アルタイルの唄声が空に響く夏
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組織の命令で突如海外へ出張するはめになった憐れな男が1人…。たったの一夜で任務を遂行しろという無茶振りに振り回されながらも、無事に任務を終えた安室は風の強い海辺の灯台で一息つく。
(まさかインドネシアまで連れてこられるなんてな…)
少しひんやりとした空気が徹夜で煮詰まった脳に沁みる…。
はあ…と大きくため息をついた彼は、今宵の救世主であるユキの揺れる髪を見つめながら呟いた。
「ユキ、今回は本当に助かったよ」
「いや、私もびっくりしましたよ。まさかインドネシアで降谷さんに会うとは思いませんでした」
「おいその呼び方はよせ」
「あ、すみません。えっとバーボンさん…いや安室さんか?」
「今は安室でいい」
まるで危機感のない協力者――ユキの登場はまさに間一髪だった。
* * *
組織の中で最も危険な人物、ジンに連れられインドネシアでとある調査を行うことになったバーボンは、グランドホテルでとある重要人物から情報を聞き出すよう命じられていた。しかしここは日本ではなくインドネシア。いくら情報収集が得意なバーボンとはいえ、さすがに現地の言葉で情報収集を行うのには無理があった。ジンの命令に逆らうのは避けなければと思い頷いた依頼だったが、まさかこんなところに連れてこられるなんて、しかもジンの監視付きときた。
(他の言語だったらまだ何とかなったかもしれないがインドネシア語はそこまで喋れないぞ…)
あまりにも難易度の高い任務にバーボンは項垂れた。例の人物と英語で話そうとも試みた。けれども向こうは現地の言葉しか知らないようで…。
つまるところ、バーボンは任務失敗の絶体絶命のピンチだったのだ。
ところが、ホテルで立ち往生しているバーボンの前に突如現れたのは不本意ながら公安の協力者という肩書きを持つユキだった。
やけにチカチカした服を着ているユキは彼の姿を見つけると、ぱっと目を見開いて近付いた。
しかしながら、ユキに気が付くことなくむしろ何か思い詰めた様子のバーボン。
おやおや?と下から覗き込んでくる影が目先の数cmまで迫ってきて、ようやくユキの存在を認識したバーボンは思わず声を上げて後退った。
「何やってるの?ふる…いや、あむ…」
「おい黙れバカ――」
珍しい反応を見せる彼にユキが話しかけようとしたその時――
「バーボン」
低い地鳴りのような声がフロントに響いた。
はっと振り返ったバーボンは、ペタリと笑みを貼り付けてジンに言葉を返す。
「おや、どうしたんです?先に部屋へ戻っているはずじゃ…」
「ああそのつもりだったが予定が変わった。夜明けまでだ。夜明けまでに奴から情報を盗んでこい」
そう告げて去っていくジンの姿に、ふつふつと怒りを感じ始めるバーボン。ハナから任務を成功させる気などないのだろう。これから通訳係でも探せとでも言うのか?こんな夜中に?どうやって……
「バーボン」
りん、と先程とは異なる高い音が彼の耳を掠めた。
何かお困りかな??という目でユキが差し出す名刺を、安室は大きなため息をつきながら受け取った。
……巻き込むつもりはなかった。けれども彼女がいなければきっとバーボンという存在は今頃消えていたことだろう。
完璧な語学力、完璧なコミュケーション力によって目的の人物と見事に意気投合したユキが全てを解決してくれた。
夜明け、望み通りの情報をまとめた資料を提出すると、ジンは舌打ちをしながら資料を受け取った。そして一足先に日本へ帰って行った。
* * *
日の出を見るために海辺の灯台に登った安室とユキ。海風に髪を靡かせるユキが、疲れきった顔をする安室を見て呟いた。
「というか組織ってこんな遠くまで出張するんですね。安室さんいくらなんでも忙し過ぎじゃない?過労死しないでくださいよ」
