運命の番
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硬く古びた鎖はルナが放った斬撃によって瞬時に断ち切られた。その音は牢獄の暗闇に真っ直ぐに響き、鉄の輪が床に落ちる。重力にしたがってわずかに沈んでいく少女の肩をルナは躊躇なく抱き上げた。布切れのかたまりのような身体は思いのほか軽く、その存在の儚さにルナは胸が締め付けられるような感覚に短く息を吐いた。
外では激しい足音と喘ぎ声が交錯していた。牢を見張っていた衛兵たちがあちこちで倒れているのは、ルナの指示を受けた部下たちが寸断された通りを切り開いてくれたからだ。血と砂の匂い、鉄の匂い。彼の鼓動は速く、視界は狭まる。道を塞いだ者すべてを焼き尽くしてやりたいという衝動が胸の奥から湧き上がる。憤怒、虚無、屈辱――それらが一つに混ざり合い、まるで潮が逆巻くように押し寄せた。
馬車に運び込まれた少女を、ルナは毛布で丁寧に包み込む。部下の一人が携帯用の薬瓶を差し出した。医学知識のある部下の言葉に従いながら、応急処置をするその手は震えを抑えきれないでいた。包帯を押さえ、汚れを拭き取り、冷やすべき箇所を探す。その一つ一つの所作が、つがいに対する慈愛と、時遅しの後悔の感情を露わにしていた。
「もっと早く、気付いていれば――」と、言葉は喉で詰まる。ルナは自分を責めた。遠からず運命を感じ取ることの出来る自分が、なぜこの痛みにもっと早く気づけなかったのか。迎えに行くべき時を徒に遅らせてしまった自責が、胸を締め付ける。だがその隙に、少女の小さな身体が薄い毛布の下でふと動き、短い腕がルナの胸に当たった。
その瞬間、全ての言葉が無力に思えた。愛しさが、後悔を押しのけて前に出る。ルナは拳を固め、唇を噛んでやり場のない怒りを噛み砕いた。彼女の命を繋ぐこと──それだけが今できることだと、心に鋭く刻みつけるように。
馬車は夜の道を走り出し、星明かりの下で、彼は抱えた命と自らの責務だけを見つめ続けた。