『コスプレするなら心まで飾れ』
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* * *
…辺り一面に広がるのは死体と血の山。銀時は自分の背にナニカを背負い、腐敗が進んだ死体の間を縫って、ただひたすらに進んでいく。あれ、俺はどこに向かっているんだろうか。どこに進んでるのか分からない。
不意に、足元の死体が銀時の足を掴みこちらを向く。そしてカチカチと骨を鳴らしながら何かを呟いている。
――捨てちまえよそんなもの。どうせソイツは助からねぇ。お前に誰かを助けることなんかできやしねぇんだよ。
どこからか響いてきた声は自分の過去の話をしているのだろうか。戦争でたくさんのものを失って、たくさんの死骸の上を歩いてきた銀時を、彼らは嘲ているのだろうか。
しかし銀時はその言葉を無視してまた進もうと1歩を踏み出した、その瞬間、今度は背負ってるナニカが銀時へ語りかけてきた。
――もう全部捨てて、楽になっちまえよ。
* * *
ハッと銀時は目を覚ました。辺りを見回すと自分は布団に寝ている。随分と広い部屋で寝かされていたようだ。ひとつ、息をついて銀時は今の状況について考える。そんなとき、部屋の襖が開かれた。
「柄にもなく魘されていたようだな。昔の夢でも見たか」
そう言って部屋へ入ってくるのは銀時の旧友である桂。なんで彼がこんなところにいるのか、銀時は再び今までのことを振り返る。確か、家出娘の捜索をしてる途中、妙な天人たちに絡まれた。そして銀時が最後に目にしたのは連れ去られていく神楽、新八、ユキの姿。
早く、早くアイツら助けに行かなければ!!と無理やり起き上がろうとする銀時だったが、身体は方は悲鳴をあげていて上手く動かすことができない。
「無理をするな銀時。片腕は使えぬうえ、肋骨も何本か折れてる。それに、あっちの娘の方が重症だ」
桂の目線の先につられて銀時も同じように目線を動かすと、ついさっき見つけた家出娘が布団に寝かされている。
「全く、クソガキめ…」
「というか、貴様はなんであんなところにいたんだ」
「というか、なんで俺はお前に助けられてんだ」
「というか、お前はコレを知っているか」
桂が懐から取り出したのは白い粉の入った袋。桂曰く、これは『転生郷』という天人たちが違法取引しているヤバイ薬だという。天人が持ち込んだこの薬をどうにかしようと攘夷浪士たちが活動していたところ、銀時に出会ったと。
「というか、お前はなんであんなところにいたんだ」
「というか、アイツらは一体なんなんだ」
「宇宙海賊『春雨』。銀河系で最大規模を誇る犯罪シンジケートだ。奴らの主立った収入源は非合法薬物取引による利益、加えて征服した弱い星に住まう種族の支配及び売買。その末端とはいえ、地球まで及んでいるとはな…ってオイ!話を聞いてるのか!!」
「仲間が攫われた。ほっとく訳にはいかねェ」
「その身体で勝てる相手と?」
「俺にはな、無理してでも助けなきゃならねぇ仲間がいんだよ。それによォ、俺が隣にいねぇと勝手に死にかねないクソみてぇに弱いアイツを助けに行くのは俺じゃねぇとダメなんだよ」
自分で話を振っておいて、まるで聞く耳を持たずに外へ出ていこうとする銀時の瞳は本気だ。今の彼はひどく憤りを感じている。そんな銀時の様子に桂も意を決した。
「仕方あるまい、お前には池田屋のときの借りがあるからな、今から俺がお前の左腕だ」
* * *
「こやつらが最近俺たちの周りをコソコソ嗅ぎ回っていた連中です」
「大方、天人嫌いの攘夷派の仲間でしょう」
「して、奴らの始末はどうつけるのですか?」
天人の話し声で目が覚めた。ここはどこだ。ズキズキと痛む頭に顔を顰めながら辺りを見回すと頭上には天人がいて、隣で神楽が倒れている。両腕を縛られ、天人たちに拘束されていることを悟った新八は息を殺して天人の話に耳を傾ける。
「ああそれと、あの娘の様子は?」
「そちらは既に檻の中ですよ。それにしても、この地球でよくあんな貴重な種族を見つけましたね」
「ええ、一目で分かりましたよ。あの宝石のような瞳。アレは間違いなく」
その言葉にドクリと心臓が嫌な音を立てた。そういえばユキさんが見当たらない。彼女にいったい何があったのか、天人の話を聞きのがぬように集中するが、別の天人によってその話は遮られた。クソッと心の中で舌打ちをした新八はぼんやりとする頭の中で、何か嫌な予感がした。
* * *
