『天然パーマに悪いやつはいない』
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「は、ハイレグしゃぶしゃぶ天国…?」
「こらユキちゃん!お前は余計な単語を繰り返さなくていいの!」
目の前に掲げられた、いかにもいかがわしい広告を前にユキは思わず呟いた。
銀時が志村兄弟にボコられるのをユキが青ざめた顔で眺めていたとき、突然この屋敷に借金取りが尋ねて来た。そしてこの屋敷を売り飛ばすとかどうとかの話をした後、最終的に借金取りの天人はしゃぶしゃぶ天国で働くことを条件に出してきたのだ。
そんなクソみたいな条件に動揺する新八を他所に、すぐに肯定の返事をするお妙に驚いたのは新八だけじゃなかった。この数時間で志村家の事情を不本意ながら聞かされることになったユキ。その場のノリに流されやすい彼女はこんな理不尽なことがあってたまるかとなんだか心が苦しくなった。
天人に付いていこうとするお妙を見て、何か言おうと1歩踏み出そうとしたユキ。しかし天人がこちらを振り向きユキの存在に気が付く前に銀時が咄嗟に彼女を背中で隠したので、ユキは結局その場から動くことができなかった。
お妙が天人に連れられてから数分後。木刀で素振りをしモヤモヤした気持ちをかき消すように愚痴を言う新八は、ユキの目には随分と辛そうにしているように見えた。
新八の家でホールケーキを作る銀時の横で、ユキはいちごをトッピングしながら銀時に向かって呟く。
「ねえ銀ちゃん、新八くんもお妙さんもすごく無理してるように見えたよ」
「ああそうだな。あ、ユキその苺こっちにもくれや」
「はいどうぞ。ねえ銀ちゃん、これはさ、もしかしたら挽回のチャンスなのでは?」
「なに、どうしたのお前。ユキちゃんはたった数時間でコイツらに絆されちゃったの?」
「…あの、他人の家で何やってんすかアンタら」
「あ?何メガネくん、ユキとの会話を邪魔しないでくれる?それに定期的に甘いもん摂取しないとダメなんだ俺は」
「にしてももっとマシなもん作って下さいよ。それと貴方もその苺どっから持ってきたんですか全く…」
会った時より覇気のない新八のツッコミ。木刀を投げ捨て縁側へ座り込む彼を横目に、作り終えたホールケーキをほぼ食べ終えた銀時は大きくため息をついた。
「お前、姉ちゃん追わなくていいの?」
「別に、姉上が自分で決めて出ていったんだ。僕は姉上や父さんのような不器用な生き方なんてしたくない。僕はあの人達とは違う。僕は、もっと器用に生き延びてやるんだ」
「そうかい。でもよォ、俺にはとてもお前が器用には見えないけどな」
ついに、ホールケーキを綺麗に完食した銀時は木刀を持って立ち上がる。
「侍が動くのに理屈なんかいらねぇさ。そこに護りたいもんがあるなら、剣を抜けば良い」
「新八くん、お姉さんのこと大好きでしょ?ほらほら、万事屋銀ちゃんに依頼してみない?」
目に涙を浮かべながら銀時の言葉を聞く新八の前に、ユキは新しく綺麗な名刺を差し出した。
そうしてついに、自分の姉を助けに行くと決意した新八は、パシッとユキの手から名刺を受け取り、涙を拭って剣を取る。
「そんじゃあユキ、お前は先に帰って待っててくれや」
「うん、気をつけてね銀ちゃん」
「たりめぇだ。俺を誰だと思ってんだ。それよりお前も、帰ったらちゃんと戸締りすんだぞ」
「はいはい、行ってらっしゃい2とも」
* * *
海沿いの大通り、ユキからヘルメットを借りた新八は銀時と共にスクーターに乗り、しゃぶしゃぶ天国行きの飛行船を探しに行く。
「あの、良かったんですか?ユキさん置いてきて」
「あ?どう意味だコラ」
「なんでそんな喧嘩腰なんですか。僕はただずっと一緒に居たのに1人置いてきて良かったのかなって」
「そりゃあ俺だってユキのそばを離れたくなかったけど、これはユキの頼みでもあるわけだし、そもそもアイツをしゃぶしゃぶ天国なんかに連れてけるわけねぇだろうが」
「ああなるほど…ってあの、も、もしかしてあれじゃないですか!?しゃぶしゃぶ天国の船、もう出発してますよ!」
「わかってるって、オラ行くぞ掴まれ新一ぃぃいいい!!」
「ええ!?行くってどうやって…って僕新一じゃなくて新八です!!」
海の向こう側に、今まさに出港しようとしている船を見つけた。あれだ。間違いなくあれがハイレグしゃぶしゃぶ天国に違いない。
