ランバド酒場事件
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身体の弱いユキは基本的に本を読んだり料理をしたりなど、家の中で静かに過ごしていることが多かった。ユキは自分が虚弱体質であることは自覚しているし、体力もないので自分の外出が周りに迷惑をかけると思っていて自ら外出しようとしない。ティナリも自分が側にいられるときじゃないと外出させないし、ティナリ自身忙しい身であるため外出させてあげられることも少ない。
しかし、ずっと家に篭っているのも窮屈に感じるんじゃないですか?という一人のレンジャーの発言を発端として、最近はティナリを含め、セノやコレイなど、友達から外出を誘われることが増えてきていた。
最近、セノから七星召喚について熱弁されて興味を持ったユキ。今日もセノに誘われて、彼がいつも友人たちと七星召喚をやっているランバド酒場に訪れていた。
セノがユキを誘うときは彼女の知り合いしか居ないときのみ。今日のメンバーはセノ、アルハイゼン、カーヴェだ。
—ランバド酒場事件
セノとカーヴェの熱い勝負を眺めていたユキは、ふと自分のコップが空っぽになっていることに気が付いた。勝負はまだまだ長引きそうだし、飲み物を取りに行こうとユキは席を立った。
酒場のカウンターにあるメニューを見て、何を頼もうか、それともドリンクバーでも取りに行こうかと考えていたとき、たまたま通りかかったモブがユキに話しかけてきた。ユキの容姿を気に入ったのか、はたまた別の何かに興味をそそられたのか、モブは少し興奮した様子でユキを見つめていた。
誰だろう?と思いつつも、その人が凄い勢いで話をするので、ユキはとりあえずにこにこと頷いてみた。すると気を良くしたモブは、おすすめの飲み物だと言ってドリンクバーからある飲み物をユキのために取ってきてくれたのだ。
親切におすすめの飲み物を教えてくれたモブに、なんとなく嬉しい気持ちになったユキは気分よく席に戻った。
「随分と上機嫌だな」
「何かお気に入りの飲み物でも見つけられたのか?」
「うん、ここの常連だという方がおすすめのものを教えてくれたの」
セノとカーヴェがユキに話かけると、ユキは楽しそうにそう答える。それは良かったと優しげな表情でユキに相槌を打つ彼らは、そうして七星召喚を再開した。
セノの手札を見ながら七星召喚を学んでいると、徐々にうとうとし始めるユキ。
普段、薬の副作用などで眠くなることがしばしばあるので、特に気にしていなかったのだが、やけに眠そうにするユキに気づいたカーヴェが、気を使って少し休憩しようかと声をかけた。
カードをしまって少し雑談をしてる間に眠ってしまったユキを気にかけたセノは、先に彼女を家に送ることにした。そうして彼女をおぶって酒場を離れようとするセノに、先程のモブが声をかける。
「あれ、もう帰ってしまうのかい?」
「…誰だ?何か用か」
「さっきそこの彼女とカウンターで話をしたんだけどね、もう一度話したいと思ってたところなんだ」
「そうか、だが彼女は見ての通り疲れている。だから今回は諦めてくれ」
「しかし、こっちも彼女に帰らたら困るんだよ」
「しつこいな…。また会ったときに話をすれば良いだろう。悪いが彼女の体調の方が優先だ。俺たちは帰らせてもらう」
そう言って普通に酒場を出ていったセノを見送りつつ、突然のモブの行動に違和感を持ったアルハイゼンは戻ってきたモブを観察する。席に戻ったモブは少々苛立った様子で酒を飲み干してから、何処からか妙な薬を取り出した。それを見たアルハイゼンはモブに対して疑念の目を強くする。
「その薬はなんだ」
「あ?なんだお前」
「先に質問したのは俺だ。まずは俺の質問に答えるべきだろう」
「っち、これは俺が研究してる薬だよ」
「そうか、俺はアルハイゼンだ。次の質問だが、先程この酒場にいた他の客にしつこく絡んでいたが、いったい彼女とどんな話がしたかったんだ?」
「アルハイゼン…?アルハイゼンって書記官の、」
「ああ、その認識で間違いない。立場をわきまえたのなら、まずその薬についての説明を要求する」
* * *
「なるほど…」
アルハイゼンによる誘導尋問のおかげであっさりと己の欲望を吐いた酔っ払いのモブは、いつの間にか呼ばれていたマハマトラによって連れていかれた。
男の証言を要約するとこうだ。
・ある薬の研究をしているがその薬の実験対象が人であり、女性の方が都合が良いのだという。
・先程話しかけた女性に関係あるのか問うと、彼女におすすめと言って渡した飲み物に少し薬を混ぜたのだという。
・眠ってしまった彼女を見て、薬の効果が期待したものと違ったために彼女の様子をもう少し観察したかったのと、あわよくばもう一度話をして効果を聞き出したかったとのこと。
案の定、嫌な予感が的中したアルハイゼンは、カーヴェに支払い任せて先に帰ったユキのもとへ向かった。
一方、自分が迎えに行く前にセノに送られて帰ってきた恋人をベッドに寝かせながら、ティナリは少しの違和感を覚えた。今日の彼女の様子についてはセノから一通り聞いたが何かが引っかかる。
セノ曰く、疲れていたというよりは単純に眠そうだったから連れて帰ってきたということだったが…。ユキは普段、ティナリの調合する薬を服用しているので、昼間でも眠そうにしていることがしばしばある。しかし今日飲んでいる薬の副作用に睡眠作用を持つものはなかったはずだ。