船上には今にも海に投げ出されそうな神楽、天人に頭を掴まれて尋問されている新八。早く2人を助け出さなければならないが、やはりユキの姿が見つからない。
今回の事件諸々の発端となった宇宙海賊『春雨』、ここに潜入するために海賊のコスプレをした銀時と桂は、『春雨』に加入するための面接に来たフリをしながら船上の状況を観察していた。
「おいヅラ、テメェに頼みてぇことがあんだよ」
「お前からの頼みごととは珍しい。なんだ言ってみろ」
「さっき人身売買とか何とか言ってたよなァ。それ、どんな種族が対象になってるか少し教えてくれねェか」
「貴様らが探っていたのは転正郷の方ではなかったか」
確かに、今回の依頼は転正郷によってやべえ奴らに囚われていたバカ娘を捜索することだった。しかし銀時が気がかりなのは先程の桂の話に出てきた人身売買の話。そこで話さなければならないのはユキの種族についてだ。銀時自身、詳しいことは知らないが彼女は本来、奴隷として地球に来ていたはずだったのだ。
「お前、池田屋のときにいたユキって奴覚えてるか?」
「まさか、そのユキ殿は始末のためではなく売り物として拉致されたと?」
「可能性の話だ。もしそうだとしたら、お前にアイツの救助を頼みたい」
「それは構わないが、貴様ついさっきアイツを助けるのは俺だ!とか言ってなかったか」
「…ヅラ、テメェは空気読めねーのか!いいか、ユキはものすごく弱いんだ。自分じゃ戦いなんて出来るわけがねーんだよ。だから、今は俺よりも動けるお前に頼んでんだ。それくらい察しろヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。だがまぁ、その任務承った」
その言葉を合図に一斉に走り出す2人、銀時はまず海に落とされそうな神楽のもとへ行き、その次に新八のもとへ。ワザと派手に木刀を振り回し、大袈裟に登場した銀時は蛇絡という天人の意識をこちらへ向けた。
「面接会場はここですか。こんにちはー坂田銀時でーす。キャプテン志望してます。趣味は糖分摂取、特技は目を開けたまま寝られること」
随分と大仰に登場した銀時だが、狙い通り、天人たちは彼の登場に気を取られている。その隙に船の中へ侵入した桂は奥まった部屋に拘束されているユキを見つけた。
か弱い種族というのはこうも不憫なものなのか…とユキに付けられた拘束具を外し桂は彼女を抱えて外へ飛び出す。
銀時に注目している天人たちの後ろで響く大きな爆発音。そして大きく穴の空いた場所から出てくるのはユキを抱えた桂だ。
「ユキ姉!ヅラ!」
「良かったユキさんも無事だったんですね!」
銀時の背中に庇われている新八と神楽も、桂に救出されたユキの姿を見て笑顔を見せた。そして、無事3人の姿を確認した銀時は木刀を主犯各の天人、蛇絡へ向ける。
「いいか、テメェらが宇宙のどこで何しようと構わねえ。だが俺のこの剣、コイツが届く範囲は、俺の国だ!無粋に入ってきて俺のモンに触れる奴は、将軍だろうが、侍だろうが隕石だろうが!ぶった斬る!!!」
宇宙海賊などと謳っておいて、随分と締りのない終わり方だった。最終的に銀時と一騎打ちになった蛇洛とかいう天人は銀時の一撃で呆気なく敗北した。
さて、『春雨』の船から脱出して万事屋へ帰ろうと爆睡中のユキを抱える銀時の後ろで、さっきからずっと子供のように駄々をこねている新八と神楽に、銀時は非常に面倒くさそうな表情を向ける。
「ああダメッスね、フラフラして歩けない」
「私も日を浴びすぎて頭痛いネ。銀ちゃん、おんぶ」
「甘えんなよオメーら!俺の方がなあ!身体中ボロボロなんだよ!それに俺の両手はユキを抱えるのに塞がってるので使えませーん」
そう言って銀時は先に帰ろうと足を進める…しかし後ろの新八と神楽は座り込んだまま一向に動こうとしない。
そしてついに痺れを切らした銀時は立ち止まり振り返る。
「あーもう分かったよ!さっさと銀さんの背中に乗りやがれガキども!!」
「わーい!!銀ちゃんありがとう!!」
「ありがとうございます銀さん!」
「あ、そうだ銀ちゃん!今日の夜ご飯はお寿司なんかどうアルか?」
「んな豪華なモン食えるかよ」
「でもユキさんは今日夕食作れませんよ?ユキさんだって今日頑張ってましたし、目を覚ましたときに目の前にお寿司あったらきっと喜びますよ!」
銀時の背中に飛び乗った神楽と新八は途端に饒舌に喋り始める。今夜は寿司だ寿司だと騒ぎ出す2人に銀時は小さく息をついて歩みを進めた。
「…ったくよォ、テメェら元気じゃねェか」
⋆第9話おわり⋆