物を学習したらしい。昨日同じピーチティーをもう二パック買ってきてくれた。だからこんなにストックがある。
さてと、溢れるくらいのピーチティーが注がれたコップを持ってリビングに行くと、壁いっぱいの大きさの窓から光がめいっぱい差し込んでいた。レースカーテン越しに見える空には雲ひとつない。今日はいい天気だし、家の中も少しは暖かくなりそう。そう思いながら私は大きな炬燵に潜りスイッチを押した。ジーーーっという音が鳴って炬燵の火が点く。5分もすれば良い感じの暖かさになるだろう。5月といっても 、特にこの家の、この無駄に広いリビングは気密性が低いのか外気温に比べて寒いのだ。
はあー極楽極楽。実家の炬燵がニューバージョンになったのはつい最近らしい。今までよりも性能アップしたこの炬燵は温度調節もバッチリ完璧にできてしまうからいただけない。まだ炬燵が仕舞われてなくて良かった。
それに…家族がいたら皆して炬燵の電源を切れ!と言ってくるものだから鬱陶しくてしょうがない。私だってわざわざ無駄に電気を使ってるわけじゃない。私は寒いから炬燵をつけてるというだけ。文句を言われる筋合いはない。まったく代謝の良い奴らには寒がりの気持ちは分からないのだ。
炬燵に腹まで突っ込んで寝転がり、首の下辺りにクッションを挟んでベストポジションを見つけたらうつ伏せになってスマホを見る。まずはSNSを開きフォローしている人たちのつぶやきをひと通りチェック。そしたら次に開くのはYouTubeだ。まず見たかったのは好きなアーティストのリアクション動画。
朝起きてからゆっくり見ようって思ってた動画があったような…と思いYouTubeにログインすると、最初に出てきたのは某お笑い芸人のチャンネルのサムネイル。投稿日2ヶ月前。再生回数を見ると600万弱。ということはまあかなりバズった動画と言えそうだ。私はさっそくその動画をクリックした。
――12時のチャイムが聞こえてきて慌てて顔を上げた。このチャンネルが面白くてついつい過去の動画を遡っていたら1時間も経ってしまった。
とりあえず、楽しみにしていたお弁当を食べよう。昼を過ぎてようやく炬燵から出た私は冷蔵庫からお弁当を取り出した。蓋を開けてレンジで1分ほど温めれば出来上がり。箸をだして、ピーチティーを補充して、温まったお弁当を持って席に着けば、ものの数分でお弁当の中身はなくなった。
一日中家でグータラ生活をしている私に、わざわざお弁当を作って仕事へ向かうのが私のママである。もう大学生も後半に差し迫っている私に対してつくづく過保護なのが私のママなので、私は実家に帰ってくる度に甘えてしまう。けどこれは仕方がない。パパも、休みの日はいつも夜ご飯を作ってくれるので私は特にやることなし。だから一日中リビングでぐーたらする。これは甘やかしてくる両親が悪いのだ。私は悪くない。
食べ終わった弁当箱を洗い終えて、せめてもの良心で私はお風呂場へ向かった。とりあえずお風呂掃除くらいしとかないと、流石に帰ってきたママに何か言われそうだから。
お風呂の掃除を終えたら次は自分のパソコンをリビングのテーブルまで持ってくる。パソコンの電源をONにするのと同時にテレビの電源ボタンも押し込んだ。
テレビでYouTubeを開き、好きなゲーム配信者の生放送を流す。そしてパソコンでは今流行りのRPGゲームを起動させた。スマホで攻略記事を検索すれば準備完了。テレビ、パソコン、スマホ。これぞ必殺三刀流である。ちなみにこれは私のパパもよくやっている。
夕方、パパより先にママが帰ってきた。慌てて部屋の電気を点けてから、もう画面を閉じて使っていないパソコンを急いで定位置に戻した。そしてスマホを片手に炬燵へ潜る。
するとママは私を外に連れ出そうと声をかけてきた。どうやら今から"ばぁば"の家へ行くらしい。それは、確かに行かないと。私も久しぶりにばぁばに会いたいと思ってたから、思ったよりも重い腰がスムーズに上がった。
ばぁばの家に着く直前、コンビニの前で車が止まった。車内でスマホをいじっていた私は、チラリと窓の外を見て目線をデジタル書籍に戻す。
そんな私を見て、なにか飲み物を買っていったら?とママが言うので私は頷いて車を出た。だってばぁばの家の冷蔵庫には水しかないから。たとえ何か飲み物があったとて、どこからかもらってきたオレンジやリンゴのフルーツジュースのみ。正直そこまで好きじゃないので、全ていらないと答えるとあっついお茶が出てくる。
だからコンビニで自分用のジュースを買うのはあり。私は期間限定のピーチティーが飲みたい。
と思ってたのに…。そのコンビニには目当てのものが見つからなかった。心の中で落ち込んだ私の心境を知ってか知らずか、すかさずママがコレならあるよ!と言って指さした先には、初めて見るモモジュースがズラリと並んでいた。違う、そうじゃないんだよ。それじゃばぁばの家にあるフルーツジュースとあんまり変わらないってば…。
