プロローグ
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「え!?ユキちゃん明日からアメリカなの!?」
PC画面に映る萩原さんがガッと顔を近づけて叫んできた。ユキとしてはただ今後の予定を伝えただけだし、仕事柄海外に行くのも珍しくない。想定外の大声にうわっと身を引いたユキはこたつの中で足をぶつける。
「はい、ちょっと仕事の関係で、ああでも3月には戻って来ますよ?」
「そんならまあ長期滞在ってわけじゃないか、ユキちゃんが帰ってきたらまた今度メシ行こーぜ」
パラパラと手元にある資料に軽く目を滑らせながら会話をするユキ。仕事のかたわらで適当に相槌を打っていたが、萩原からの食事の誘いに、ユキはぴたりと手を止めた。
「松田もユキちゃんに会いたいって言ってるしさ」
「良いですね。焼き肉でお願いします」
「りょーかい!また良いとこ探しとくわ」
「任せました」
食事の誘いは普通に嬉しかった。そもそも仕事が忙しい萩原たちと不規則な予定で仕事をしているユキとでは中々会うことができないからこうしてビデオ通話しているのだ。
「そんじゃ、今日はこの辺にすっか。海外気を付けてね。無理はすんなよ」
「はい、萩原さんこそ気を付けて下さいよ」
「わかってるって、じゃあまたな」
「はい、焼き肉楽しみにしてます」
萩原との通話が終了したことを確認して、ユキはやりかけの仕事を再開する。
今ユキがやってるのは御影コーポレーションと共同で行っている最新型小型同時翻訳機の開発資料作成。ちなみにユキの役目はAI自動翻訳の最終調整。対応言語を多く設定するのは良いが、やはりマイナーな言語の翻訳はかなりガバガバである。AIの学習回数が圧倒的に足りてない。
「これの調整はもうちょっと時間かかりそうやなぁ」
違う言語どうしのコミュニケーションを可能にする翻訳機。必要なのは口語と意訳の学習だろう。ココ要チェック、とこれまでAIが学習したデータ資料の気になる部分に印を付けたところで、リビングのドアが開いた。
「ユキ、どうや仕事終わりそうか?」
「あ、信ちゃん。仕事はまあ、キリはええかも」
「ほんなら先に飯にするで」
「ん、おっけー」
ユキが資料を片付けると同時に夕食を運んでくる幼馴染。ホカホカの白米が運ばれてくると少しテンションが上がる。
幼馴染の家で仕事をやるようになってから、こうして幼馴染と夕飯を一緒に食べるのが日常だ。
「なんや今日はどこのサッカーのニュースばっかりやな」
リモコンをポチポチといじってチャンネルを切り替えている幼馴染が呟いた。
食卓にある唐揚げを口に含みながらサッカー?と聞き返すユキが顔を上げてテレビを見ると、そこにはサッカーの試合映像が映し出されていた。画面上部にはU-20日本代表VSブルーロックというテロップが表示されている。
後半アディショナルタイム、両チーム拮抗する戦いの末、最後のこぼれ球を拾った選手、潔世一がダイレクトシュートを決めるその瞬間。
ん?と思いユキはテレビを二度見した。
「あ、あれ、世一くん!?!?」
「なんや、知り合いでも映ったか」
「おん、従兄弟が映っとたわ」
「そら凄いな」
従兄弟の潔世一が映っていた。瞬きを繰り返して再びテレビを見れば、今度は従兄弟がインタビューに答えている。ちょっと照れてるし、相変わらず可愛いやつだな、なんて思っていたら急に従兄弟の顔つきが変わった。
可愛い弟のように思っていた従兄弟だったがしばらく見ないうちに随分と成長していたらしい。「俺が日本をU-20Wカップで優勝させます」と堂々とした佇まいで答えるその姿にユキは釘付けになった。
パチリとまばたきすると同時にテレビの画面が切り替わる。サッカーの試合映像に戻り、次のハイライトが映し出された。
「んん!?」
「今度はなんや」
「あ、あれ冴くんと廻くん?と…凪くん?そんであれは、玲王くん!?え、ええ!?」
「そんな知り合いがここにおるんか。そらえらいこっちゃな」
「ほんまやで」
ブルーロックプロジェクト…って廻くんが言ってたやつでは、とユキは思い出した。確か半年前くらいに、サッカーの強化指定選手に選ばれたからしばらく会えなくなるかも、なんてやり取りをしたことがあったか。
冴くんはまあ想像はできたけど、まさか世一くんも廻くんもテレビに出演するまでになってるだなんて。というか、その2人だけじゃなくてなんかもう色々衝撃なんだけど。とりあえず凪くんと玲王くんもサッカーやってたの?そんなの知らなかった。凪くんに至ってはゲーム廃人とばかり思ってたよ、ごめん。とユキは心の中で謝罪をした。
ブルーロックプロジェクト。と検索欄に入力すると、日本フットボール連合のホームページに詳細がまとめられている。つい昨日更新されたページだ。
「なんやえらいサッカーに夢中になってもうたな、ユキ」
「やって友達がいっぱい活躍しとんで、そら見るやろ」
「そらそうやな」
「やろ?」
「せやけど、サッカーばっかり見とったら侑や角名が嫉妬するで」
「ははっ確かに」
「この浮気者とか言い出すかもな」
「うわ言いそう!自然と想像出来てまうのがおもろいわ」
バレーボールも追わないといけないのに、サッカーも見なければならなくなった。「楽しみが増えてもうたな」と独りごちるユキは、とりあえず今日の衝撃をSNSで呟いてみる。すると間髪入れずに飛んできたコメント、その想像通りすぎる文言にユキは幼馴染を顔を合わせて爆笑した。
▶▷サッカーもおもろいかもしらん😳
↪︎tsumu. おい!浮気は許さんで!
↪︎sunarin. それはさすがに無理、有罪
↪︎kotaro. この浮気者!!
↪︎shoyo. ユキさん、今度の試合見に来てくださいね!!バレーボールも面白いですよ!
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