「ああ。心配してくれてありがとう。でも忙しさでいったら君も負けていないと思うけどな。だいたいなんでインドネシアにいるんだ?先月はポアロに顔を出していたじゃないか」
「え??それはこっちのセリフなんですけど?まあ、私は社畜の安室さんとは違って友達と海釣りをしに来たんですけどね」
「海釣りか…相変わらずアグレッシブだな君は…」
「トリプルフェイスかましてる安室さんのがアグレッシブですけどね」
「それもそうだな…。 君は――
なんだか今日はやけに突っかかってくるな」
「安室さんがテキトーに喋っているからでは?」
的確なユキのツッコミは、慣れない海外での徹夜に加えてバーボンとして張り詰めていたせいで疲れきった安室の脳天にグサリと刺さった。「そんなことを言われたのは初めてだよ…」と苦笑いを浮かべる安室にユキは小首を傾げる。
ユキはポアロで働く安室の顔と、公安警察として働く降谷の顔を知っている数少ない人物の1人である。萩原松田と親しかったユキがポアロの安室を知る前に降谷という存在を知っていたのが理由だ。ユキの中で2人が同一人物であることはごく簡単に導き出せた。
そんなわけで、不本意ながら真実を知ってしまったユキは、警察庁に連行され事情を長々と説明された挙句に協力者としての肩書きを得たのだ。ユキに課せられた任務はただひとつ。降谷のことを口外しないこと。
だがまさかこんな風に助けられることになるなんてな…。しっとりとした潮風のせいでベタベタと肌に張り付いた髪。安室は鬱陶しい前髪を掻き分けて水平線を見つめた。
「あーーー!!見て!安室さん!日の出!」
「ああ見てるよ」
まさかインドネシアで日の出を見ることになるとは…あらゆる仕事をこなし、忙しなく過ぎる日々の中で、こんなに穏やかな気持ちになるのはいつぶりだろうか。今この瞬間は、安室にとってなんとも言えぬ清々しい朝であった。
…ところで、と安室は昨夜からずっと気になっていたことについてユキに問う。
「その、おかしなTシャツ…そういう感じものが君は好きなのか?」
「え?」
▷▶🔆インドネシアの日の出🔆
↪︎ rintaro. ねえ待って
↪︎ atsumu. 隣の見切れてる男誰??
(まさかインドネシアまで連れてこられるなんてな…)
少しひんやりとした空気が徹夜で煮詰まった脳に沁みる…。
はあ…と大きくため息をついた彼は、今宵の救世主であるユキの揺れる髪を見つめながら呟いた。
「ユキ、今回は本当に助かったよ」
「いや、私もびっくりしましたよ。まさかインドネシアで降谷さんに会うとは思いませんでした」
「おいその呼び方はよせ」
「あ、すみません。えっとバーボンさん…いや安室さんか?」
「今は安室でいい」
まるで危機感のない協力者――ユキの登場はまさに間一髪だった。
* * *
組織の中で最も危険な人物、ジンに連れられインドネシアでとある調査を行うことになったバーボンは、グランドホテルでとある重要人物から情報を聞き出すよう命じられていた。しかしここは日本ではなくインドネシア。いくら情報収集が得意なバーボンとはいえ、さすがに現地の言葉で情報収集を行うのには無理があった。ジンの命令に逆らうのは避けなければと思い頷いた依頼だったが、まさかこんなところに連れてこられるなんて、しかもジンの監視付きときた。
(他の言語だったらまだ何とかなったかもしれないがインドネシア語はそこまで喋れないぞ…)
あまりにも難易度の高い任務にバーボンは項垂れた。例の人物と英語で話そうとも試みた。けれども向こうは現地の言葉しか知らないようで…。
つまるところ、バーボンは任務失敗の絶体絶命のピンチだったのだ。
ところが、ホテルで立ち往生しているバーボンの前に突如現れたのは不本意ながら公安の協力者という肩書きを持つユキだった。
やけにチカチカした服を着ているユキは彼の姿を見つけると、ぱっと目を見開いて近付いた。
しかしながら、ユキに気が付くことなくむしろ何か思い詰めた様子のバーボン。
おやおや?と下から覗き込んでくる影が目先の数cmまで迫ってきて、ようやくユキの存在を認識したバーボンは思わず声を上げて後退った。
