運命の番
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竜人族が頂点に立つこの国には古より伝わる掟がある。竜人族の雄に生まれし者は、必ずこの世のどこかに“ただ一人の雌”を持つ。
それを「つがい」と呼び、魂の半身とされる。
つがいを得た雄は王へ報告し、正式に認められることで初めて、国全体がその雌を護る義務を負う。
ゆえに、つがいの存在は個人の愛を超えた“神聖な縁”として扱われていた。
――ルナ・レイ=グラディウス公爵がつがいを見つけた。
その報せが王城に届いたのは、彼が帰還してすぐのことだった。国の重鎮である公爵のつがいが見つかったのは実に喜ばしい事である。
それから、ルナが登城したのは、つがいが目を覚ましてから約三十日後の事だった。
壮麗な謁見の間。
磨き抜かれた白大理石の床に、陽光が柔らかく反射する。
その中央、緋色の絨毯をゆっくりと進むルナの腕の中には、まだ小さな身体を包むように抱えられた少女の姿があった。
少女は、初めて見る壮大な空間に戸惑い、ルナの胸に顔を埋めている。
細い指が彼の服をぎゅっと握りしめ、離れようとしない。
それを愛おしげに見下ろしたルナは、静かに微笑み、玉座の前で膝をついた。
「陛下。……つがいをお連れいたしました」
王は深く頷き、ゆるやかに立ち上がった。
年齢を重ねたその姿には、威厳よりも包み込むような温和さが漂っている。
「君が――ルナのつがいなのだね」
穏やかな声が、謁見の間に響いた。
少女はびくりと肩を震わせたが、ルナの腕の中でそっと顔を上げる。
王の眼差しは驚くほど優しく、彼女を恐れさせるものではなかった。
「ルナから話は聞いている。その小さな身体で……よくぞ生きていてくれたね」
王がゆっくりと手を伸ばす。
そして大きな掌が、少女の髪を包み込むように撫でた。
初めて、ルナ以外の誰かが自分に触れた――
そのことに一瞬戸惑ったものの、王の手のぬくもりは驚くほど穏やかで、少女はおずおずと目を細めた。
王の口元に微笑が浮かぶ。
「君たちを、正式に“つがい”として認めよう。今日よりこの国の守護のもと、生涯を互いのために生きるのだぞ」
謁見の間に、静かな息を呑む気配が広がる。
ルナは深く頭を垂れた。
「……感謝いたします、陛下」
王は続けて、ふと優しい目を少女に向けた。
「ところで――彼女の名を、まだ聞いていないが」
ルナは一瞬だけ、腕の中の少女を見つめる。
そして小さく息を吸い、穏やかに答えた。
「……ミア。それが、彼女の名前です」
「そうか……」
王はその名を確かめるように口にし、静かに頷いた。
「良い名前だ。
ミア――我々は君を歓迎するよ。どうか恐れず、幸福に生きる事を諦めないでくれ」
その声は、まるで祈りのように柔らかく、温かかった。
ミアはわずかに瞬きをしてから、かすかに頬を緩めた。
彼女の唇が、言葉にならない微笑を形づくる。
それを見たルナは、胸の奥に込み上げるものを押し殺すように目を伏せた。
――つがい。
この小さな命こそ、己の魂の半身。
彼は改めて、心の奥底で強く誓った。
この命を、必ず護り抜く。