というわけで結局ストレートの紅茶を買ってばぁばの家へ行けば、さっそくばぁばが私がいることに驚いて、予想通りの反応をしてくれた。
どうやら ばぁばは唐揚げと焼きそばを作って私たちを待っていてくれたらしい。 焼きそばはママの大好物だから、あの大量の焼きそばは全部ママの夕食。ちなみに焼きそばがママの大好物であるのを知ったのは割と最近だった。その時の衝撃といったらまさに背後に雷が落ちたかのようだったのをよく覚えている。ばぁばの作る料理はいつも量が多いから、食べ切るのが大変そうだった。一方で私のためにばぁばが作ってくれたのは鳥の唐揚げ。私たち姉妹はばぁばの作る唐揚げが大好きである。いつからか分からないけど、ずっと前に私たちがそう言ったのをきっかけにして、ばぁばの家に私たちが行く時はいつもこの唐揚げがある。実家に帰ってくる目的の一つがこれだと言っても過言では無い。
家に帰ればもうパパが帰ってきていた。とりあえず上着をクローゼットにしまって手を洗いうがいをササッと済ませて滑り込むように炬燵へ入ればさっそくパパが"いつもの"問いかけをしてくる。
「今日はどうだった?」
どうだった、とは。私が普段自分から外出しないことを知ってるクセにパパは毎度毎度こう質問してくる。いったい何を聞きたいのか、ただ会話をしたいだけなのか、たぶん私のパパは特に何も考えてないんだろうけど、とりあえず「普通」と答えればパパは「ふーん」という返事をしてパソコンに目を向けた。
帰宅してすぐに家の片付けを始めたママだがようやくキリがついたようで、リビングでくつろぐパパと私の間に座った。ママがリモコンを手に取る。あっ と私とパパが反応してリモコンを目で追う。20時からは私も見たいバラエティがあるのに。そんな意味を込めて「あーー!」と少し大きな声を出せばパパと被った。おいパパ、お前に関してはさっきまでパソコン見てただろふざけんな。
ママがリモコンを操作してチャンネルを回していく。中々気になる番組が見当たらないようで、リモコンを私にパスしてきた。なので私が番組表を開いて目当てのバラエティのチャンネルを確認するも、探しているタイトルが見つからない。「ソレ、多分今日やってないよ。スペシャル番組がやるから来週はお休みって前回言ってたでしょ」私が好きな番組を知っているママがそう言ったのを聞いて私は絶望した。
(な、なんだと…。今日ずっと楽しみにしてたのに…最悪だ。何の番組か知らないけど3時間スペシャルクソ!)
そして私はリモコンをパパにパスした。ようやく回ってきたリモコンを受け取り満足そうにビデオをつけるパパの様子を見て私は咄嗟にビデオを見るならドラマじゃなくてバラエティね!なんて声を出した。そんな時、ママのスマホに電話がかかってきた。「あ、珍しい」とはママが言うで画面を除けばそこに表示されている名前は妹のもの。
「もしもしどうしたの?珍しいね」
『今友達と解散したとこ。送った写真見た?』
そんな会話が聞こえてきて私は「スピーカーにして!」と声をかける。そして少し大きな声で妹の名前を呼べば、妹はやっほーなんて返事をくれた。妹の声が聞けて喜んでいれば、今度はママの隣に座るパパが喋りだした。いつも通り「パパもいるんだよー!!」と。
すると妹はパパの声が聞こえないのかガッツリ無視をして先程の写真の話を続けた。妹がママに送った写真とは、友達と遊んだ時に撮った自撮りのことだった。ママがLINEの会話から写真を見つけて拡大すれば、私とパパも同時に写真を覗き込む。
うん、可愛い。妹が一番可愛い。その服似合ってるね。妹が一番顔が小さい。髪型良い感じ。妹が一番大人っぽい。と私たちが同時に喋り始めれば妹は「でしょ?」と満足そうに笑った。
私の妹は3日後に帰省するらしい。帰ったらカラオケ行かない?最後に妹がそんな話をするので私は大きく頷いた。そんな時、何か甘いものが食べたいとパパが立ち上がってキッチンへ向かったので、ママが追加でデザートを持ってくるように催促する。
パパがデザートを持ってくるのを待っていれば「そういえば風呂洗ってくれたの?」と思い出したようにママが私に言った。そのセリフに私はしめしめと顔に満面の笑みを浮かべる。その通り。ちゃんとお風呂洗っといたんだからね、そんな気持ちで頷けばママは笑って「ありがとう」というのだ。やっぱり私のママは私に甘い。
私は東京での気ままな一人暮らしを気に入っているけど、やっぱり実家に帰ってくるのも悪くない。
徒然なるままに
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