「何やってるの?ふる…いや、あむ…」
「おい黙れバカ――」
珍しい反応を見せる彼にユキが話しかけようとしたその時――
「バーボン」
低い地鳴りのような声がフロントに響いた。
はっと振り返ったバーボンは、ペタリと笑みを貼り付けてジンに言葉を返す。
「おや、どうしたんです?先に部屋へ戻っているはずじゃ…」
「ああそのつもりだったが予定が変わった。夜明けまでだ。夜明けまでに奴から情報を盗んでこい」
そう告げて去っていくジンの姿に、ふつふつと怒りを感じ始めるバーボン。ハナから任務を成功させる気などないのだろう。これから通訳係でも探せとでも言うのか?こんな夜中に?どうやって……
「バーボン」
りん、と先程とは異なる高い音が彼の耳を掠めた。
何かお困りかな??という目でユキが差し出す名刺を、安室は大きなため息をつきながら受け取った。
……巻き込むつもりはなかった。けれども彼女がいなければきっとバーボンという存在は今頃消えていたことだろう。
完璧な語学力、完璧なコミュケーション力によって目的の人物と見事に意気投合したユキが全てを解決してくれた。
夜明け、望み通りの情報をまとめた資料を提出すると、ジンは舌打ちをしながら資料を受け取った。そして一足先に日本へ帰って行った。
* * *
日の出を見るために海辺の灯台に登った安室とユキ。海風に髪を靡かせるユキが、疲れきった顔をする安室を見て呟いた。
「というか組織ってこんな遠くまで出張するんですね。安室さんいくらなんでも忙し過ぎじゃない?過労死しないでくださいよ」
「ああ。心配してくれてありがとう。でも忙しさでいったら君も負けていないと思うけどな。だいたいなんでインドネシアにいるんだ?先月はポアロに顔を出していたじゃないか」
「え??それはこっちのセリフなんですけど?まあ、私は社畜の安室さんとは違って友達と海釣りをしに来たんですけどね」
「海釣りか…相変わらずアグレッシブだな君は…」
「トリプルフェイスかましてる安室さんのがアグレッシブですけどね」
「それもそうだな…。 君は――
なんだか今日はやけに突っかかってくるな」
「安室さんがテキトーに喋っているからでは?」
的確なユキのツッコミは、慣れない海外での徹夜に加えてバーボンとして張り詰めていたせいで疲れきった安室の脳天にグサリと刺さった。「そんなことを言われたのは初めてだよ…」と苦笑いを浮かべる安室にユキは小首を傾げる。
ユキはポアロで働く安室の顔と、公安警察として働く降谷の顔を知っている数少ない人物の1人である。萩原松田と親しかったユキがポアロの安室を知る前に降谷という存在を知っていたのが理由だ。ユキの中で2人が同一人物であることはごく簡単に導き出せた。
そんなわけで、不本意ながら真実を知ってしまったユキは、警察庁に連行され事情を長々と説明された挙句に協力者としての肩書きを得たのだ。ユキに課せられた任務はただひとつ。降谷のことを口外しないこと。
だがまさかこんな風に助けられることになるなんてな…。しっとりとした潮風のせいでベタベタと肌に張り付いた髪。安室は鬱陶しい前髪を掻き分けて水平線を見つめた。
「あーーー!!見て!安室さん!日の出!」
「ああ見てるよ」
まさかインドネシアで日の出を見ることになるとは…あらゆる仕事をこなし、忙しなく過ぎる日々の中で、こんなに穏やかな気持ちになるのはいつぶりだろうか。今この瞬間は、安室にとってなんとも言えぬ清々しい朝であった。
…ところで、と安室は昨夜からずっと気になっていたことについてユキに問う。
「その、おかしなTシャツ…そういう感じものが君は好きなのか?」
「え?」
▷▶🔆インドネシアの日の出🔆
↪︎ rintaro. ねえ待って
↪︎ atsumu. 隣の見切れてる男誰??
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