『親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ』
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日が完全に沈みきった歌舞伎町。今日はたくさんの屋台が出ているため、その灯りだけでも随分と賑わっているのが分かる。将軍様も列席するお祭りの中、警護を担当する真選組も定位置に付く。祭りの舞台に源外と三郎が登場し、いよいよ本日最大の催物が始まった。
ヒュ〜ヒュ〜というか細い音を立てて、カラクリである『三郎』の腕から次から次へと打ち上がる花火に、銀時は空を見上げた。夜空いっぱいに広がるその光を見ながら、銀時は先程の源外とのやり取りを思い出していた。そんな折、カタと銀時の近くで下駄が止まる音がした。
「やっぱり祭りは派手じゃねェとな」
ドーン!と鳴る花火の音に紛れて銀時の背後に何者かが現れた。ドクッと嫌な音を立てた心臓に銀時は咄嗟に刀を抜こうとしが、何者かが銀時の懐に刀を突き立てる方が早かった。
「動くなよ。白夜叉ともあろう男が後ろを取られるとはなァ。銀時、テメェ弱くなったか?」
「高杉…なんでテメェがここにいんだ」
「いいから黙って見とけよ。すこぶる楽しい見世物がこれから始まるぜ」
綺麗に夜空を彩る花火、ついに、この催し物もクライマックスだろうか。いっそう大きな花火が上がったと同時に、三郎の腕は祭り会場の中央を捉えた。そして先程まで花火を打ち上げていたその腕から、民衆に向けて、なんの前触れもなく一発、ドカーン!!と発砲した。
源外の催物を見ていた観衆は大パニックだ。発砲した煙玉が直撃した屋台はその勢いで完全に崩れてしまっている。その光景を見ていた銀時は背後の高杉を睨みつける。
「高杉、じいさんをけしかけたのはお前か」
「けしかける?バカ言うなよ。立派な牙が見えたんで研いでやっただけの話だ。分かるんだよ、俺にもあのじいさんの苦しみが。俺の中でも未だ黒い獣がのたうち回ってるもんでな」
そう語る高杉の瞳には何が映っているのだろうか。ただ、高杉が今のこの世界にひどく憤りを感じているのは銀時にもわかった。今の、将軍のいる観客席へと攻撃を仕掛けた源外と同じ表情をしているようだ。
お前にはこの憎しみが分からないのか?と問い続ける高杉は、黙ったまま何も答えない銀時を見て呆れたように言葉を吐いた。
「分かるわけねェよなァ、過去から目を逸らして、のうのうと生きてるお前に、牙を無くした今のテメェに俺たちの気持ちは分からねェよ。ほらこれ見ろよ、さっき会った妙な娘に貰ったんだ」
そうして片手に持ったいちご飴を銀時に見せる高杉。
「それがなんだってんだよ」
「テメェあの阿呆そうな女に随分と現を抜かしてるみてぇじゃねェか。もしアイツ殺したら、お前もかつての憎しみを思い出してくれるか」
「テメェ…」
「それか、今ここでテメェを殺したら、あの娘も俺らと同じように憎しみに苛まれ俺に復讐を誓うだろうなァ。憎しみってのはそういうもんなんだよ銀時」
そう言ってこちらを睨む高杉の目線を捉えた銀時もまた、強い怒りの気持ちを持った目で高杉を睨み返す。
「高杉、見くびって貰っちゃ困るぜ。確かにアイツは身体も頭もクソ貧弱だがなァ、憎しみなんかに負ける玉じゃねェよ」
銀時の言葉は高杉にとって想定外の回答だったのだろう。語気強めに言葉を紡ぐ銀時に気を取られた高杉は、拘束のために突き付けていたはずの自分の刀がグッと動かなくなったことに気づいて舌打ちする。銀時が素手で刀を握っているからだ。
刀を握る手から血が流れることを意にも介さない銀時はパニックになっている祭り会場を見渡し、ユキの居場所を探す。
――あの時、腹減って死にかけの銀時に最初に手を差し伸べたのはユキだ。
攘夷戦争が終わったとき、何もかもを失った俺に最初に手を差し伸べたのはユキだった。天人とか種族とか関係ない、あのときただ純粋な瞳で俺のそばに寄って来たユキの瞳が憎しみで濁るなんてことなんて、やっぱり考えられねェよな。
「目の前にあるモンを大切にして生きてく、それが俺らの魂だ。それに、獣くらい俺だって持ってる」
ただし、獣は白いヤツでな、そう言ってニヤリと笑う銀時の場違いな発言に高杉は「は?」と拍子抜けした声を出した。その隙を狙って銀時は傷のついてない方の手を振りかぶる。
「名前は定春ってんだ!!!」
高杉の頬に拳を1発、綺麗にお見舞した銀時は体勢を崩した高杉から離れて源外と三郎のもとへ向かう。そして今にも殺戮を繰り出しそうにしている三郎と源外の前に立ち、木刀を構えた。
「今どき敵討ちなんて流行らねェんだよ。三郎が悲しむぜ、じいさん」
アンタもわかってるだろ。という銀時に対して、憎しみいっぺんに染った源外は耳を傾けようとしない。
そのまま再びサブロウへと発砲の合図をする源外とその言葉を合図に走り出す銀時。
