わたしの考える最強のコイビト
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3.
おれの恋人はかなりアクティブな人だ。最初こそ、わざわざ副業としてYouTubeの切り抜き師なんて応募してきたし、前の仕事で疲れたから隠居して暮らしたいだとか言っていたからインドアな人だと思ってたけど、まったくそんなことはなくて、彼女はかなりフットワークが軽い。
まあ、初めて顔を合わせることとなる打ち合わせでお洒落なカフェを提示してきたときからそんな予感はしていたけど、彼女の柔らかい雰囲気も含めて、想像以上に「陽」という言葉が似合う人だと思う。
それを強く実感したのは彼女と同棲を始めてしばらく経ったころ。まず、夜寝るのが遅くなっても朝は必ずおれが起きる前には起きてるし、朝食も出来上がってることがほとんど。この広い家の掃除も効率よくパパっと終わらせるし、ちょっと配信しようとおれが部屋に籠った隙に勝手に買い物に出かける。気づいたら家事を終えてるし、気づいたら1日1本、おれの切り抜き動画が上がっている。
普通に考えておかしい。何がおかしいって、確かに彼女はおれの専属切り抜き師として活動しているけれども、彼女には本業もあるはずである。彼女の職業は作家。というより今はクリエイターと言った方が良いかもしれない。彼女は現在2本の小説を連載しているが、おれの影響を受けてなのか知らないが、最近では勝手にSNSでマルチクリエイターとして活動していて驚いた。
そもそも、小説家としてバリバリに活躍していながら副業を始めている時点でかなりアクティブな要素はあったが、そもそも彼女が小説家としての顔を持っていることをおれが知ったのも最近だった。
そして、ひとつの疑問が浮かび上がる。彼女は毎日どれだけ働いているのかと。今振り返っただけでも1日で、本業、副業、料理、買い物は最低限やっているはずだ。おれが動画編集に集中しているときなんかも1人でふらりと出かけることが多々あるし。
昨日の夜だって、彼女が新作のFPSに興味を示したのを良いことに2人で夜更かししたにも関わらずだ。今朝おれが起きてリビングに行ったら綺麗に朝食が用意されていた。彼女の仕事のスピードには舌を巻く、なんてレベルではない。
つまり何が言いたいのかといえば、おれは彼女が心配なのである。同棲を始めて数ヶ月経ってようやく彼女のスペックの高さに気がついた。出会った当初は年上には見えないくらいふんわりとした雰囲気を漂わせていたし、彼女の言動を見てもどちらかと言えばなバカなんじゃないかとすら思っていたが、ここまで自然にこの仕事量をこなすのは普通じゃないと思う。そして今まで、ごく自然に、さもそれが普通であるかのような態度の彼女のおかげで、如何に自分が楽な生活をしていたかを自覚して腹が立った。
夕方6時、今日は配信が休みなので昨日撮った動画の編集を終えてリビングに戻るとテレビを見ながらふわぁっと大きな欠伸をするユキが見えた。
「ユキ、眠いなら少し横になったら?」
ソファの背に掛けてある毛布を取ってユキに渡せば、彼女はスっと立ち上がってこちらを見る。そして「あれ、研磨くん動画編集お疲れ様。もう夜ご飯食べる?」なんてまた動こうとするから、とりあえず彼女の肩を抑えてソファに戻してやった。
「うん。それよりもユキは今日の仕事終わったの?」
「もちろん!切り抜き動画ならさっきめちゃくちゃ良いのを投稿したよ!」
「…違う、」
そうじゃない。今のは言い方を間違えた。確かにこれじゃあ彼女の仕事ぶりを疑ってるみたいだ。おれが言いたかったのはもうやることが家事だけなら、少しくらい休んでて欲しいということだ。
おれだってユキほど上手なものは無理だけど、簡単な料理くらい作れる。
そうユキに伝えれば、彼女は目をキラキラにしておれの手を握ってきた。
「え、研磨くんのご飯が食べられるの!?」
「…うん、いつもユキにばっかり負担かけてるし」
おれの言葉にユキはきょとんと首を傾げる。ユキにとっては多分、負担とかそんなふうに思ったことなんかないのだろう。おれの心配などつゆ知らず、未だおれの言葉の意味を理解することなく、「そんなことないのに」と平然と言ってのけるのがすごいと思う。
とにかく、今日はおれが夕食の準備をする。だからユキはここでテレビでも見て待ってて。少し語気を強めてそう伝えれば、ユキは嬉しい、と言ってふわりと顔を綻ばせるのだ。
