運命の番
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夜の帳が下りる頃、商人を装った黒衣の一団が小国エルネアの城門を抜けた。その先頭を歩く男こそ、ルナ・レイ=グラディウス公爵。
マノ大陸で最も大きく、世界最強種と言われる竜人族が治める国「ラディア」から颯爽と現れた彼もまた、竜人族の末裔である。
なぜ、そんな男が身分を偽ってまでこのような小さな国に訪れたのか
――それは、なんの前触れもなく突然現れた。
数日前、彼の胸を突くように走った痛みと、脳裏に響いた「助けて」という微かな声。
それは偶然の幻聴ではなかった。生まれながらに“運命のつがい”の存在を感知できるその血が、遠く離れた地で息づく相手の苦痛を、確かに伝えてきたのだ。
ルナは迷うことなく屋敷を飛び出し馬を駆った。
十日を超える行程をほとんど休むことなく進み、ようやく辿り着いたこの小国の片隅で、彼の直感は確信へと変わる。
ここに、己の“つがい”がいる。
人目を盗んで侵入した地下牢は、腐臭と鉄錆の匂いが入り混じった陰鬱な場所だった。
灯火が届かぬほどの奥底に、微かに感じる鼓動。それは間違いなく"つがい"のものである。だが、たしかにそれに近付いているはずなのに、その気配は今にも遠くへ離れていってしまいそうな程の小さいまま。
――それを“人”と呼んで良いのか、一瞬ためらうほどだった。
石床の上に、布切れのようなものが横たわっている。
それが少女だと気づいたのは、月光を反射して震える白い肩が見えたからだった。
まだ年端もいかぬほどの幼さ。
だが、その小さな体は無惨にも傷に覆われ、血の痕が幾重にも重なっている。
首には鎖が何重にも巻き付き、呼吸のたびに微かに金属音が鳴る。
両の足首には乱雑に包帯が巻かれていて、血が滲んでいる。さらに、少女に近付いてその身体に触れようとした時、力なく投げ出されたその右腕の先……切断された右手首を見てルナは言葉を失った。
――これが、私の“つがい”だというのか。
際限のない憤怒と悲哀が胸を焼く。
ようやく出会うことの叶った己の運命の半身は、今にも消えそうな命の灯を抱えて、暗闇の底に取り残されていた。
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