サブロウと銀時の一騎打ち、と思われたけれど、三郎は途端に腕を下げた。まるで自分には戦いの意志などないことを示しているように。
そのまま銀時の攻撃を受け入れる選択をした三郎。カラクリの胴体に、一直線に銀時の木刀が入る光景をスローモーションに捉えた源外は、ゆっくりと倒れていく三郎に駆け寄った。
「三郎!!バカヤロウなんでオメー撃たなかったんだ」
「オ、オヤジ…カラクリ…スキダッタ、マルデ、ガキガドロダラケデアソンデルヨウナ…スキダッタ」
最後にそう言葉を残して三郎はピクリとも動かなくなる。三郎の鋼鉄の体に触れた源外は、最後に思い出を語った三郎の姿に静かに涙を流した。
ーーだから親父、そんな大好きなカラクリを復讐のためには使わないでくれ。
* * *
暴れだした三郎のせいで潰れた屋台。すぐ近くで気絶していたユキはようやく目を覚ました。頭に覆いかぶさったビニールシートを持ち上げると目の前にコロコロと転がってくる機械の破片らしきもの。迷わずそれを拾ったユキは痛む体を我慢して立ち上がる。すると、彼女の目の前には殺戮のために作られたカラクリが一体。さっきの三郎の発砲を合図に飛び出してきたカラクリのうちのひとつだ。
カラクリはユキの方へ腕を伸ばそうとするもカタカタを変な音を鳴らすだけ。そんなカラクリを見てユキはさっき拾った破片を思い出す。
「これ、もしかしてあなたのもの?」
破片を差し出すユキに対して、変わらず壊れかけのような音を鳴らすカラクリは微妙に首を傾けた。なのでユキはカラクリに近づき、カラクリの手のひらに破片を握らせた。
「オイ、人質女、テメェなんでまた巻き込まれてやがんだ」
真選組によってある程度抑えられたカラクリ騒動、残ったカラクリはいないかと祭り会場の見回りをしていた土方は、カラクリと対峙する女を見つけた。しかも見覚えのある女だ。やはりどうにも彼らには妙な縁があるようで、放置する訳にもいかない土方はカチッとライターを点けながら彼女に話しかけた。しかし、
「ひ、土方さん…?」
と大袈裟に肩をびくつかせるユキ。そしてサッと土方から距離を取り、近くにいたカラクリの背後に隠れたユキはチラチラと土方の方を確認する。
妙な巡り合わせのせいで最近では真選組と万事屋との関わりは確かに多い。しかし基本的に外に出ないユキだけは、彼らへの認識のアップデートが遅く、ユキから見た土方という男は、いきなり銀時に斬りかかったヤバいやつという認識に留まったままなのだ。そりゃビビるに決まってる。
「わ、私を斬っても美味しくないから」
妙な地球語を話すユキは、ほらあっち行け!と言わんばかりの目線を土方に向ける。そんなユキの態度に土方はピキリと青筋を立てた。
「テメェなめてんのか、わざわざ助けに来てやったってのに、その態度とはいい度胸じゃねェか!」
土方がそう言って、まるで悪人を取り締まるときのような形相でユキの方を睨むと、彼女は再びビクッッと肩を跳ねさせる。
カラクリの後ろにくっつき、助けてよ〜と懇願するユキとそんなユキを睨み追いかけ回す土方の図に、タイミング良く現れた近藤は首を傾げた。
「あれ?なんか思ってたのと違う!トシが女性を追いかけ回してるヤバいやつみたいになってんだけど、ちょっと!!」
祭りの騒動から翌日、幕府の転覆を企む高杉は今回の失敗を経て一旦歌舞伎町から離れることにした。そんな高杉のもとへ、かつての戦友の1人である桂が姿を現した。
「失敗したようだな」
「思わぬ邪魔が入ってな。牙なんかとっくに無くしたと思ってたんだがな。とんだ誤算だったぜ。」
「何かを護るためなら人は誰でも牙を向けるというもの。護るものも何もないお前はただの獣だ、高杉。」
「獣で結構、俺はただ壊すだけだ…」
そう厨二病じみたセリフを吐き捨てて歌舞伎町を去る高杉の背中に目を向けた桂の視界の端には、楽しそうな子どもたちの姿と、子どもたちにおもちゃのカラクリを売る源外の姿があった。
そして『カラクリ玩具、初回購入90%off』とかいう訳の分からない看板を掲げて客寄せする新八とユキの姿、商売を手伝う気があるのかないのか分からない銀時と神楽の姿もある。
「わー!このカラクリ凄いヨ!じいさん私これもらっていいアルか?」
「ダメに決まってんだろ!コイツは売りモンなんだよ、テメーがもらったら俺らの利益がなくなっちまうだろうが!」
「オイ銀の時!オメーも何言ってだ?こりゃ俺が作ったカラクリだぞ。なんでテメーなんかに利益を分けることになってんだよ」
「は?じいさん忘れたの?コイツをガキ共に配る提案をしたのは誰だと思ってんだ。ウチのユキちゃんだよ?オメーの作ったカラクリのせいで怪我して帰ってきたってのに落ち込む老いぼれジジイを気にかけてくれてんだよ?少しは俺らに感謝しろよ!」
「なんでテメーにまで感謝しなきゃならねェんだよ!」