おれの恋人はかなりアクティブな人だ。最初こそ、わざわざ副業としてYouTubeの切り抜き師なんて応募してきたし、前の仕事で疲れたから隠居して暮らしたいだとか言っていたからインドアな人だと思ってたけど、まったくそんなことはなくて、彼女はかなりフットワークが軽い。
まあ、初めて顔を合わせることとなる打ち合わせでお洒落なカフェを提示してきたときからそんな予感はしていたけど、彼女の柔らかい雰囲気も含めて、想像以上に「陽」という言葉が似合う人だと思う。
それを強く実感したのは彼女と同棲を始めてしばらく経ったころ。まず、夜寝るのが遅くなっても朝は必ずおれが起きる前には起きてるし、朝食も出来上がってることがほとんど。この広い家の掃除も効率よくパパっと終わらせるし、ちょっと配信しようとおれが部屋に籠った隙に勝手に買い物に出かける。気づいたら家事を終えてるし、気づいたら1日1本、おれの切り抜き動画が上がっている。
普通に考えておかしい。何がおかしいって、確かに彼女はおれの専属切り抜き師として活動しているけれども、彼女には本業もあるはずである。彼女の職業は作家。というより今はクリエイターと言った方が良いかもしれない。彼女は現在2本の小説を連載しているが、おれの影響を受けてなのか知らないが、最近では勝手にSNSでマルチクリエイターとして活動していて驚いた。
そもそも、小説家としてバリバリに活躍していながら副業を始めている時点でかなりアクティブな要素はあったが、そもそも彼女が小説家としての顔を持っていることをおれが知ったのも最近だった。
そして、ひとつの疑問が浮かび上がる。彼女は毎日どれだけ働いているのかと。今振り返っただけでも1日で、本業、副業、料理、買い物は最低限やっているはずだ。おれが動画編集に集中しているときなんかも1人でふらりと出かけることが多々あるし。
昨日の夜だって、彼女が新作のFPSに興味を示したのを良いことに2人で夜更かししたにも関わらずだ。今朝おれが起きてリビングに行ったら綺麗に朝食が用意されていた。彼女の仕事のスピードには舌を巻く、なんてレベルではない。
つまり何が言いたいのかといえば、おれは彼女が心配なのである。同棲を始めて数ヶ月経ってようやく彼女のスペックの高さに気がついた。出会った当初は年上には見えないくらいふんわりとした雰囲気を漂わせていたし、彼女の言動を見てもどちらかと言えばなバカなんじゃないかとすら思っていたが、ここまで自然にこの仕事量をこなすのは普通じゃないと思う。そして今まで、ごく自然に、さもそれが普通であるかのような態度の彼女のおかげで、如何に自分が楽な生活をしていたかを自覚して腹が立った。
夕方6時、今日は配信が休みなので昨日撮った動画の編集を終えてリビングに戻るとテレビを見ながらふわぁっと大きな欠伸をするユキが見えた。
「ユキ、眠いなら少し横になったら?」
ソファの背に掛けてある毛布を取ってユキに渡せば、彼女はスっと立ち上がってこちらを見る。そして「あれ、研磨くん動画編集お疲れ様。もう夜ご飯食べる?」なんてまた動こうとするから、とりあえず彼女の肩を抑えてソファに戻してやった。
「うん。それよりもユキは今日の仕事終わったの?」
「もちろん!切り抜き動画ならさっきめちゃくちゃ良いのを投稿したよ!」
「…違う、」
そうじゃない。今のは言い方を間違えた。確かにこれじゃあ彼女の仕事ぶりを疑ってるみたいだ。おれが言いたかったのはもうやることが家事だけなら、少しくらい休んでて欲しいということだ。
おれだってユキほど上手なものは無理だけど、簡単な料理くらい作れる。
そうユキに伝えれば、彼女は目をキラキラにしておれの手を握ってきた。
「え、研磨くんのご飯が食べられるの!?」
「…うん、いつもユキにばっかり負担かけてるし」
おれの言葉にユキはきょとんと首を傾げる。ユキにとっては多分、負担とかそんなふうに思ったことなんかないのだろう。おれの心配などつゆ知らず、未だおれの言葉の意味を理解することなく、「そんなことないのに」と平然と言ってのけるのがすごいと思う。
とにかく、今日はおれが夕食の準備をする。だからユキはここでテレビでも見て待ってて。少し語気を強めてそう伝えれば、ユキは嬉しい、と言ってふわりと顔を綻ばせるのだ。