だんだんと花が咲き、春が始まる
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障子から漏れる優しい光に誘われてユキは目を覚ました。
くわぁと欠伸をしながら全身を伸ばして、ユキは元気よく布団から飛び出す。
時刻はAM:5:30, 布団をたたんで部屋の隅へと片したユキは洗面所で顔を洗い、すでに台所で作業している幼馴染のもとへと向かった。
「信ちゃんおはよう」
「ユキ、おはようさん。ちょっとそこの丸かめ開けてみ」
「うん、今回は何作ってるの…」
台所の隅にずどーんと存在感のある丸かめ、いつも何かしら作っている幼馴染だが、今回は何だろうと期待を持って蓋を開けると、ふわりと味噌の良い香りが漂ってきた。
「わあ、たくあんの味噌づけや」
「ばあちゃん直伝の味付けやから期待しとき」
「うん楽しみにしとく」
実は5日ほど前から漬けていたらしい。ユキが日本に帰って来たときにちょうど食べられるように準備しといた、と幼馴染は言う。はえーと関心するユキは冷蔵庫を開けるとおもむろに牛乳と生クリームを取り出した。
「なに作るん?」
「杏仁豆腐。いま作ったら今日のおやつにちょうど食べられるで」
「ええなそれ。俺の分も頼むわ」
「任せとき」
ふわぁっと大きく口を開けて欠伸をしながら、ユキは腕を捲って気合いを入れた。欠伸が止まらないのは恐らく時差ボケのせいだろう。格子状のつくりになっている台所の窓から漏れ出る光に目を細めて外を見ると、見事な青空にふわふわと真っ白い雲が浮かんでいる、気持ちの良い田起こし日和だ。
米作りにおける田起こしとは、冬のあいだに固くなった土を柔らかくするための作業のこと。
快晴のもと、3ヘクタールほどの畑の中で耕運機を稼働させるとブオーンというエンジン音が響いた。慣れたように耕運機を操作する幼馴染に負けじとユキは畑をたがやす。ガタガタと大きく揺れる耕運機はユキの細腕に難しいように見えるけれど、小さな頃、散々農作業の手伝いをした甲斐あってか、ユキの腕前は中々のものであった。
2時間ほど経って、耕運機を止めたユキは額の汗を拭って空を見た。つい一昨日までユキは仕事の関係でアメリカにいたので、この景色を見るのも久々だ。
普段、性格ゆえ同じ場所に定住することのないユキは常に日本中どころか世界中あちこちを飛び回って遊び歩いている。しかしそんなユキを心配して声をかけたのが幼馴染の北信介だった。
「ユキはユキの好きなことやって、好きなように生きたらええ。せやけど、たまには全てを忘れて休む場所も必要やと思う。ユキは今日本に帰る場所あらへんのやろ、やったら家に来い。お前の帰る場所、俺が暖めといてやるから、何かあったらここに帰って来ればええよ」
確かに、自分の家があっても滅多に帰ることがないのでユキは自分の家を持っていなかった。色んな場所を旅するのは好きだし、色んな人と交流するのも好き。今のような生活になってから苦労だと思うことはなかったけれど、何かあったら帰る場所か…と考えた結果、ユキは幼馴染の家に自分の荷物を置くことにした。
それからユキは帰国する度にこの家に帰るのが常になった。そしてなんにも予定のない日は、こうして幼馴染の農作業の手伝いをする。
「ユキ、どうした?疲れたならちょっと休んでき。無理したらアカンで」
「ううん、まだ大丈夫。私、信ちゃんとこうやって田起こしするのけっこう好きやねん」
「奇遇やな、俺もユキと2人で仕事する時間は好きやで」
ちゅんちゅんと鳴いて畑の土を狙う野鳥がユキの足もとを通った。上手く田起こしできてる証拠やな、なんて呟いた幼馴染がそのまま田起こしを再開するので、ユキもその背中に続いて作業を続ける。
太陽がてっぺんを通り越した頃、耕した畑を振り返ると30坪を越したであろう面積の土がいい感じに掘り起こされている。その光景に満足してユキは麦わら帽子を外した。
「信ちゃん!私お昼ご飯の用意してくる!」
もう12時はとっくに回っている。まだ作業を続ける幼馴染に大きな声で呼びかければ、幼馴染は任せた!というように片手を上げて微笑んだ。
まだまだ作業は荒起こしの段階なので、クワを使った細かい作業は午後やることになるだろう。それにはちゃんとお昼ご飯を食べてエネルギーを蓄えなければならないので。ユキは朝食にも食べたたくあんの味噌漬けを摘みながら、お昼の準備を始めようと意気込んだ。
▶▷幼馴染と田起こしした🌾•ω•🌾
↪︎ samu.今年の米も期待しとんで
↪︎ hagiwara.今年もユキちゃん家の米たくさん買うからね!!
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