眠る彼女を見るに、本当にただ眠っているだけで体調が悪いようには見えないから大した問題はなさそうだが…と少しの不安を覚えつつ、ティナリは眠る彼女の隣で今日の見回りの記録を再開した。すると、今度はアルハイゼンが訪問してきた。
* * *
「それ本当に言ってるの?」
「ああ、わざわざ嘘をつく必要はないと思うが」
「…そいつから薬に使った材料とか聞いてない?」
「それについてだが、家にメモがあると言っていた。モブは拘束しているしセノにもその旨を伝えているから直に見つけて来るはずだ」
「そう…仕事が速くて助かるよ」
「モブのやっていることだが、倫理的にも教令院の研究規約的にも、違反している事だ。とにかくティナリに事情は伝えた。俺は1度拘束したやつのもとへ戻るよ。彼女の様子を良く見ておくことだな」
「ああ、言われなくともそうするよ」
モブに再び尋問と処罰を与えるためにシティへ戻るアルハイゼンに礼を言い、すぐにユキの様子を確認しに行くティナリ。違和感が嫌な意味で的中して焦りを感じつつも、セノたちの報告を待つしかない。アルハイゼンの話からするにモブの目的は明らかだ。恐らくそういう目的のために薬を作っていたのだろう。
まさか酒場でたまたま見つけた女性に薬を盛るなんてことがあるなんて、という怒りを感じつつ、努めて冷静に有り得る薬の作用について考える。
まだモブの思っていた通りの作用でなかったことが幸いか。だが効果不明の薬の服用ほど恐ろしいものはない。しかもユキに至っては他の薬も併用しているのだ。
「うぅ」と小さく声を出しながら体を捩るユキの様子に、ティナリは咄嗟に声をかける。
「ユキ?」
「ん…ティナリ?」
「うん、僕だよ。どこか身体におかしなところはない?」
「…すこし眠いかも」
「眠いだけ?」
うん…と眠そうに目を擦りながら身体を起こそうとするユキの背中に手を添える。しかし両手をついて起き上がろうとしてもいつものように上手く起き上がれない様子だ。
「ぁ…」
「少し身体が麻痺してるみたいだから動かない方がいいかも。大丈夫だよ、僕に寄りかかってて。ゆっくり深呼吸しようか、他に違和感はある?」
ゆっくり首を振るユキを見てからもう一度体温と脈を確認する。
「ごめん、ちょっと辛いよね」
解毒をするにも使用された薬の材料が分からないままでは適切な薬は作れない。いち早くセノが情報を持ってくることを祈りながら、ユキの状態が悪化するのをできる範囲で防ぐしかない。
しばらくして、家の扉が少々荒々しく開かれる。
「ティナリ、このメモが例の薬を作った際に使ったものだそうだ」
「セノ!ありがとう」
「いや、俺がもっと注意深く周りを観察しておくべきだった。すまない」
「セノが謝る必要はないよ。あんなモブの行動は想定できるものじゃない」
「…そうだな、ところでユキは大丈夫なのか?帰ってきたときよりも少し辛そうに見えるが」
「今のところ強い眠気と筋肉麻痺の症状があるみたい。少し薬を調合したいから彼女の様子を見ててもらえる?」
「もちろんだ」
寄りかかっていたユキをゆっくりベッドに寝かせて、ティナリが早速解毒薬を作りに行く。その後ろ姿を眺めて、セノはぐっすりと寝入るユキに視線を落とした。眠る前まで楽しくゲームをしていたはずだったのに、どうしてこんなことになったのか。ユキを送り届けたあと、アルハイゼンからのモブの企みを聞いて血の気が引いた。すぐにモブの家を特定し例の薬に関するメモを探したが家が汚過ぎて探すのに少々手間取った。
ヤツのやろうとしていたことを想像しただけで吐き気がする。アルハイゼン(教令院)からの処罰もあるだろうが、マハマトラとしてもやつを懲らしめる必要があるようだ。
「おまたせ、特に変わった様子はなかった?」
「ああ、大丈夫だ」
「そう、見ててくれてありがとう」
「問題ない、俺は一度モブのところへ行くが何かあれば呼んでくれて構わない」
「うん、わかった」
* * *
「ユキ、少し体を起こすよ。やっぱり徐々に麻痺が強くなってるね。薬を作ったからいったんこれを飲んでみて」
即席の薬だったから苦味が強かったが、何とか飲んでくれたユキにティナリは安堵した。時間差で症状が現れているから治まるのには少し時間がかかりそうだと、ティナリは心配そうにユキの頬を撫でた。
おまけ。ユキの交友関係について。
コレイ(ガンダルヴァー村でティナリから診てもらっているときにユキから文字や料理を教わっている。コレイにとってはお姉ちゃんみたいな存在。何かあるとまずユキに報告する)
セノ(自分のギャグで唯一笑ってくれる存在。自分の話をいつも最後まで聞いてくれるユキのことをめっちゃ仲の良い友達だと思ってる。面白いことがあると逐一教えてくれる。最近ユキに七星召喚の話をしたら興味を持ってくれて嬉しい。実はユキのことをかなり気にかけており、ティナリがユキの側に長らく居られないときにに共に過ごすことがしばしばある)
アルハイゼン(教令院に所属しているわけではないが、頭が柔らかく柔軟性のあるユキの思考に関心を持っている。こちらも数少ない自分と対等に話ができる良い友人だと思ってる。興味深い本をたくさん贈ってくれるし、よくユキをお茶に誘ってくれる)
カーヴェ(1番会う機会が少ないが、アルハイゼンとお茶をするときに一緒に居ることが多い。セノのギャグに笑顔で答えたり、アルハイゼンの話を興味深々に聞いたり、常に優し気な雰囲気を纏ってるユキは聖人なんじゃないかと本気で思ってる。美味しいお茶とかお菓子をよく教えてくれる)
とか色々考えたけどこれ以上続かなかった。
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