運命の番
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謁見を終えたルナは、ゆるやかな足取りで王城の回廊を歩いていた。
白大理石の床に、靴音が静かに響く。
片腕にはつがいを抱き、もう片方の手で時折その柔らかな髪を撫でてやる。
夕刻の陽が沈みかけ、壁に張り巡らされたステンドグラスを透かして、無数の色が床に散っていた。
紅、翠、金――光がミアの頬に淡く映り込み、まるで花びらが舞っているようだった。
ミアは不思議そうに目を瞬かせ、煌びやかな光景に見入っている。
その視線の先を追ったルナは、小さく笑みを浮かべた。
「綺麗だろう、ミア。……この国は君を歓迎しているよ」
穏やかに微笑むルナを見上げるミアは、きっと彼の言葉の意味を理解したわけではない。
けれど、その穏やかな声に安心したように、彼の胸に顔を寄せた。
そのとき、回廊の向こうから靴音が近づいてくる。
規律正しい足取り。姿を現したのは、深緑の礼服に身を包んだ騎士のひとり――ラインハルトだった。ラインハルトは人狼族であるが、ルナとは幼馴染とも言えるような間柄である。現在は宮廷騎士団に所属している彼は整った顔立ちに柔らかな笑みを浮かべ、恭しく頭を下げた。
「公爵様、このたびは――まことにおめでとうございます」
相変わらず、堅苦しい言葉を並べて挨拶をする友人に苦笑しながらルナは軽く頷いた。
「ありがとう。……ミアという名だ。小さな身体だが、私のつがいだ」
その名を聞いた騎士は、穏やかな目を少女へ向ける。
「ミア様、初めまして。どうかこの国で、安らかにお過ごしくださいませ」
彼は膝を折り、ミアの目線まで身をかがめた。
その丁寧な仕草に、彼女はわずかに身体を固くしたが、ルナが背をそっと撫でると、視線を上げてその騎士をじっと見つめた。
恐怖の影はなかった。
ただ、慎重に――けれど確かに、彼女は他者という存在を確かめていた。
騎士の目元が優しく緩むのを見て、ミアは小さく息を吸い、こくりと頷いた。
小さなやり取りを見守っていたルナは、満足げに目を細め、そっとミアの頭に手を置いた。
彼の掌が額から目もとにかけて落ちる。暖かな掌の感触に、ミアは目を閉じ、安心したように頬を彼の胸にすり寄せた。
その光景に、ラインハルトは深々と頭を下げた。
「公爵様とつがい様に国の加護があらん事を」
両の拳を合わせそう述べると、騎士は一歩下がり彼らの前の道を開ける。
長く続く王宮の回廊には、色とりどりの光と、穏やかな沈黙が広がっていた。