運命の番
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「おはよう、ミア」
「あ…お、はよう…?」
「ああ、おはよう。上手に言えるようになったな」
毛布からわずかに顔を覗かせるミアの頭を、ルナの大きな手が撫でる。まだ微睡みの中にいるミアは目を細めてその心地良さに浸った。
彼女がグラディウス公爵家の一員となってから約2ヶ月が経過した。最初は何をするにも怯えていたミアだったが、ここでの生活にも随分慣れてきたようで、今ではルナだけでなく数名の侍女ともコミュニケーションが取れるようになった。それに伴い少しづつ言葉を紡げるようになってきたからか、最近ではルナの前でよくお喋りをするようになった。
「ぅ、ルナ…?きょう は、おいも の スープ?」
「そうだよ。昨日ミアと約束したからね」
「あ、うれ しいね」
「ああ。好きなだけ食べるといい」
ルナには拙い言葉で一生懸命に話すミアが愛おしくて堪らなかった。
匙でスープを掬い小さな番の口もとへ運ぶと、彼女は嬉しそうに口を開いた。
その様子にルナは満足気に目を細める。
パンをちぎってその小さな口に入れると、ミアは左手を添えて、もぐもぐと必死に口を動かした。
あまりの愛おしさに、ルナはパンを咀嚼するミアの頬に手を添えて、彼女の額に口付けを落とした。
目線をルナに向け、小首を傾げるミアを見つめながら、ルナは昨夜のレナードの言葉を思い出す。
「公爵様、やはり御番様の体内から不釣り合いな魔力を感じます」
グラディウス公爵家に使える治癒士であるレナードは、アナスタシアを診察しながらそう口にしていた。
「不釣り合いな魔力だと?どういう事だ」
魔力という物は基本的にどんな生き物でも持っているものであり、生き物にはそれぞれ魔力を蓄えるための器が存在する。その器が大きければ大きいほど強力な魔力を扱う事ができ、反対に魔力の器が小さいと魔法を扱う事すら困難になる。
ミアは妖精族と人間の混血であるとオーウェンの調べにより判明したが、比較的魔力の器が大きいとされる妖精族、器が極端に小さな人間。そもそもの形態が異なる種族を無理やり混ぜたせいで、膨大な魔力を小さな器で受け止めきれずに、ミアの身体に大きな負担がかかっているのだとレナードは言う。最初こそ奪われていたせいで極端に枯渇していた魔力は、身体が回復するにつれて、今度は増え過ぎているようだ。
レナードの言葉を思い出しながら、ルナも腕の中でパンを頬張るつがいを見下ろしながら考える。
彼女を助け出してから約2ヶ月が経過している。ルナはその間最もミアの近くで世話をしてきたのだ。ルナとて、彼女の身体について様々な疑問を抱えていた。怪我の回復や成長がかなり遅いこと、朝、昼、夜と眠る感覚が短いうえに一度眠れば中々起きられないこと。人間とも妖精族とも関わった事がないからそういう物かと受け入れる事も出来るが、些か拭えない違和感があるのも事実であった。
可愛らしくムースをつけた唇をぺろりと舐めれば、ミアは楽しそうに声を上げて笑う。ゆっくりではあるが、順調に回復しているように見える。しかしそれは表面上だけで、実のところミアの体調は常に不安定な状態である。
「ミア、そのパンは気に入ったか?」
「ん!きにい、た!」
「ミア、どこか痛いところはない?」
「んー、ないよ?」
「本当か?どこか痛くなったらすぐに私に教えてくれ」
大きな丸い瞳がルナを見上げて首を傾げる。今のは少し話が長く、ミアには難しかったようだ。
細い首に手を当てて脈を測る。小さな額に手を当てて体温を測る。ミアは突然始まったルナの行為に不思議そうに瞬きをする。最後に、頭が大きな手に引き寄せられて、トンとルナの胸に触れた。全身が大きな腕に包まれて視界が暗くなる。けれど、心地の良い体温にミアは安心して目を閉じた。