原付バイクのなけなしのスピードでお妙の所へ向かう2人だが、どうにも追いつきそうにないので、たまたま近くでバイクの走行速度違反を注意するために追ってきた役人のパトカーを奪った銀時はガードレールを突き破り車ごと無理やり空へ飛び上がった。
一方、空飛ぶ船の中でお妙にハイレグを着せようと嫌な笑み浮かべていた借金取りの天人は、ドカァァァァアアアン!!という派手な音と共に突如船を突き破ってきた1台のパトカーによって吹っ飛んだ。
「な、なんでパトカーがここに!?役人が駆け付けて来おったんか!?」
「安心しなコレはただのレンタカーだ。どーも万事屋でーす」
「姉上!まだハイレグ履かされてませんか?」
激しい音と共に現れた新八はすぐさま姉の元に駆け付けて天人から護るようにして前に出た。しかし、同時に複数の天人から向けられる拳銃。これじゃあ僕らが手出しなんかできない…新八が唇を噛み締めそう思ったとき、新八とお妙の前に立ちはだかるのは銀時。
「おい、お前は姉ちゃん連れて先に逃げろ」
「だけど」
「いいから、お前は姉ちゃん護ることだけ考えな。俺は、俺の護りてぇもん護るだけだ!だから早く逃げろ新一ィィイイ!!!」
銀時がそう叫ぶと同時に振り上げた木刀で天人が複数人吹き飛んだ。それによって部屋の扉が空いた隙に、お妙の手を引いて逃げ出す新八。だから新一じゃなくて新八だボケェ!とツッコミを忘れずに部屋から飛び出した新八はとりあえず道なりを走る。けれど彼に手を引かれて一緒に走るお妙は、今一人取り残されているはずの銀髪の侍が何となく気がかりだった。
「いいの?新ちゃんあの人なんで私たちのこと…」
「良いんだ。あの人は戻ってくる気がするんだ。だってあの人には」
「うをぉぉぉぉおおおお!!!早く逃げろ!!」
「ってええ!?思ったよりも早く戻ってきたよこの人!」
「思ったよりもキツかったんだ!」
「ちょっと頼みますよ1ページだってもってないじゃないですか!!」
「バカヤロウ!1ページ小説書くのも結構大変なんだよ!!それよりも早く脱出ポイントを探せーい!!」
「ってここは…」
天人との追いかけっこの末たどり着いた場所、かなり広い空間に何やら色んな装置があるようだが…。
「そこは行き止まりだ。ほらもう観念するしかねぇよ。全く哀れやのお。昔は国を守護する侍が、今では娘っ子ひとり護ることさえできない。アンタらに護れるものなんてもうないで。国も空ももうワシら天人のもんだ」
「国だ?空だ?知らねェよそんなもの。こちとら目の前にあるもの護るのに手一杯だ。それさえ護れずに今まで幾つ取りこぼしてきたか知らねぇ。そんな、なんにもねぇ空っぽの俺に小さな幸せを分け与えてくれたやつがいんだよ。俺はソイツに救われたんだ。だからなぁ、俺だって、せめて目の前に落ちてるもんがあるなら拾ってやりてぇのさ」
「しみったれた武士道やのお。もうお前はいいわ、死んでもらうで…って!お前なにやってんの!?そこは…」
「あ?ここがなんだって?こういうのはなあ、1番でけぇ装置ぶっ叩けば大抵の問題は解決できるんだよなあ!!」
オラァ!と銀時が気合いで木刀を船の動力装置に突き刺した途端、ガタガタという音を立てて傾いていく船内。そして遂に、海の上へと急降下する。銀時や新八、お妙も一緒に微妙な浮遊感とともに海の中へ落下した。
空から船が落ちてきたことによって駆けつけた役人により海から救助された新八とお妙はお互いに向き合いこれからのことについて話し合っていた。僕らは、結局あの銀髪の侍に、あの借金取りから助けられた。
「姉上、僕…」
「行きなさい新ちゃん。あの人の中に何かを見つけたんでしょ。だから行って見つけてきたらいいわ、貴方の剣を」
* * *
夕刻、ようやく役人から解放された銀時はげっそりとした様子で万事屋のドアへ手をかけた。しかし、家に入れば大切な彼女がいる。
「ただいまーユキの大好きな銀ちゃんが帰りましたよ」
「おかえりなさい銀ちゃん。怪我してない?」
「してねぇよ、俺はお前と違ってヤワじゃねぇからな」
「もう、私だって好きでこんな脆弱じゃないんだけど?でも銀ちゃんに怪我がなくて良かった。ほら、夕食できてるから一緒に食べよ?」
「お、今日のおかずはなんだ?俺今日かなり頑張ったし、結構奮発してくれてたり…それとも、もしかして今日のおかずはユキちゃんで!的なそんなノリだったり」
「銀ちゃんさっきまでかっこよかったのに、色々台無しだよもう…」
⋆第1話おわり⋆