運命の番
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約二十日かけて、ルナとルナの番はようやく公爵邸へと帰還した。そして邸に着いてからさらに三日が経過した。
その間、少女――彼の「つがい」は一度も目を覚まさなかった。
公爵家に仕える治癒士――レナード曰く、彼女は生きるか死ぬかの一刻を争う状態でずっと眠り続けているのだという。普通であれば死んでもおかしくは無いほどの失血量に、栄養状態も最悪。そして最も深刻なのは、魔力の枯渇だった。どれだけ外傷を手当しても、魔力ばかりは自然に回復するのを待つ他ない。
ルナは番がレナードに治療されるのをそばで見守りながら、その小さな左手をそっと握る。
痩せた頬は青白く、まるで触れれば崩れてしまいそうだった。
それでも、彼女の胸はかすかに上下を繰り返し、命の灯だけはまだ消えてはいなかった。
そして公爵邸へ帰宅してから三日目の夜、静寂の中で、かすかな呻き声が部屋に響いた。
ルナがベッドの傍らに歩み寄ると、少女の睫毛がわずかに震えていた。
苦しみ耐えるように眉を寄せ、細い喉から小さな息が漏れる。
両腕が毛布の中で掻き乱すように動き、毛布を捲って見えた包帯の下からは薄く血が滲んだ。
「そんなに動かしたら、傷口が広がってしまうよ」
低い声でそう囁きながら、ルナはそっと少女の右手首に触れた。
その瞬間、少女の肩がびくりと揺れる。
怯え、拒むように身体を強張らせた彼女の瞳に、みるみるうちに涙が溜まっていった。
零れ落ちた雫が、白い枕を淡く濡らす。
そんなつがいの姿がルナの胸を締め付ける。
彼女はきっと、これまで触れられるたびに痛みと恐怖を知ってきたのだろう。
「君がこんなに傷付いて、苦しんでいたというのに……助けが遅くなって、本当にすまなかった」
そっと身を屈め、震える身体を包み込むように抱きしめる。少女は抵抗することもできず、ただ小さく嗚咽を漏らしていた。
「だが、もう大丈夫だ」
ルナはその耳元で、静かに言葉を紡ぐ。
「ここには、君を傷つける者はいない。君のことは、これから私が護るから、どうか泣かないでくれ……私のつがい」
その声は、竜の咆哮のような悲喜を帯びながらも、どこまでも優しかった。
少女の涙は止まらないまま、それでも、恐怖の色だけは少しずつ薄れていった。
やがて小さな手が、ルナの服の裾をきゅっと掴む。
その小さな温もりと愛おしさに、彼は息を詰まらせた。
永い時の中でようやく見つけたつがい。
その鼓動を確かめながら、ルナは静かに目を閉じた。