異世界からの旅人(前編)
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(あれ、今日はカウンターにあの女1人なのね、いいわ直接話をしましょう、先ずはあの女に言わなきゃいけないこともあるし)
翌々日、本日もポアロにやって来た夢野は1人で作業をするユキを見つけて口角を上げた。
「いらっしゃいませ!あ、夢野さん今日も来て下さったんですね!」
昨日の初来店から時を待たずしてポアロに来店してくれた夢野にユキは笑顔を向ける。
「ふん、そんな白々しい笑顔なんて要らないわ」
「…?えっと、ご注文は?」
「…貴方の作る料理なんて要らないわよ!それより、どうなってるか説明してくれる?」
「せ、説明?」
「そうよ!なんで貴方みたいなのが安室さん、いや降谷さんの横に居るのか、それに奥さんって何なの?降谷さんは忙しい人だからアンタみたいなのを相手にしてる暇なんてないはずなんだけど、どうなってんのよ!」
「…えっと、なんの話でしょうか?」
きょとんと首を傾げ、本当に何を言ってるのか分からないという表情のユキ。それもそうだろう。誰だって夢野の言ってることは理解できないと思えるほど彼女の発言は意味不明だった。
しかし自分の言いたいことが全く伝わらないことに腹を立てた夢野は、怒りに任せてデーブルを叩いた。その大きな音にビクッと肩を揺らして目を丸くするユキ。いったい目の前のお客様は何がしたいのだろうか。
今日もポアロの平和を守るため、コナンは学校帰りにポアロへ立ち寄った。大きなガラス窓から中を覗くと、何やらユキと夢野が2人で何かを話しているようだ。慌てて店に入って来たコナンはいかにも不機嫌ですといった雰囲気を醸し出す夢野と、しょんぼりと肩を落とすユキを見て嫌な予感がした。
おいおい何やってんだこの人。
ユキさんに何かしたわけじゃねぇだろうな?
とりあえず早くマスター呼ばねぇと。
多分この時間なら買い出しだよな。
そう考えてパパっとスマホでマスターへと連絡を入れてからコナンはユキと夢野のもとへ向かった。
「ね、ねえ2人とも、何かあったの?すごく大きな音が聞こえたよ?」
「あらコナン君、別に何もないわよ、ただの雑談じゃない。彼女と2人で話してみたかっただけ!マスターの話とかね?つい盛り上がっちゃって!ね?ユキさん」
「へ?う、うん!そうだね…」
「そう、なら良いんだけど」
ハハハ…とから笑いするユキに、絶対に雑談なんかじゃねェだろとコナンは思った。
さっきまで不機嫌オーラ全開だったのに、コナンが来店した途端、コロッと表情を変えてユキに向き直った夢野。ただ雑談をしてただけ、夢野の圧に反射的に頷いたユキを見てコナンはユキが少し心配になった。
すると勢いよく開いたポアロのドア。急いで戻ってきたマスターが少し大きな音を立てて店内へ入ってきた。
コナンからの呼び出しに、買い出しから戻ってきたマスター。カウンターにはどこか気落ちしているユキとなぜかマスターを見て笑顔になる夢野。マスターは冷たい目で夢野を一瞥し、すぐにユキの隣へ駆け寄った。
ぽんと優しく背中に触れるマスターの手に安心したのか、ユキはマスターの顔を見た途端に瞳を潤ませた。夢野のせいで無意識に張りつめていた緊張が解けたようで、そんなユキの涙にマスターは慌てて彼女の顔を覗き込む。
「ユキ?いったい何があったんだ?」
「えっと、夢野さんと少し雑談をしてて…」
「…雑談、えっと貴方は確か前に蘭さんたちと来ていた」
「はい!そうです!覚えててくれたんですね安室さん!」
「安室?」
「あ、いえ えと降谷さん…?」
「ええ、ご注文が決まりましたらまたお呼びください」
マスターは冷たくそう言い、ユキを夢野から離しつつ夢野の「安室」という発言について考える。
また安室透の名前…先日コナンから出てきたこの名前は、前世で偽名として使っていたことがあったとマスターは思い出した。
コナンから聞いた時はただ同じ名前の人がいただけだろうと、大して気にしていなかったが、今しがた、夢野の口からその名前が出てきたことにマスターは驚いた。しかも、マスターである自分のことを安室として認識しているところが妙だ。
(もしや前世の俺を知っているのか?)
自分たちのように前世の記憶がある者もいるから、ありえない話ではない。夢野が本当に前世の安室という存在を知っているならば、降谷零の容姿を見て安室透の名前が出てきても何ら不思議ではない。
しかし安室透の知り合いというのは、前世の降谷零が潜入捜査官として接したことのある人物だということになる。それはつまり降谷零とは敵対していた組織の人物ということだ。今世の降谷を見つけ、その妻に接触した。そして妻に対する明らかな敵意。そこから導き出される答えは…前世の復讐だろうか。
* * *
その後、夢野は赤井とコナンからは組織に繋がりのある人物として警戒された。
そして自分に(前世の)恨みを持っていて、妻に危害を加える可能性のある人物としてマスターからもマークされた。さらに、その日のうちに前世の記憶を持っている旧友や風見にも連絡が伝わったことで、彼らからも警戒されることになる。
とにかく、一刻も早く夢野とかいうわけのわからない人物をなんとかしなければならい。
本日の営業を終え車で自宅へと帰る途中、マスターは昼間にあったことをユキに尋ねた。
「夢野という女性に何を言われた?」
「夢野さん?えっと、零くんは忙しい人だから私みたいなのが横にいるのはおかしくて、あと私の料理はあまり気に入らないみたい」
でも結局何が言いたいのかよく分からなかったの。夢野さんは雑談のつもりみたいだったけれど…と彼女は頬に手を当てて首を傾げている。かなり理不尽なことを言われているが本人的にはそこまで気になることではなかったようで、単純にテーブルを叩いて威嚇されたのが怖かっただけらしい。今回ばかりは彼女の思考がちょっとズレてて助かったな。とマスターはホッと息をつく。
ただ、この夢野の発言からすると、夢野が敵意を向けているのは降谷零ではなく、明らかにユキに対してなのだ。ここだけを見ると前世の降谷に恨みがあるというより、ただ単に降谷に気があり、ユキに嫉妬心を向けているだけのようにも見える。とはいってもユキに対して危険が迫っていることには変わりないと、マスターはハンドルを切りながら今後の対策を練る。
とにかく、彼女に近づく災いは徹底的に排除するまで。
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